読んだ目的
- 経営戦略に基づく分析設計や施策方針を検討する上で、経営戦略の視点を持つ必要が出てきたため
- 戦略コンサルの人と働く機会が増えてきているが、リアルな戦略コンサルの現場での動き方を知りたかったため
得られた学び
本書には戦略経営者が経営戦略の立案から現場への戦略の落とし込みまでのプロセスを、1人の戦略コンサルタントが経営者になるまでのストーリーで書かれている。読み物として非常に面白く、ページ数は短くないが数日で読み終わる。
本書は奇をてらった戦略ではなく、シンプルで基礎的な戦略を着実に実行していくため、基礎的な戦略を着実に実行するためのノウハウをまとめておく。
戦略の立て方
戦略は「業績→市場規模・成長率→競合→当社の強み・弱み」の順に立てていく。過去の実績や経験に基づく将来の売上予測を立てるのは勝者の論理で、負けている者が過去と同じ発想で将来の予測を立てたところで大した変化を起こすことはできない。
業績
まずは自社の業績を確認し、現状を把握する。
市場規模・成長率
次に市場規模と成長性をプロダクトライフサイクルや事業の成長ルートのどこにいるかを整理する。
- 全体市場の俯瞰:市場規模と成長率を確認
- 戦略製品の抽出:市場を製品別に分けて成長商品とダメ商品を区別し、プロダクト・ライフサイクルと市場シェアの情報を整理し、チャンスのある時間を判断
問題事業がライフサイクルのどの段階にいるかを市場全体から位置づける。市場導入期・成長期初期には製品内容による優位性、成長期後半は営業体制・アフターサービス網などの面展開の蓄積が決め手、成熟期以降はコストを下げる競争となる。
競合
競合と比較して優位性や価格、利益構造をチェックする。
- 製品優位性の確認:自社製品の優位性を確認し、製品より営業の課題と特定
- 価格と利益構造チェック:競合と比較データがない場合も推定
戦略的観点から、その会社が世の中の競合に比べていい勝負をしてるかどうかがカギである。社内の良い悪いではなく、競合と相対的に見て良いか悪いかである。
当社の強み弱み
- 戦略ロジック策定:ヒアリングにより現状のシェアが拡大していない理由を明らかにする(本書では価格は安いが資産購入の壁を越える方法を考える)
- 組織の強み弱み:営業は弱いが、他社比較で質が低いわけではない
- 市場ターゲットの絞り:ターゲット数を絞り込み、個別に直販できると判断
- 戦略展開の時間軸:一年で最大の売上を狙う必要がある
- 価値観と混乱化:ある程度確信した段階で、組織に新しい戦略をあてる
- 新戦略と実行プログラム:大目標はトップダウン、実行は参加型でプランニング
【生煮えの仮説】
仮説は生煮えの段階で、現場に行くと仮説と違う現象に行き当たり、違いを突いていくと最も効率的に問題点を確定できる
【地域・業界の特殊性】
特殊性の言葉を出す時は警戒信号で、新しい考え方に対する抵抗表現であることが多い
【市場セグメンテーション】
ユニークなセグメンテーションを編み出し、静かに実行することで戦略効果が高まる。市場を分けるタテヨコの基準(セグメンテーション要素)は自社の戦略目的に完璧に合致している必要がある。例えば、2x2で横軸にニーズが強いか弱いかを表すデータ、縦軸に自社の売上・利益額のメリットの大小のデータを持ってセグメンテーションする。普通の人間が頭の中で扱えるマトリックスは最大でも3x3で、それ以上のことをやりたい場合は二段階方式がいい。
【手に負える大きさ】
戦略を組織に落とし込むには、これなら自分にもできると思える内容にまで細分化・単純化する
【小さくてもNo.1】
事業戦略の秘訣はどんなに小さい市場でもNo.1になること。市場ポジションがマイナーな企業は、市場が伸びているうちは順調な事業に見えるが、市場の成長性がピークを過ぎた頃から、先に赤字に転落する可能性が高まる。
【抜本的改革の時間軸は二年】
社長が改革のしのたにを超えていく気力と緊張感を保つには限りがあり、社員が過度に疲れてしまうと社内政治が増幅を始める。
今後のToDo
- プロダクトライフサイクルと成長ルートのどの位置にいるのかを検証する
- 競合との優位性、価格、利益構造をチェックする
- 市場セグメンテーションを行い、今担当しているサービスが注力すべき領域を特定し、小さくてもNo.1を目指す