データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】"未"顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?

読んだ目的

  1. 支援を担当しているサービスで新規ユーザーや休眠ユーザーの掘り起こしを行っているが、明確な方針を打ち立てられていなかったため
  2. 他サービスを支援している時も未顧客を獲得するための方法論がなかったため

得られた学び

本書にはまだ製品・サービスを使ってくれていない未顧客に対する理解を深めるための知見が書かれている。本書の内容を一言で言うと、未顧客獲得は「未顧客の生活文脈とカテゴリー」と「未顧客の生活文脈とブランド」を結び付けるゲームである。

 

未顧客へのマーケティング

商品を利用するきっかけとなるシーンやタイミングのことをCEP(カテゴリーエントリーポイント)と呼び、多くの未顧客を獲得するためにはブランドへの入り口であるCEPをたくさん持つ必要がある。生活文脈や生活シーンをターゲティングして、顧客が行う行動や活動にポジショニングする。

未顧客を理解するとは、健康志向の人にコーラを売る、コスパ重視の人にプレミアムビールを売ることであり、特定条件下における思考や行動の変化と、ブランド選択に及ぼす影響を理解することである。

人を理解するのではなく、その場その時の状況の文脈を理解することで、未顧客の場合は文脈をターゲットにする。顧客層を限定するのではなく、生活のシーンとブランドを結び付けるという視点で戦略を立てること。顧客には文脈に依存する合理性や行動パターンを見つけることが要諦である。

データ分析・データサイエンティストも未顧客理解のためにN1分析を行うこともあるが、N1に売れる商品を開発するのではなく、個人の背後にあるより大きな市場や購買行動の規則性の文脈に気付くために行う。

 

【STP戦略を再考】

マーケティングではセグメンテーションするSTPアプローチがよく採用されるが、セグメントするのではなく、1000万人、1億人を超えてターゲットできるようにブランド側を文脈に沿って再解釈することが未顧客理解ですべきことである。ローンチ済のサービスに対しては、P(どんな特徴がブランドの価値として受け入れられているか)→T(どんなジョブを持った人か)→S(市場規模は?)の順に考える

 

未顧客のブランド選択は文脈単位で変わり、その場その時の状況に応じて形成される想起集合の中から適したブランドが確率的に選ばれるので、未顧客の関心事と商品を購入する目的を理解し、どんな行動の中で利用されるかを理解することで、商品の特徴や広告メッセージを最適化する。内容は顧客にとって価値になっているブランドのベネフィットは何かを起点に考える。

 

【ブランド戦略の違い】

ダブルジョパディの法則は、マーケットシェアが低いブランドは購買客数も非常に少なく、行動ロイヤリティも態度的ロイヤリティも低いという法則である。顧客が多くなればロイヤリティは高まるが、ロイヤリティを高めても顧客数やシェアが増えるわけではないので、マーケティングで伸ばすべきは浸透率(顧客数)である。

 

 

未顧客理解の5原則

【1. 文脈と意味の際解釈】

文脈が変われば意味が変わり、意味が変わると価値が変わる。

 

【2. 市場の再解釈】

未顧客は本来戦うべき市場を見通すためのレンズである。製品の市場カテゴリーで顧客を見るのではなく、もっと大きなカテゴリーの一部であるという視点を持つ。新規獲得は意味の生活文脈の陣取りゲームであり、市場はマーケターが文脈に立脚しながら作るものである。

 

【3. ターゲット再解釈】

行動の背後にある欲求、抑圧、報酬から顧客の合理を理解する。ブランドの利用シーンにおける人間の考え方や行動パターンに沿った形で商品や広告を開発する。顧客の合理は、得られる報酬の期待値が最も大きな行動を多く選ぶように収束していく。

 

【4. ベネフィットの再解釈】

ブランドの特徴 x 未顧客にとっての報酬 = 文脈最適のベネフィット

一度決めたベネフィットを言い続ける一貫性を持って想起集合に入る。

 

【5. ポジションの再解釈】

モノの売り方ではなく、モノが使われる行動の増やし方を考える。未顧客はそもそも無関心や非興味に理由や原因は存在しないため、なぜ興味がないか考えても仕方がない。ロイヤリティに関しても購買したことがロイヤリティに繋がる。

未顧客への訴求力の高い「行動→理由」型の施策を設計する。顧客は変わらないという前提のもと、既に未顧客の中で確立されている行動や習慣にブランドが寄り添う姿勢が必要である。報酬が行動を強化する随伴性に沿ったコミュニケーションを実施すると、新しい利用機会が作り出しやすくなる。

 

今後のToDo

  1. 今担当しているサービスの未顧客のCEPを5種類考える
  2. 行動→理由型の施策を設計する