読んだ目的
- クライアントでデータサイエンスを使った日々の改善だけでなく、戦略レベルで大きく視野を広げてビジネスモデルを考える必要が出てきたため
- 経営学にあるようなフレームワークではなく、戦略脳のような思考法を学びたかったため
得られた学び
本書では戦略を作るための頭の使い方が書かれている。戦略の考える上で必要な頭の使い方で活用できることをメモしていく。
通常の戦略を考えるためのフレームワークについてではない。いわゆる経営学である戦略は過去事例の研究であり定石なので、定石から一歩抜け出すためのユニークさが必要になる。ユニークさを生み出すための技がインサイトである。
スピードは競争相手より数倍・数十倍勝るスピードで実行できれば、相手が考えついていない戦略での戦いに臨むことができる。レンズはユニークな仮説をつくり出すための「モノの見方」である。
思考のスピード
スピード = (パターン認識 + グラフ発想) x シャドウボクシング
まずは戦略の定石をパターン化して身につける。コンセプトワードとして覚え、それぞれの事例を引き出しとして持っておく。次にリストアップするのは本書に必須コンセプトワードとして記載されていたものである。
- コスト系
- 顧客系
- セグメンテーション:特定のセグメントに対するターゲティングして施策
- スイッチングコスト、ロイヤリティ、ブランド:スイッチングコストを高めるとロイヤリティが高まり、ブランド力が高まる。
- 構造系
- V字カーブ:利益率は売上高に対してV字カーブになっている
- アドバンテージ・マトリクス:縦軸に「競争上の戦略変数の数」、横軸に「優位性構築の可能性」にとって分類する。
- デコンストラクション:既存の構造を別の視点から捉え直す
- 競争パターン系
- ファースト・ムーバー・アドバンテージ:競争相手より先に行動を起こす
- プリエンプティブ・アタック:先制攻撃のように一気に全地域・全チャネルで展開する。
- 組織能力系
- タイムベース競争:付加価値の産まない時間を取り除く
- 組織学習、ナレッジマネジメント:結果を出す人材の秘訣を言語化し、組織全体の知恵にする。
グラフ発想
言語と論理をグラフに置き換えることで、右脳中心の思考法となり、思考スピードを一段と速くする。シミュレーションもしやすくなる。また、セグメント別にグラフ化することで、脱平均な傾向を見つけることができる。
シャドウボクシング
パターン認識とグラフ発想で様々なアイデアを出し、繰り返し仮説検証して筋の悪いものを弾くことがシャドウボクシングである。つまり、批判的な視点で仮説をあらゆる方向から攻撃してみる。必要ならデータを集めることも行う。メモを取るときに絵を使って描く等、右脳を使ってイメージで考えることでスピードを上げる。
三種類のレンズで発想力を身につける
レンズ = "拡張"レンズ + "フォーカス"レンズ + "ヒネリ"レンズ
"拡張"レンズ
- ホワイトスペースを活用する:自分が市場だと思っていないところまで自分が商売する場と定義し直して、アイデアを発想する癖をつける。例えば、プロセスチーズ市場からナチュラルチーズ市場もターゲットとして捉え直す。
- バリューチェーンを広げる:自動車会社であれば、ガソリンやアフターサービス、自動車保険等バリューチェーンを広げてみる。
- 進化論で考える:長い時間軸でマーケットを見る。eコマースは種の爆発期でアメリカのビジネスモデルをそのまま輸入するのではなく、日本に適用する。バイクの導入は平均家計所得が一定以上になると消費量が急増するので、一定基準を満たす前に参入する。
"フォーカス"レンズ
- ユーザーになりきる:顧客行動の全体像とディテールを把握するために、ユーザーになりきりミクロな視点でペインがないか確認する。
- テコを効かせる:動かすと他も一緒に動くポイントを探す。小学生の中心人物が持っているものを他の子も買う、会社で1人の挑戦を認めて評価すると全員が一気に動くなどがある。
- ツボを押さえる:多くの利益を生み出しているロイヤルユーザーやリピーターを押さえ、離反防止・再購入促進することで利益を生み出す。
"ヒネリ"レンズ
- 逆バリをする:人と逆のことを行う。デフレの時にM&Aを行う、経済性の悪い地域に多くの銀行支店を置く等
- 特異点を探す:課題解決に向けて、その問題が発生していない特異点(特異的に業績の良い支店のノウハウ等)を探して、その取り組みを課題解決に向けて利用する。
- アナロジーで考える:Aで成り立ったものがBでも成り立つかを考える。例えば、使い捨てのボールペンと同様に使い捨て髭剃りを作れないか等がある。物事のメカニズムがわかったら、誰が?、どこで?、なぜ?のように要素を当てはめて思考実験する。
例:不動産業界に参入
不動産業界に参入するための戦略立案プロセスを戦略脳の使い方をトレースする形で記載されているので、参考になるように大まかなプロセスを記載する。
- 仮説のタネを作るためにデータ収集:複数のマクロ指標(住宅着工件数や仲介業の市場規模など)を戦後から今まで揃う範囲で集める
- シャドウボクシングで仮説を進化させる:団塊ジュニア向けファミリー住宅にチャンスがあるという仮説検証をヒアリングをかけて行う
- アナロジーそしてユーザーになりきる:他国の人口変動に伴う住宅ブームのパターンを使ったアナロジー、団塊ジュニアになりきる・インタビューをすることで仮説の精度を高める
- 競合優位をどこで獲得するのか:V字カーブの右側のようなパターン認識で今後の戦略を考える。
- 顧客のロイヤリティを獲得する:ファーストムーブアドバンテージのパターン認識を活かしながら、顧客ロイヤリティを獲得する戦略を考える。
- 戦略案の全体像をまとめる
チーム力でインサイトを生み出す
チームで戦略を作る・インサイトを生み出すためには次の2点を強く意識したチーミングや雰囲気・ルール作りが必要である。
- 異質の人材を組み合わせる:経験・視点・思考法・性格などが異なる人々をうまく組み合わせて、チームにしていくことが求められる。
- クリエイティビティを刺激する「雰囲気」と「ルール」:PNIルールというまず①ポジティブに受け止め(P)良いところを探す、その上で②ネガティブ要素(N)を洗い出し、最後にもう一度③面白いところ・面白くするやり方(I)を考える。