データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】デジタル時代の基礎知識『ブランディング』「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール

読んだ目的

  1. クライアントの新規顧客獲得が短期的な視点(1か月の目標値達成等)でしか考えることができておらず、長期的な目線でブランディングする必要がある一方、自分に十分な知識がなく基礎的な知識を付けるため
  2. ブランディングの価値ベースで顧客体験やマーケティング施策を考えるための土台となる知識をつけるため

得られた学び

本書はブランディングに関する基礎知識がまとめられている。コンサルタントとして、データサイエンティストとして必要な内容をまとめる。

ブランドとは…

識別記号(文字、音声、形、におい)と知覚価値カテゴリー、人格、便益、論拠)が結びついたものである。自社サービスを他者のものと区別してもらうことが目的で、情報処理を簡略化する社会的な機能があり、マーケティング4P施策の判断の土台となる。

ブランド力 = 体験の魅力度 x 体験の量・時間 x 体験の一貫性

ブランド創りの全体像とそのプロセス

ブランド創りは次の5つのプロセスで行う。

  1. プロジェクト体制と戦略方向性検討
  2. ブランドターゲットの設定
  3. インサイトに基づく顧客体験デザイン
  4. ブランド戦略と4P施策要件の策定
  5. 4P施策のPDCAサイクル運用

次から各ステップのポイントを記載する。

1. プロジェクト体制と戦略方向性検討

与件を整理して戦略の大きな方向性を整理する。ここでは経営陣が注力したい方向性も含めて整理しておく。例えば、大規模なマーケティング予算を使いたくないという方針であれば、マーケティング予算を使った戦略の方向性は通らないのでスコープから外す等も考える。また、各部門の方針も含めて早めに合意を取り付けておくこともスムーズに進める上で重要になる。

2. ブランドターゲットの設定

ブランドターゲットは2種類のタイプがいる。特にブランドターゲットをターゲット顧客として設定し、施策の一貫性を取る時の拠り所とする。

  • ブランドターゲット:象徴的顧客のことで、ブランドに心理的な共感があって、長期的にな関係性のファンになってくれるターゲットである
  • セールスターゲット:販売拡大先の顧客で、憧れ、機能性、価格など様々な理由で購入する売上規模確保のための販売先。注意点としては、①ポテンシャルユーザーの数の多さ、②競合と競り合って負けないか、③顧客獲得のコストは低いかがある
3. インサイトに基づく顧客体験デザイン

顧客インサイトとは「突かれると感情が揺れ動き、購買行動につながるよぬな生々しい本音」のことである。ブランドからのメッセージは次の2パターンある。

  • チャンス喚起型:この商品・サービスは良いかも!?
  • リスク喚起型:このまま放置するとまずいかも!?と思わせること

インサイトを理解するためには属性データだけでなく、サイコグラフィック/ライフスタイル/関係分野への意識も調べる必要がある。普段から自分の欲望や不安、恐れを直視したり、自分の言動の理由を客観視して掘り下げることで、インサイトを理解するためのトレーニングをする。

ブランディング顧客体験全体で差別化する。例えば、iPhoneが強い理由は顧客体験全体(アップルストアから箱根さから、コンテンツから、共有のしやすさ、サポートまで)のクオリティが高い一方、Androidに対して端末自体のスペックが劣っても顧客体験全体で見るとiPhoneが強い。

顧客体験のデザインは①購買行動プロセス、②顧客インサイト、③体験施策アイデアの3点を元にカスタマージャーニーマップを作る。①は自社業態に合わせたファネルを作り、②はプロセスごとにインサイトを掘っていき、インサイトに基づく体験施策アイデアを作る。これを作ることで社内の共通言語を作る。

4. ブランド戦略と4P施策要件の策定

ブランド戦略策定とは…

「ブランドは何を武器に、どのように戦っていくのか」という骨太の概念で、ブランド戦略の本質はターゲット顧客にこう思われたら選ばれるであろうというブランド価値を決めたら、その印象が残るように全ての顧客体験や施策に一貫性を持たせるう整える。ブランド戦略は競争力の一つで、ブランド力が低いと一時的に商品力が上回っても選ばれない一方、ブランド力が蓄積されてくると、競争力が安定する。

ブランド戦略を考える上で、まずはブランドのエビデンス(=固有の価値)を整理する。ブランドの知覚価値は生活者が主語になるものと、ブランドが主語になるモノが双対になっている。ブランドの価値を考える時は、インサイトとコアバリューが11の関係になっているかを確認する。ダイソンの掃除機を例にとると次のような内容である。

生活者主語の知覚価値

  • ブランドターゲット(象徴的な顧客像):理知的でハイテクなプロダクトを好む男女
  • インサイト(刺激する本音):健康生活を送りたい、既存の掃除機は吸引力が低下してゴミを取り出す

ブランド主語の知覚価値

  • コアバリュー(一言に集約した価値):吸引力の衰えない唯一の掃除機
  • パーソナリティ(人格イメージ):先進的・合理的なプロフェッショナル
  • ベネフィット(心理的・物理的な便益):吸引したゴミが見えて得られる掃除の達成感、使用していても吸引力が衰えにくい
  • エビデンス(論拠・事実・スペックとなる):特許取得のサイクロン方式

デジタルの発展に伴い接触頻度が増加した現代においては、生活者主語の形で生活者の願望や課題への貢献などの価値を訴求し、接触頻度を増やす。

ブランド戦略はレバレッジ視点で投資する。例えば、トヨタは製品別にブランド戦略を立てており、レクサスやプリウスは別々のコンセプト、デザイン、コア技術を訴求している。一方、VWはコンセプトやコア技術を共通に見せるブランド戦略を取っており、後者の方がレバレッジが効く。

ブランド体験の評価は、受容性(支持の広さ)と差異性を2軸で考える。差異性があり、受容性が低いニッチなエリアを狙うようなブランド戦略を策定する。

5. 4P施策のPDCAサイクル運用

コミュニケーション施策は顧客獲得と育成の何を改善するのか認知関心、検討、購買、リピート)を定める

開発基準は①ターゲットのメディア接触状況(テレビなのか新聞なのか)、②コミュニケーション施策の目的(認知・想起を高めるのか)、③態度変容のキー要素(どの要素を、どう伝えるのかが関心を引き出すか?)の3点が情報として必要となる。

ブランド戦略の定着と組織的学習のためには、ブランド戦略は3年程度は中期的に固定して、マーケティング施策自体を改善する。一度の試作の失敗をもって、戦略を転換すべきではない。ブランド戦略のPDCAサイクルはブランド購買プロセス(認知から購買・リピートまでのファネルベース)、ブランド知覚(パーソナリティ、ベネフィット、エビデンス)、ブランド接点(商品、広告、販売店など)の3つの観点で実施する。どういう知覚価値が認識されたときにCVが上がるかを示し、ブランド戦略への投資と成果を可視化することでブランド戦略を推進する。

今後のToDo

  1. 自分のクライアントのブランド戦略とマーケティング施策が整合的か検証してみる
  2. ブランド戦略のPDCAサイクルを回すときの知覚価値とCVの関係性をどのように数字で示すことができるかを学ぶ