データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】フレームワークを使いこなすための50問

読んだ目的

  1. 帰納法等の思考法を行うときにフレームワークを活用する必要があるが、フレームワークの適切な利用方法を知らないため
  2. 戦略寄りのディスカッションに入ることが度々あるが、理論的・論理的に基礎となる考え方を学ぶため

得られた学び

本書では経営戦略を立てて実行していくまでの過程で、どのようにフレームワークを活用して戦略策定するかが記載されている。経営戦略策定をした経験がないものの、データ分析では戦略策定の考え方を持った上で進める必要があるケースが多々あるため、全体の流れを抑えた上で、フレームワークの利用方法を整理していく。

まず、経営戦略は全社戦略と事業戦略に分けられる。全社戦略では次の3点を決める。

  1. 事業領域の決定
  2. 経営資源配分の決定
  3. 成長戦略の策定

事業戦略は次の3つのステップで策定していく。

  1. 現状分析
  2. 分析結果から戦略策定
  3. 策定された戦略を実行計画に具体化

各策定プロセスや決定方法、フレームワークの使い方を使い方を要約していく。

全社戦略

まず全社戦略の決定に使う考え方やフレームワークは次の3つである。

【事業領域の決定】

自社の事業領域を定義する、つまりどのドメイン(領域)に注力するかを決める際は、①「誰が」どの強みを生かし、②「誰に」どのような顧客に、③「何を」どのような価値を提供するかを検討する。例えば、JR東海が鉄道事業ではなく輸送事業とみなすことで、JAL/ANAが競合となる。

経営資源配分の決定】

全社戦略策定ではBCG-PPMを利用する。複数事業が存在する場合に、どのように経営資源を配分するかを考える場合にBCG-PPMを利用する。逆に全社戦略策定以外ではBCG-PPMを利用しない。BCG-PPMを利用する前提と目的は次のとおりである。

  • 前提:各ビジネスは独立した事業であることが原理原則で、独自に戦略を構成できる単位であること
  • 目的:独立採算制の壁を超えて、経営資源の配分元と配分先を明らかにするのがPPMを使うこと

【成長戦略の決定】

成長戦略はアンゾフのマトリックスというフレームワークで考える。

事業戦略

事業戦略は大きく分けて3つのステップで策定するため、それぞれのステップで必要なフレームワークと必要となるスキルを整理する。

現状分析

現状分析の目的は、収集された情報の意味合いを考え、情報から導き出される示唆を炙り出し、アクションへ繋げていくことである。現状分析を行うための大枠は次の2つのフレームワークである。

  1. 3C:市場(=顧客)、競合、自社を分析
  2. SWOT分析:外部の機会と脅威、内部の自社の強みと弱みを分析

【3C】

3Cの目的は、①市場の変化を明らかにし、②変化に対する競合の対応を明らかにして成功の鍵を明らかにし、③競合を見習い自社の改善ポイントを明らかにすることが目的である。

SWOT

3C同様、外部環境の変化要素を検討した上で、自社の対応を考えることが目的で、分析の順番はOTを分析し、その後SWを分析する。

3CやSWOTで現状の大枠は抑えることができた。3Cのそれぞれをどのように分析したら良いかについて、各分析単位でフレームワークの利用目的と利用タイミングを整理した。

<市場分析>

市場分析を行う目的は、①市場の変化、②市場の変化が業界や自社、競合にもたらす影響、③影響から明らかになる市場での成功要因(KSF)の3つを明らかにするである。これらを明らかにするために、市場分析では

  1. マクロ環境分析:法規制や景気変動などの変化が与える影響を明らかにする
  2. 業界環境分析ステークホルダーの変化をみて、自社への影響を明らかにする
  3. 顧客分析:選択肢が増えることによる顧客の審美眼やニーズの変化を明らかにする

【マクロ環境分析:PEST】

目的は、変化とその影響であり、これまで当該業界で成功要因とされていたものが、今後どう変わっていくのかを明らかにすることである。中期経営計画策定時などの未来を予測するタイミングで必要となる。

【業界環境分析:5Fs(ファイブフォーシーズ)】

目的は、業界内の厳しい力関係をどうすれば緩められるのかを分析し、少しでも儲かるようにするためにはどうしたらいいのかを明らかにする。特定の業界での事業に新規参入、継続・撤退を判断するタイミングで検討する。

【顧客分析:顧客構造マトリックス

目的は、自社のサービスを購入してくれる/購入してくれないのはどんな顧客で、これからどう変化しそうなのかを顧客構造で明らかにし、なぜ購入してくれるのか/してくれないのかを明らかにする。分析するタイミングは、既存顧客の売上が低下してきた時と、新規顧客へ売り込もうとする時である。IDベースのデータサイエンスを用いた分析は、ある意味顧客分析が多く、他の分籍はまだ拡大余地が大きいように感じる。

<競合分析/自社分析>

自社分析を行う比較対象として競合分析を行うため、これらは必ずセットで行われる。分析は2ステップで行う。

  1. ゲームの結果(売上、ROIなど)を明らかにする
  2. 勝因・敗因を明らかにする:バリューチェーン分析

【競合分析/自社分析:バリューチェーン分析】

目的は、パーフォマンスに対して強み・弱みがどうゆう因果関係で結びついているかを輝子にすること。強みや弱みは競合に対してどうか判断する相対的なもので、市場分析で明らかになったKSFに貢献できるものかの強み・弱みを判断していく。

戦略策定

戦略策定は基本パターンに乗せながら、個別の問題を解決するためにカスタマイズする。戦略の基本パターンは「ポーターの基本戦略」と「コトラーの競争上の4つの地位」がある。

【ポーターの基本戦略】

ポーターの基本戦略には、①コストリーダーシップ、②差別化、③集中の3種類の戦略がある。

「コストリーダーシップ」

コストリーダーシップとは、コストを抑えながらできる限りマージンを多くする企業=価格を維持することが目的な戦略である。この戦略をとる企業は、業界1位の企業、または技術革新や業務プロセス効率化によってコスト削減できた企業が行う。混同しがちだが、低価格戦略は差別化の1つであり、コストリーダーシップが取る戦略ではない。

「差別化・集中」

業界2位以下の企業がとる戦略で、違いは次の通りである。

  • 差別化:市場全体をターゲットとしているものの、マス市場を狙えないため、泣く泣く差別化することにより、特定市場ををターゲットとすること
  • 集中:業界1位が攻めてこないような領域で自社の生存を計ること

コストリーダーシップと差別化は両立できず、業界1位の企業は業界2位以下の企業の差別化を取り込んで無意味な差別化にする戦略を取る。

コトラーの競争上の4つの地位】

4つの地位とは、①リーダー、②チャレンジャー、③フォローワー、④ニッチャーの4つである。

  1. リーダー:業界1位がとる戦略で、市場拡大とシェア拡大を目的として模倣戦略と低価格戦略を取る。ただ、低価格戦略ゼロ・サムゲームになるため、安易に選択すべきではない。
  2. チャレンジャー:業界1位企業のシェアを奪取しようと意気込みを持つ企業のことで、戦略は差別化と同じである。
  3. フォローワー:廉価版市場で極力コストをかけずにビジネスを行う。リーダー企業が模倣できるがしたくない市場を狙いビジネスを行う。
  4. ニッチャー:マス市場を狙う業界1位が狙わない市場に集中する、ポーターの集中の戦略と同じである。

これらの基本戦略のパターンをまとめると次のとおりである。

ポーターとコトラーの戦略基本パターン

戦略を機能させるには基本パターンを逸脱するとまともに機能しないため、まずはこれらの枠組みに即した戦略を取るべきである。

実行計画(中期経営計画)

戦略を実行に移すにはもう1ステップ必要で、それは中期経営計画である。中期経営計画に必要な構成要素は次の2点である。

  1. 目標:定性目標、定量目標(売上や利益)
  2. 達成プロセス:目標達成に向けた課題、解決策、スケジュール

中期経営計画が「気合い」と「えいや!」で作られてしまうのは、経営企画部門の機能不全で、3C分析等の分析ができず、経営陣に対してカウンターオピニオンを提示することができず、ただの調整役・集計役になっている。気合いで作られることで、目標と実現施策が乖離しており、施策を実現しても目標に到達しないケースもある。また、緊急度は低いが、重要度の高い施策が後回しになる傾向にある。

現場が経営企画部が出した中期経営計画の施策にやる気を起こすためには、次の3点を意識する必要がある。

  1. 必要だと思えるか:ゴールの妥当性を明確にし、目標達成手段が明確化されていることが必要となる。また、従業員の戦略リテラシーの向上も必要となる。
  2. 自分でできると思えるか:組織能力(本当にできるか)の妥当な評価を下し、具体的なアクションプラン(WBS)に落とすことで、実行可能であることを示す
  3. やり損にならないと思えるか:効果検証は事前にゴールと評価基準を決め、曖昧な評価をしないような仕組みを整える必要がある

経営戦略を機能させるためのスキル

まとめると経営戦略を機能させるためには次の4つの力が必要となる。

  1. 現状分析力
  2. 戦略策定力
  3. 戦略実行力
  4. 実行継続力

事業成功の肝を発見できるようになるためには、次の3つのトレーニングを日々行う。

  1. 自社のビジネス構造理解:競合企業の情報を分析し、相対比較で強み弱みを分析
  2. 様々な業種のビジネス構造を比較:BCGでは規模型事業、特化型事業、分散型事業、手詰まり事業に分類して構造を理解している
  3. 問題を想像する:日々のニュースを見ながら、問いを立てて、すぐに答えの仮説を考えることを繰り返すことで場数を踏む

今後のToDo

  1. 自分のクライアントの分析を行なってみて、戦略から中期経営計画まで基本パターンから逸脱していたり、不十分な点を洗い出してみる
  2. 自分が戦略コンサルタントとして、データサイエンティストとして頻繁に利用するといの設定力を向上するためのトレーニングを電車内でやってみる
  3. とりあえずフレームワークを目的にした学びをこれ以上は一旦止める