読んだ目的
- 事業目的や分析目的、施策目的など、目的ベースで仕事を進め、最小の努力で最大の成果を生み出すため
- プロジェクトリーダーとしてプロジェクト目的のストーリーを伝え、配下メンバーがプロジェクトに取り組む意義を見出してもらうため
得られた学び
本書には目的を頂点として仕事を進める目的ドリブンで考えるエッセンスが書かれている。プロジェクトをマネジメントする立場になったため、チームメンバーに目的を意識して動いてもらうために、目的ドリブンなストーリーの作り方をメモする。
目的ドリブンに考え、仕事で成果を産むためには次の三層ピラミッド構造で考える。
- 目的(Why):何のために
- 目標(What):何を目指して
- 手段(How):どのように達成するか
目的から目標、目標から手段に具体化するには「どのように?」と問いかける、手段から目標、目標から目的に抽象化するには「何のために?」を問いかける。実践的には「どのように?」と問いかけて、三層ピラミッド構造を作り上げる。
目的
目的とは「何のために?」という問いに対する答えのことで、「新たな価値を実現するために目指す未来の到達点」である。目的設定は分析ではなく、総合(シンセシス)の思考で、ポジションや時間軸、意思・使命、組織内の問題認識や要求、外部環境の変化をひっくるめて収束させる。また、目的は設定する上で「能力」(できる/できない)は考慮しないことが重要である。次から目的設定の具体的なステップである。
【目的設定ステップ】
1. 仕事の上位目的とその背景を押さえる
- 目的にも階層構造があり、部署によってミッション・目的は細かく分解される
- 組織において目的を設定するとき、自身の周辺におかれる上位目的・下位目的を把握し、それらと一貫性を意識することが必要
- 上位目的を確認する際に理解すべきことは、上位目的の裏側にある背景で、その上位目的に取り組むことの必然性を与える問題認識のこと
- 目的と背景はコインの裏表であり、背景を合わせて捉えることで意図を把握する
2. ポジションと時間軸で目的の広がりを押さえる
- 目的を定めるには、まず自分のポジションが守るべき守備範囲をカバーする
- 時間軸で目的が見据える射程を捉える(直近はタスクや定例会、短期は単年度事業計画、中期は中期経営計画、長期は企業ビジョンなど)
3. 何のためにを問い、文字に落とす
- 自分の使命(~をすべきという)と意志(~をしたいという)が目的設定の源になる
- 目的を設定するアプローチは2つあり、①何のために?を問う方法と、②もし仕事がなくなったらどうなるか?(何が価値として失われるのか)の2点である
- 自身が腹落ちする目的を見出すまで「何のためなのか?」を問うこと
4. 上位者と目的をすり合わせる
- 具体的な仕事に着手する前に、設定した目的が筋が良いか上位者に確認し、上位者が目的を見極める際の見方やセンスを取り込む
目標
最初に目的と目標の違いを明らかにしておく。目標は目的の中継地点(マイルストーン)で目的の一部で、目的は抽象的・長期的だが、目標は具体的で中期~短期的である。目標設定が必要な理由は次の4つである。
- 抽象度の高い目的を実務に落とし込める
- 有効な対応策を体系的に洗い出せる
- リソースの無駄使いがなくなる
- 達成と成長が実感できモチベーションが高まる
【目標設定ステップ】
1. 目的を構成要素に分解する
- 目的をどのように達成するか?(How)を問い、具体的な構成要素に分解していく
- 目的から目標をトップダウンで分解することで、一貫して繋がった目標を作る
- 大きくて困難な目標も小さく分解することで、達成への道筋が見えてくる。
2. 抽出した構成要素に目標水準と期限を与える
- どの程度の水準を?(高さ)といつまでに?(期限)の2つの視点から決める
- 過度に高い目標設定をするとパフォーマンス悪化や体調を崩すので止める
- チームメンバーの意欲とリーダーの意志を丹念に整合させること
3. SMARTの視点で目標を精査する
設定した目標の妥当性を次の5つの視点で確認する。
- Specific:具体的であるか(アクションイメージが湧く)
- Measurable:測定可能か(定量か、定性でも達成条件を設ける)
- Achievable:達成可能か(リソース的に達成可能)
- Relevant:目的と整合しているか
- Time-bound:期限が明確か
手段
手段とは戦略の核心であり、戦略は目指す姿と現状の間にあるギャップを埋めることである。定めた目的や目標に対する手段こそが戦略の独自性を決める。
目標を達成するための手段の考え方は、次の5つの基本動作で考え出す。
- 認知:目標の達成に向けて解くべき問題を発見する
- 判断:問題の解決に向けて実行策を決める
- 行動:実行策を具体的な行動計画に仕立て上げ、チームに落とし込んで実行する
- 予測:将来に発生し得る潜在的な問題を先読みし、先手を打つ
- 学習:経験によって得られた学びを将来の問題解決に問題解決に転用すること
手段の掘り下げ(原因の掘り下げ)が浅いと、リアルな行動は取りにくい。
認知
最小の労力で最大の成果を出すためには問題を見極める必要がある。問題とは現状と目標のギャップであり、問題を設定するためには「我々は何を目指しているのか?」と「目指す先と現状のギャップは何か?」を問う。
- 目標に対して現状把握の視点を洗い出して整理する
- 目標と現状のギャップから問題を発見する
- インパクトx解決可能性に基づき優先すべき問題を絞り込む(2軸でマッピングする)
- 原因を掘り下げ(why)、どこに問題があるか(where)を特定する
問題を発生させている原因を深掘りできていないと打ち手の効果も落ちるので、因果関係の構造に潜む真因に手を打つ。
判断
判断することは「すること」と「しないこと」を分けることで、優れた判断は「質xスピード」で決まる。判断の質は判断軸によって決まり、目的・目標を判断軸に据え置くことで、優れた判断ができるようになる。
- 根本原因に対して対応方針を立てる
- 対応方針をHowで問い選択肢を洗い出し、選択肢を具体化しブレークダウンする
- 目的・目標から判断軸を抽出し、優先すべき判断軸の重みづけする
- 判断軸と実行策のオプションマトリクスを作成し、優先的に実施する策を決める
行動
行動は目的・目標の達成に向けた方針を手足が動くレベルに具体化することである。成果創出は「スピードx正しさ」で決まる。大前提として正しい行動を取る必要があり、かつビジネスなのでスピードは重要である。加えてアクショナブルであることが重要であり、メンバーの力量によって指示内容の具体性を調整して伝える。伝えるときはWhy-What-Howの順に、目的と目標と手段をストーリーとして伝えることで、工夫や修正を促すことができる。実践するためのステップは次の通りである。
- How(どのように?)を問いタテにアクションのカテゴリーを切り分け、ヨコに分解を進めてアクションをブレークダウンする
- 一度立ち止まってズームアウトし、目的-目標-手段の目線で繋がりをチェックする
- アクションにWhen(いつ)の視点を加え、行動計画(ガントチャート)を作る
- 最後にWho(誰か)の視点を加え、アクションをメンバーに任せる
予測
目的・目標の達成を脅かす潜在的な問題を先読みし、先手を打つことが予測である。リーダーは目的・目標達成に向かって躓かないように、将来のリスクを取り除く。リスクとは目的を達成するための手段の阻害要因で、インパクトは脅威度x脆弱性で決まる。備える時は最悪の自体に備える冷めた目で、客観的にあり得る脅威をフラットに洗い出す。リスクへの対策は次のステップで進める。
- 目的・目標達成に必要な手段を業務フローベースで整理する
- 手段に対するリスクを洗い出す
- リスクマトリクス(インパクトと発生確率の2軸)で注力すべきリスクを特定する
- 対策を立てる(高リスクは軽減/回避/移転による対策、低リスクは受容)
学習
学習には習熟の学習とヨコ展開の学習があり、リーダーとして意識的に身につけておくべきはヨコ展開の学習である。要するにアナロジーであり、知らないことを抽象化して知っていることとつなげることで、既存の学びをヨコ展開することができる。アナロジーを実践するには、①仕事を結局のところなんなのか?と意識的に抽象化すること、②示唆を引き出す既知を思い出すこと、③両者の間の類似性を見出し既知から未知を知ることの3つがそろって可能になる。
- 問題の外部に意識を開きアナロジーの可能性に気づく
- 目の前の仕事が「何のためか?」を問い、本質を抽出して共通目的を引き出す
- 共通目的を手掛かりに知っていることを思い起こす
- 知っていることから知りたいことへの示唆を引き出す
今後のToDo
- 分析に取り組む前にWhy-What-How(目的-目標-手段)を整理する
- アクション可能な形に落とし込んで仕事を渡す