データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】問題解決の全体観 ソフト思考編

読んだ目的

  1. ドキュメント・コミュニケーションを読み、姉妹本である「問題解決の全体観」を読んだ方が理解が深まるため
  2. 空・雨・傘ストーリーを作るスキルを身に着けるため

得られた学び

本書には問題解決に向けたプロセスと解決過程で使うツールに関する方法論が書かれている。本書はソフト思考編であり、問題解決における思考様式とマネジメントについて記載されている。現状自分がマネージャーロールが求められており、特に活用すべきことをメモしていく。

問題解決の思考様式

取り組み姿勢:価値ある答えを創ろう

【1. 答えを創る】

日々直面する多くの問題には模範解答は存在しないので、自分で創る心構えを持つ。答えを創るには自分自身の解釈が重要で、理由は普段接するのは部分情報や表面情報だからである。権威のあるものに対しても疑ってみることで、独自の解釈が必要にある。例えば、専門家や成功体験は次のように聞く。

  • 専門家:2/3を聞く(過去、現在は正しく、未来は正しくない)
  • 成功体験:1/3を聞く(普遍的真実は正しく、時代的・固有的真実はアレンジ)

新しいことをする時、新コンセプトや新ラベル創りが必要になる。事業全体を定義づけしたり、変化のコンセプトを表す図表を作る。使う時は「大胆に創り、恐る恐る使う」

独自の解釈をするとき、ボスと対立することがあるが、取り得るオプションは次の4つである。

  1. ギブアップ(ボスに従う)
  2. 密造酒づくり(ボスに従いつつ、陰で進める)
  3. 軌道修正(ボスの指示に従った後、自分のアプローチを進める)
  4. 独断専行(ボスを無視して、自分の信じたアプローチを進める)

 

【2. ポジティブ・メンタリティー

問題解決はポジティブな答えを出すためであり、ネガティブメンタリティーからは生まれない。1%でも可能性を探し、何とか膨らませてポジティブなものに仕上げようというメンタリティーが不可欠である。次のような思考回路を持つことも重要である。

  • 難しいから面白い
  • 誰もやったことなければ30点でも1番
  • Do more better(連続的な成長)よりQuantym Jump(非連続な成長)

 

【3. End Product志向】

End Product(最終成果)を想定して仕事を進める姿勢を持つ。どんな些細な仕事でも顧客はいる(上司、同僚、他部門、社員、社会)。手間だけ仕事(誰に読まない議事録、ダラダラ会議、山ほどの情報収集)や、無感覚仕事(言われたことをやる)は人的資源の浪費である。初めにEnd Productのイメージを持ち、イメージから段取りを逆算して効率的な手順・道具・時間配分・アクションを考える

 

【4. Complete Work】

完結性のある仕事をすることで、漏れなく質の良い仕事をする。いつでも、どこでもComplete workを目指す必要があるのは、必ずその成果の顧客が存在するからである。時間がなくてもComplete Workをする必要がある、いかなる仕事のいかなる期間でも、その期間で最低レベル以上の質を出さなければならない。3週間、3日、3時間と期間が与えられたら、必ず完結させる

仕事によってComplete Workは変わるが、空だけ、空・雨だけの依頼であっても、傘の行動のアドバイスまで想定して仕事を進める

 

【5. 必殺!】

必殺とは筆者の言い方で、本当に良い事を追い求め、本気で迫り、必ず実効につなげるという強い姿勢のことである。「価値にあくまでこだわる」ということである。

  • ドラスティックなQuantum Jumpは抵抗を示すのはが常であり、通すには強固なロジックを組むとともに、ギリギリまで踏み込んだメッセージに切り込む必要がある。これには気合や迫力といった「必殺!」の姿勢が必要になる
  • 慣れていないやりにくいものを遂行してもらうにはWTDに加え、How to do?(どのように)を緻密に創り上げることが必要である。加えて、多面的かつ精力的なコミットメントとプロデュース活動が欠かせない。
  • 新しい提言をした時の「できる、できない論争」になったときの、「てめぇ、本気か?」という気迫の世界もある。
  • 「やわらかな必殺!」は提案書・報告書を「解っていただく」という姿勢、社内仕事でも丁寧な仕事で無駄な議論や手直しの時間が省ける。

 

ものの見方:「複眼」で観よう

価値のある成果を出すには、物事を捉える視点、目のつけどころ、波長を工夫するということである。

【立ち位置を変えて観る】

  • 鳥の目:ユーザーニーズだけでなく、購買プロセスで理解する
  • 虫の目:例えば高品質は、耐久性が高い・低故障・高機能のどれか具体化する

 

【見えにくいところを観る】

下記の右側の見えにくい情報定量より定性、効率より効果、短期より長期、ベネフィットよりリスク)から良質で+αの情報を得るようにする。

また、加工データは本来の姿が見えなくなっている可能性があるので、アンケートは調査票、インタビューは自分で、現場を見るといったオリジナルを見るようにする。

 

【フィルターを変えて観る】

  • ビジュアル化は①着目点を変える(見る指標のみ色付け)、②可視化を変える
  • 典型的なパターンを見る
  • 典型的なパターン認識を外してみる
  • アナロジー(類似性・共通性)から見る
  • 直列的に一つの方向へ因果関係が流れる、鶏卵である循環的な関係、循環的な関係を繰り返してアップ/ダウンする螺旋型の流れをみる

 

アタマの使い方:問題解決「回路」を鍛えよう

【直感力*論理力回路】

直感力とは体験記憶からの「ひらめき」であり、ある問題に直面した時に、その問題に関係ありそうな体験記憶をフラッシュバックしている。直感力は知識や経験の広さや強さが影響してくる後天的なものである。

論理力とはシステマチックな構造的発想で、ロジックツリーなどを元に考えることである。直感力と論理力の合わせ技には大きく2つのパターンがある。

1. スポット的発想と構造的発想を補完的に使う

  1. スポット的発想を構造的発想で検証する(思いつきのアイデアを論理的に検証)
  2. スポット的発想から構造的発想を導き出す(プレストした結果を構造的に整理)
  3. 構造的発想にスポット的発想で肉付け(例え話)

2. スポット的発想と構造的発想を交互に使う

  1. 構造的発想からスポット的発想でジャンプする(論理的に微に入ってしまい行き詰まった時に直感力で別世界の解決策へジャンプする)
  2. 構造的発想とスポット的発想を絡めてアイデア創出()

 

【SPM回路(S:センサー P:プロセッサー M:メモリー )】

うまく問題解決を続けられる人たちは次のような特徴を持っている。

  • S:問題に直面した時に高感度センサーで感じ取り、的確で早い動き出しができる
  • P:多様な体験記憶のメモリーから問題対処法を考える
  • M:体験記憶をスピーディーに呼び出すことができる

これらのSPM回路を鍛えるには次のような方法で練習する。

  1. 判断力1000回トライアル:トピックを選び自分の意見と理由を考える
  2. 横発想・縦発想:横発想は連想を働かせアナロジーを考える、縦発想は横発想を使ってシナリオ・ストーリーを考える
  3. センサー増殖法:1つのメモリーから新しい意味合いを見出しメモリーを作る

 

試合運び

仕事と作業をうまくマネジメントする

仕事と作業の言葉をはっきり定義して使うと仕事の進め方のレベルが上がる。まず、本書の仕事と作業の定義の違いは次の通りである。

  • 仕事:ある成果を出すために思考する(頭を使う)
  • 作業:思考のために準備する、思考したことを実行する(主に手足を使う)

新しい価値を作るのも、答えを作るのも仕事である。仕事の特性は次の4つがある。

  1. 長時間続かず、せいぜい1日3,4時間
  2. 時まぐれで体調や気分の影響を受けやすく、決まった時間にできるわけではない
  3. 熟成が必要で、時間よりも短い思考時間で複数回数練り直した方がいい
  4. 一気には仕上がら図、最後に一気に追い込む仕事の仕方は負け戦である

 

【戦闘力を上げる仕事術・作業術】

  • 仕込み(End productの想定、仮説の組み立て、アプローチ/段取りを考える)、熟成(修正・補足)、仕上げ(整合性調整、論理構成)の3つの仕事のリズム感を持つ
  • 三上(馬上:移動中、枕上:寝る時、厠上:トイレ)で仕事を進める
  • 馬上(移動中)をうまく使う、読書だけでなく考える
  • 頭が動く時は仕事優先、動かない時は作業、頭も手も動かない時は寝る
  • 易しい問題から解く試験合格術は使えない
  • 難仕事を早めに仕込めば、熟成中に他の仕事をできるので、多く仕事をこなせる
  • 仕事が先に来れば、作業が減る(無駄作業が減る)
  • ドキュメントコミュニケーションが作業効率を上げる

 

プロジェクトマネジメントの勘どころを押さえる

仕事は全てプロジェクトであり、3日仕事でも顧客と納期がある。3日仕事でComplete workを行うためにはスケジュール表のイメージが不可欠である。勝てるプロジェクトマネジメントは、仕事で始まり仕事で終わる。期間別にやるべきことは次の通りである。

  • 序盤:End Productの想定や仮説作り(仮説マップ作りと整合性シミュレーション)、段取りシミュレーション(解読・創案・評価の検討)
  • 中盤:仮説修正、解決案の整備、評価方法の検討やフィージビリティの確認、ロジック構築とメッセージ作成、報告書の構成検討
  • 終盤:仕事や作業の統合(報告書統合)、磨き込み(誤字脱字/ロジックの漏れ/用語確認などの論理的チェック、分かりやすさやインパクト等の感性チェック)

メリハリの効いたスケジューリング作成をする。大抵締切間際になってバタバタするので、次のようなスケジューリングをする。

  • 序盤と終盤に時間をとり、スケジュールから切り取る(3日仕事なら序盤と終盤に0.5~1日程度、3ヶ月仕事なら序盤と終盤に1~1.5週程度)
  • クリティカルパスを考える(外部委託する調査、難問の解読)

 

日々のマインド・マネジメント

【時間に対する備え】

  • 余白:新しい知識や知恵から今までと異なる解決策を作るために余白を作る
  • 時間感度:時間の無駄に敏感になり、時間的余白をコツコツと貯める

【知識・経験に対する備え】

  • アンラーニング:捨てること・変わることを知り、自由な拘らない心を持つ
  • 知的好奇心:分からないことを分かるように
  • 思考の絶対値:想定範囲内を大きく持つ

【決意に対する備え】

  • インディペンデント:多少の風当たりがあっても心地よいと感じるぐらいになる
  • 黒白:はっきりと結論付けるようにする
  • 白い答え:世のため人のためになり、自分にも一部還元される答え
  • 本気でやるか、やらぬか:本気でやる覚悟を、小さなものから始めて積み重ねる
  • 踏みとどまる覚悟:難しい仕事に出会ったら、難しいから面白いと考える
  • 反省しても後悔しない:足りなかったところを反省するのみ

【不安・リスクに対する備え】

  • 曖昧さに馴染む:仕事は不確かで曖昧なことを考える
  • リスクシミュレーション:リスクを感じ取り、影響をシミュレーションして回避
  • 最後に逃げ出す覚悟:心や体を壊しそうな時は逃げる

今後のToDo

  1. ポジティブに答えを創るマインドで、End Productを想定する
  2. 80点でも必ずやり遂げる(Complete work)
  3. 判断力1000回トライアル(特定トピックの意見と理由)をアナロジーで考える
  4. プロジェクトの序盤、中盤、終盤の順に作業プロセス・レビューサイクルを作る