読んだ目的
- 「地頭力を鍛える」でフェルミ推定が仮説思考力・フレームワーク思考力・抽象化思考力を鍛えるための良い練習になることは分かったが、十分に練習していなかったため
- ビジネスケースのシミュレーションを依頼いただくことが多いが、データサイエンスの知見だけではなく、フェルミ推定的な考え方を身に着ける必要があるため
得られた学び
本書にはフェルミ推定の技術とビジネスへの応用方法が書かれている。実際のビジネスでは単純な効果検証だけでなく、新規事業を進めるための市場規模推定をすることが増えてきているので、そこで活用できるフェルミ推定のコツ・技術をメモしていく。
フェルミ推定
フェルミ推定とは、未知の数字を、常識・知識を基に、ロジックで、計算することである。フェルミ推定とは 現実の投影であり、ビジネスモデルの反映である。値ではなく、その裏にある考え方・働き方で勝負するものである。フェルミ推定を因数分解すると次の3つに分けられる。
次からはそれぞれフェルミ推定するときのポイントと鍛え方を整理した。
因数分解:構造・因数・ドライバー・KPI
因数分解の良し悪しの判断は次の3つの観点で判断できる。
- ビジネスモデルとの整合性(現実の投影)
- その後の議論との整合性(解くべき論点を入れる)
- 値の作りやすさ
因数分解する上で気をつけるべき点を整理する。
- 因数分解してピンと来る数字は分解しない
- 気持ち悪いドリブン:気持ち悪い(数字の置き方・考え方自体が現実や事実をうまく表せておらず、違和感を覚える)数字は因数分解して、現実を投影させる
- 3段ロケット因数分解:一発で細かく分解するのではなく、細かく因数分解する
- 重要性の原則:無視してもいいぐらい小さい場合は考えなくて良い
- タテの因数分解(新規ユーザー+既存ユーザー)とヨコの因数分解(ターゲット顧客数 x 認知率 x ...)があり、注力すべきはヨコの因数分解である
- 因数分解を考えるときは、ビジネスモデルを意識する
- 基本的に供給サイドからの推定が良いが、家に在庫のある商品・サービスの場合は需要サイドから推定した方がいい
- 割合より絶対数の方が扱いやすい
- 因数分解を2つ以上挙げて選択する
- 論点となる部分を因数分解する
- リアリティチェックをしている
- 因数分解でストック系の値はフローへ変換する(冷蔵庫の耐用年数、会員数の利用頻度)
- バスケットボールなど扱うテーマの特性(チームスポーツ)まで捉えて因数分解
- 1桁の割合(%)を扱い出した瞬間危険信号
- 福山雅治のギャラを推定する時、類似例で考える(子供のお小遣い)
【覚えておくべき因数分解のパターン】
- 商圏方式:商圏ビジネスを行うコンビニなどの店舗/サービスの売上推定
- 駅方式:人が集まる場所に店舗を作る英会話スクール/ジム等の市場規模推定
- キャパシティ方式:席や部屋などのキャパシティを起点に事業を行うカフェやマッサージ、ホテルなどの売上推定
- 面積方式:タイミングキャッチビジネスの市場規模推定や、手掛かりがない時
- レジ方式:混んでいる店舗の売上推定
- ストックとフロー方式:「保有者を耐用年数で割り、1年間の売上に割戻す」と「延べ会員数を頻度で割り、会員数に割戻す」
- バスケットボール人口方式:バスケットボール人口は?の解き方
【因数分解の鍛え方】
値:中身・数字・桁・単位
中身の値を決める時は、次の4点を意識する。
- 最終的には全て勘だが、自分が置いた数字に対して「勘かな?」と自問してYes!ならピンと来るように根拠を考え、No!なら一旦終わりで、議論する。
- フェルミ推定は幅を持たせて推定する
- リアリティチェックでは違う因数分解で算出することで、信憑性を高める
【田の字(セグメンテーション)】
気持ち悪い数字(セグメント分けせず同じと扱うことに違和感のある数字)はセグメント(田の字)に分けて推定する。セグメンテーションする場合、例えば、世代で分けるセグメンテーションは世代別の各数字の意味が取れないので意味がない(30代の15%と40代の20%の差分である5ptの意味が説明できない)。議論になる因数を田の字(2by2)でセグメンテーションする。例えば、ジムの平均回転数を最初に4種類の数字を入れ、分類できる縦軸・横軸を決める。田の字は次の順番で作成する。
- どの因数にするかを決める:議論になるもの、平均だと気持ち悪いもの
- 4象限の数字を決める:入会率を4パターン決める
- 量ではなく質のセグメンテーションになっているかチェック:各セグメントに属する人に偏りがあるかチェック。偏りがなければ再度軸を検討する
- 4象限同士の辻褄が合っているかをチェック:相対的にしっくりくるか
- 最後にリアリティチェック:各セグメントの構成割合を基に加重平均した数字が大きい/小さいをチェック
【値の作り方の鍛え方】
- 算出された値の美しさだけではなく、算出の仕方=プロセスが美しいかチェック
- 1題をいろんな角度から試行錯誤する
- 算出した値・検索した統計的なデータと比べて近いからOK!をやめる
話し方・考え方・働き方:伝える・議論する
フェルミ推定の結果を伝えるときに注意すべきポイントは次の通りである。
- 結論から話すべきで、値を具体的に提示することで相手に論点を持ってもらう。論点とは気になる疑問点/気持ち悪い点のこと
- 話す順番は①算出した値(聞かれたことの答え、回答)、②因数分解(構造)、③因数ごとの値の順に話す
- "約"・"おおよそ"・"計算しました"は使わない
- 数字を丸めないと精緻な数字が出たと誤解されるため、結果は丸める(4765億円→5000億円)
【説明する時のフレーズ】
- 具体的にどうやって計算したか?と言いますと:構造を説明する前
- それぞれの数字がどれくらいか?と言いますと:値の説明前
- 単純計算するとどうなるか?と言いますと:計算した結果を説明する前
- 素直に~で計算すると:通常/皆さんならどう解くかを意識して計算したことを示す
- それ以外のやり方は~がありますが、比較の上、こちらを選択しました:信頼性を高める
- 最後に説明を付け加えると、~はもう少し時間をかけて分解して考えてみたい数字ではあります:今後の議論の方向性を示す
【話し方の鍛え方】