読んだ目的
- 経営戦略に基づいてクライアントの今後の戦略を検討したり、戦略思考に基づく今後の提案をするときに、分析的なスキルだけでなく戦略思考を身に着ける必要があると感じたため
- 解像度の高い戦略を考える考え方を学ぶため
得られた学び
本書には戦略思考が書かれている。の中でも特に今後に活用したいことをメモしていく。次からはステップ化・構造化して書いてあるが、ステップに関わらず複数の戦略スウィッチを使うことが望ましい。
ステップ1:「調べる」vs「解く」
【戦略スウィッチ07:調査の掟。わかった後の構造分岐に愛を】
フレーズ:仏スーパーっぽく考えてみると
「わかった」後の行動を考える。特に○○ vs ○○の形で行動の分岐を軸とする思考パスを持つ。調べる時に、いきなりGoogle検索を始める・MECEを気にするのではなく、「解った後の行動」でどちらに進むべきかの分岐を判断するために何を知りたいか?を考える必要がある。
仏スーパーの場合、意思決定をする社長が悩む分岐が何かを洗い出し、その分岐を見定めるために必要なことを洗い出していけば良い。仏スーパーでは次の5つが挙げられた。
- ネットスーパー事業に参入すべき vs すべきでない
- リアル店舗↔︎ネットスーパーの関係は主従関係 vs 独立関係
- スーパー/ネットスーパーの市場環境・事業環境が日本と同様 vs フランス独自
- 王者・シェア1位 vs 2番手・シェア2位以下
- フランスのみ vs 欧州全体
- 株主からの期待値は短期的(=2年) vs 中長期的(=3~5年)
ステップ2:「フェルミ推定から始まる」戦略思考 vs 戦略思考
【戦略スウィッチ10:フェルミ推定から始める「75点」思考】
フレーズ:フェルミ推定っぽく考えてみると
因数分解から考える。特に因数分解で自然とMECEを担保する思考パス。業界第2位のパーソナルジムチェーンの売上を上げる場合、次のように因数分解する。
- 売上 = チェーン店の数 x 1店舗の売上
- 1店舗の売上 = トレーナーの数 x 1日のレッスンコマ数 x 埋まり率 x 1回のレッスン単価 x 営業日数
- 1日のレッスンコマ数と営業日数は改善できないため、スコープから外す
ステップ3:「戦略思考」の始まりは「リアリティ・スウィッチ x フチドリ思考」
【戦略スウィッチ01:リアリティ・スウィッチ イズ キング】
フレーズ:大学1年生の英語留学っぽく考えてみると
リアルに考えること。特に自分勝手に状況などを置く思考パス
- 「大学1年生」のまま考えず、具体的に背景や状況を置いて考える
- 例:早稲田1年生でテニスサークルに入り、夏はサークル合宿で友達作りたい
- バイトでお金を貯める期間が必要なので、大学1年生の冬・春休みに行く
【戦略スウィッチ09:論点思考と、フチドリ思考】
フレーズ:定員割れ大学問題っぽく考えてみると
「何が問われているか?」を考える。特に、「○○ではなく、□□」にて論点を噛み締める思考パスを持つ。
ほどほどの知名度のある都内の大学が定員割れの大学が中長期でどうすれば経営状態がよくなるか?をどうゆう流れで解けばよいか考え始める前に何が問われているか?を考える。フチドリ思考では次のように問いを整理する。
- 人気大学ではなく定員割れの大学
- 短期ではなく中長期
- 売上を伸ばすではなく、経営状態をよくする
フチドリ思考で嚙みしめた問いをもとに、具体的に論点を絞り込むと次のようになる。
- 定員割れの大学が中長期でどうすれば経営状態がよくなると思うか?
- 定員割れの大学の学生はどうしたらいいか?
- 定員割れの大学の受験者数を増やすためにはどうしたらいいか?
- 定員割れの大学が「滑り止め」に推奨されるためには?
ステップ4:問題を解く上での「登場人物」を把握する
【戦略スウィッチ05:利害関係者よ、全員集合】
フレーズ:スギ花粉っぽく考えてみると
利害関係者を考える。ありとあらゆる登場人物の「利害」を詳らかにする思考パスを持つ。どうすれば薬が普及するか?を考えるとき、効果のあるスギ花粉抑制薬を販売することに関わる利害関係者を上げ、それぞれプラスマイナスを明らかにし、仮に足を引っ張るプレイヤーがいたら、重点的に解決する。本書では利害関係者は次の人が挙げられていた。利害関係者を挙げるではなく、スギ花粉と覚えることで、考えがサチった時に壁を越えられるようになる。
- 開発した製薬会社
- 花粉症に効く薬を開発した製薬会社
- マスクなどを販売する製薬会社
- 花粉症治療を行っている地元病院
- 病院全体を仕切っている医師会
- 診療報酬を決めている厚生労働省
- 長野県などのスギ林があるエリアの地方自治体
- 花粉症じゃない、地方自治体に住む人
- 花粉症患者
- スギ林を保有している林業
- ヘリコプター会社(散布を受託する会社)
【戦略スウィッチ04:生態系の変化に注目】
フレーズ:コインランドリー参入問題っぽく考えてみると
「生態系がどう変わるのか?」を考える。つまり、既存事業・「今」へのポジティブ・ネガティブな影響を詳らかにする思考パスを持つ。書籍内のわかりやすい例えに、「ブラックバスが湖に放流されることで、今までの美しい生態系が崩れ、全く違った生物が暗躍する湖になってしまった」があった。これをビジネス適用して、セブンイレブンがコインランドリーに参入した場合、次のような内容を考える。
- コンビニの今の生態系を考える(現状)
- コインランドリー導入によりどう変化するか(参入による生態系の変化)
- 解決できないネガティブな側面を抽出した課題(ネガティブな影響)
ステップ5:あらゆる手段で調べたが、まだ分からない現実が存在する時
【戦略スウィッチ11:「条件分岐」を思考の先頭に持ってくる美学】
フレーズ:すごい素材っぽく考えてみると
「条件分岐」を考える。特に、戦略の方向性が変わる条件を見極めるパスを持つ。衣料品メーカーのすごい素材で作ったストッキングの価格の場合、どういう流れで解けば良いか?というと、戦略の分岐を見定める。衣料品メーカーのストッキングの位置付けによって戦略は大きく異なる。
- 衣料品メーカーがストッキングを製造・販売しているかどうか?
- 既存のストッキング事業が会社の主力か?
ステップ6:課題を発見するときの1つの指針、深く考える切り口
【戦略スウィッチ02:敵は誰か?消費者の意思決定の分岐】
フレーズ:カインズっぽく考えてみると
誰が敵なのか?を考える。特に、消費者/ユーザーがお金を使うまでの分岐(=VS)を詳らかにする思考パスを持つ。カインズの売上を1.5倍にするという課題の場合、次のような分岐がある。分岐別に負ける理由を考え、その打ち手を検討する。
- ホームセンター vs ネット+α
- カインズ vs 他のホームセンター
- 多く買う vs 来店目的のものだけ買う
【戦略スウィッチ03:ホーム・アウェイを地理的、視覚的に】
フレーズ:車の教習所っぽく考えてみると
どこがホームで、アウェイか?を考える。特に地理的/視覚的に「勝ちゲーム」か「負けゲーム」か?を詳らかにしていく思考パスを持つ。このエリアは勝てる・勝たなければならないエリアと、負けてもいいエリアを選択する。
都内の自動車教習所の売上を2倍にする打ち手は、自動車教習所の住まいや行動圏の近さで分類する。このエリア毎に「負けている/より勝ち得る」原因・ポイントを探り、打ち手を考えていけば良い。
- 対象の自動車教習所が最も近いホーム戦
- 他の自動車教習所が近いアウェイ戦
- 勝負所の他の教習所からの距離が同じぐらいのエリア
- 別の戦いの場である地方免許合宿
【戦略スウィッチ08:ターゲットとの距離にご用心】
フレーズ:QBハウスっぽく考えてみると
ターゲットとの「距離」を考える。どの層のターゲットになりやすいか?の序列をつける思考パスを持つ。距離とは、これから提供しようとしているサービスや商品と、ターゲットとの相性であり、距離を意識して戦略を練る必要がある。
QBハウスが利益を増やしたい場合、QBハウスとターゲット層との距離である誰が使ってくれなさそうかを考える。それぞれについて丁寧に「なぜ使ってくれないか?」を考え、それを踏まえて「どうそれを解消するか?」を考えていけばよい。QBハウスの場合は次の通りの順である。
- 美容院に行く女性、特に若者
- 美容院に行く男性、特に若者
- 美容院に行っておられるシニア女性
- 子ども!子ども!子ども!
- 巷の散髪屋さんに行っているおじさん
クイックヒットからのホームランであり、5のおじさんは現在のターゲットと同じで着実にインパクトをとれるが、女性は大技が必要になる。
ステップ7:「課題」が揃った時、一度引いて考える
【戦略スウィッチ06:競合は敵に非ず】
フレーズ:打倒セブンっぽく考えてみると
「本当の競合は誰か?」を考える。特に、目の前の敵が競合かを疑う思考パスを持つ。
業界第2位のファミマがセブンを倒すためには、次のように本当の競合を考える。
- 論点はセブンよりいいコンビニになるのではない。立地的にセブンとファミマどちらに行こうかな?と悩むケースは限定的
- 本当の競合は地域の商店街で、いかに商店街に落とされているお金を奪うのか、どう惣菜屋さんに勝つか、スーパーに勝つかを考える
ステップ8:課題が整い、打ち手を考える
【戦略スウィッチ12:「そのまんま」思考、易きに流れない】
フレーズ:年間パスポートっぽく考えてみると
「最も難しく」考える。特に、飛び道具に頼るなどもっての外で「そのまんま」を前提とする思考パスを持つ。年間パスポートであれば、安い年間パスポートを作るや、CMをうつのではなく、年間パスポートはそのままで、売れる方法を考える。年間パスポートの場合は、顧客のパターン別にターゲットを決めている。
- 価格的にお得な年13回以上来場する顧客→定期的に来れるようイベントスケジュールを渡す
- 年8回ぐらい来場する顧客→ここの課題を特定し、打ち手につなげる
- 舞浜近郊に住んでいる人→どうやったら買ってくれるかを練る
今後のToDo
- 新しく始まるプロジェクトで戦略思考を用いて改善方法を考える
- 常にリアリティスウィッチをオンにして考える