データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】地頭力を鍛える

読んだ目的

  1. 問題解決能力を高めるために必要なスキルを向上させるため
  2. 面接時に軽く読んだフェルミ推定だが、データサイエンティストとして難しい推定を多く依頼される中で、改めてフェルミ推定を通じて考える力を向上させる必要があると実感したため

得られた学び

本書は地頭力という考える力がどう構成されていて、フェルミ推定を用いてどのようの鍛えるかが記載されている。地頭力とは、「考える力」の基礎となるものであり、3つの思考力とベースとなる3つの力から構成されている。

フェルミ推定で鍛えられる地頭力の関係

3つの基本思考力

3つの思考力は仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力がある。それぞれ概要とフェルミ推定でどのように鍛えるかをまとめる。思考回路は「結論から」「全体から」「単純に」考えることを3つの思考力に分解している。

仮説思考力:結論から考える力

仮説思考とは、①今ある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、②常にそれを最終目的地として強く意識して、③情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ最終結論に至る思考パターンのことである。最終目的地から逆算して考えると捉えると応用範囲は広く、「ベクトルを逆転させる」という発想全般に適用可能である。次のような例が考えられる。

  • はじめからでなく終わりから:最終報告で誰にどんなメッセージを伝えるかから
  • できることからでなくやるべきことから
  • 自分からではなく相手から:自分が何を伝えたかではなく、相手に何を伝えたか
  • 報告で何を話したい議題からではなく、報告は相手にどうゆう意味・目的があり、どうして欲しいのかから話す
  • 手段からでなく目的から

仮説思考のポイントは①どんな少ない情報からでも仮説を構築する姿勢、②前提条件を設定して先に進む力、③時間を決めてとにかく結論を出す力の3点でこれらはフェルミ推定をする時に培われる。

仮説思考を意識するための口癖として、「嘘でもいいから」や「落とし所」を言えるようになると、その時点の仮説を考えることができる。

仮説思考の留意点として、①はじめの仮説にこだわらず最新情報に基づいて仮説を進化させる、②深掘りが甘くなることに注意する。

フレームワーク思考力:全体から考える力

フレームワーク思考の目的は、「思考の癖を取り払って」①コミュニケーションを効率的に進めるとともに、②ゼロベースで斬新な発想を生み出すことである。人は経験や知識に裏付けられた独自のものの見方を持っており、フレームワークで考えるには誰もが共通に考えられる絶対座標を意識する必要がある。例えば、ホワイトボードを使って議論している人の共通認識を作るようにする。

フレームワーク思考力は、全体俯瞰力と分解力に分けられる。全体プロセスを分解すると、次の4ステップで考える。

  1. 全体俯瞰力:全体俯瞰
  2. 分解力:切り口の選択
  3. 分解力:分類(足し算の分解)
  4. 分解力:因数分解(掛け算の分解)

フレームワーク思考のリスクは先に枠を固定してしまうため、思考そのものを固定化してしまう懸念がある。

抽象化思考力:単純に考える力

抽象化思考力の基本プロセスは、次の3つである。

  1. 具体的事象の抽象化
  2. 抽象化した課題の本質に対する解法の適用(本質的解決策)
  3. 本質的解決策を再具体化して、具体的解決策化

抽象化思考力に必要なポイントは①モデル化、②そのための枝葉の切り捨て、③アナロジーの考え方の3点である。①のモデル化は、フレームワーク思考でも使う図解して考えることで、モデル化能力が向上する。②の枝葉の切り捨ては、抽象化に必須の考え方で、事象の本質に関係のない部分をバッサリ切り捨て物事を考える習性が必要である。③のアナロジーは、自分は特殊だという思い込みを排除して、一般化・共通点を探す。

留意事項は①具体化とのバランスを常に意識すること、②過度に一般化しないことである。

ベースとなる3つの力

問題解決に対する知的好奇心、地頭力のベースとなる論理的思考力と直感力がある。

論理的思考力

論理的思考力とは、「事象間を筋道立てて考える力」である。「論理」は誰が見ても一貫して繋がっていることを担保する守りの位置付けである。論理的思考力を鍛えるためには、自分自身の思い込みを捨て、客観的に話が一貫するよう整合させなければならず、フェルミ推定はこの練習に有効である。

直感力

直感力とは「ひらめき」を伴う右脳的思考である。「直感」は個人特有のアイデアを生み出す攻めの位置付けである。直感力は属人的でアートに近く、経験や知識に裏付けられている。フェルミ推定で単純なモデルでの訓練を繰り返すと、仮説設定やフレームワークの断面の選択の精度を上げることができる。

知的好奇心

知的好奇心は地頭力の最も根源的な原動力となるものであり、問題解決型(Why型)と知識型(What型)の2種類があり、地頭力にとって前者は有意義だが、後者は有害にすらなりえる。好奇心を養うには、何でも疑ってみて、より良い解決策を考えてみる習慣をつけることが重要である。

今後のToDo

  1. 別のフェルミ推定の本も読んで、まずは模範解答のある書籍でフェルミ推定を学んで、練習する