データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】顧客起点の経営

読んだ目的

  1. CRM関連の分析をやる中で、CRM戦略としてどう経営指標を改善しているかをクリアにするため
  2. 市場の中で担当プロダクトがどのような市場を対象にどのように新規獲得やロイヤル化の促進を進めているかを考えられていないため
  3. 既存顧客のセグメント分析は行っているが、他の分析方法を参照したかったため

得られた学び

顧客起点経営の中の全体像の中でも、私自身が業務で頻繁に行なっている顧客のセグメント別の分析が最もらしい形で行われているかを本書を通じて確認する。

顧客戦略(WHO&WHAT)の立案:顧客の多様性を捉える

まずは自社プロダクトが対象とするマーケット全体の顧客分類で、マーケットを定義し、顧客を適切にセグメントして、その多様性を把握する。TAMとはTotal Addressable Marketの略で、100%の顧客を獲得した場合の顧客の総数をTAM顧客数と呼ぶ。このマーケット単位で

顧客戦略とは、誰に何を提供すれば価値が生じるのかを便益と独自性から。独自性と便益に対して自分ごととして価値を見出す顧客との組み合わせ自体が戦略である。価値を生み出すWHOとWHATの組み合わせが顧客戦略であり投資戦略であり、各顧客戦略の①潜在的規模、②LTVと実現速度、③実現可能性(HOWの存在と実行可能性)から投資の優先順位を決める。WHYは顧客戦略が世の中にとって意義のある価値を生み出しうるのかを問う意味で重要である。また1つのプロダクトでも複数の顧客戦略を実行することはある。

カスタマーセグメント:顧客の変化を捉える

あらゆるプロダクトにおいて、TAM顧客数は5つのセグメントに分類することができる。TAM顧客数が定義されていてば、各セグメントの推計人数も調査から算出することができる。顧客の動きを追うための手法がカスタマーセグメントで、N1分析等は書くセグメント単位で行う。

5segs

各セグメントを次のセグメントに成長させるための取り組みをこちらに記載している。

  1. 成長:潜在的なロイヤル化顧客
    • ここで成立している顧客戦略が分かれば、自社プロダクトの今後育成するための手段手法の開発と拡大展開につなげることができる
  2. 復帰:潜在的な復帰顧客
    • 何らかの理由・何となく離反していたがニーズが完全に消滅した訳ではない顧客層に対する顧客戦略を洞察し、実現を促す手段手法を開発し、復帰促進する。
  3. 成長:潜在的な新規顧客
    • プロダクト便益や独自性の理解や認知が弱い状態のため、プロダクトへの心理状態が大きく異なるため、顧客戦略も異なる。
  4. 失敗:潜在的な離反顧客
    • 離反率が高いとプロダクトの収益と成長に大きな影響を与える。

5segsカスタマーセグメント

9セグズカスタマーセグメント:NPIを加えたカスタマーセグメント

上記のカスタマーセグメントに加えて、NPI(Next Purchase Indicator, 次回購買意向)で上位4セグメントを分割したものは9セグズカスタマーセグメントである。

NPIはブランディング指標としても利用できる。NPIが低いユーザーは選択肢がそれしかない、安いからといった消極的な理由で購入している人が多く、より良い選択肢があれば切り替える可能性の高いため不安定なユーザーである。成長ポテンシャルの先行指標にもなる。

9segs

これらの9segsをどのように顧客が動くかを可視化しているのが9segsカスタマーダイナミクスである。9segsの12ルートは下記の3つのルートに分類される。

1. Gルート:3つの成長ルート(G1→G2→G3)

プロダクト自体の便益と独自性が圧倒的に高いため、認知形成や販売促進のための投資がかからない。最も理想的な状態だが、実際には競合や代替は存在している。

2. Fルート:5つの失敗ルート

失敗ルートにはプロダクトの便益と独自性が、①提供すべき顧客層に届いていない、②顧客層に届いているが理解されていない、③顧客ニーズに合っていないの3つがある。

3. Rルート:4つの復帰ルート

セグメント2,4,6,8の顧客がそのまま留まる理由の多くは、①便益や独自性を理解していない、②誤解している、③顧客自身のニーズとは無関係・不要と思っているの3つある。これらのユーザーに対しては独自性や便益の内容自体、伝え方や営業活動を含む訴求自体の見直しが必要となる。

9segsカスタマーダイナミクス

今後のToDo

  1. 今業務で分析しているセグメントに本書のプロセスを当てはめてみて、セグメント移動に抜け漏れがないか確認する
  2. NPIの調査をする前にデータから分析できないか確認する