データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がデータ解析技術をコンサルティングに活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】ロジカル・プレゼンテーション

 

読んだ目的

  1. 論理的なプレゼンテーションを実施し、お客さんを説得できるようになるため
  2. お客さんの反応をもとに柔軟にプレゼンテーションの方向性を修正できるようにするため
  3. 会議設計力が何か分からなかったため、どんな内容か知るため
  4. 資料作成力を向上させるため

得られた学び

本書ではロジカル・プレゼンテーションをするために必要なスキルである「論理思考力」、「仮説検証力」、「会議設計力」、「資料作成力」を実際のコンサルティングケースを通じて説明している。

適切に「考える」ための2つのスキルと5つのステップ

  • 論理的思考力:2つの基本スキル「縦の論理」と「横の論理」
  • 仮説検証力:疑問に答えるステップ「目的」「論点」「仮説」「検証」「示唆」

適切に「伝える」ための2つのスキルと5つのステップ

  • 会議設計力:議論をまとめるスキル「議論の着地点」と「議論の着地スタイル」
  • 資料作成力:紙に落とすステップ「メッセージ」「チャート」「スライド」「パッケージ」「マテリアル」

論理的思考力:話をつなぐスキル

論理的であるとは、「話がちゃんとつながっていること」である。納得しない場合の反応は2つしかない。それは「本当にそうなの?」と「それだけなの?」の2つである。本当にそうなの?は因果関係が弱い、つまり縦の論理が弱いこと、それだけなの?は全体の捉え方がおかしかったり、漏れやダブりがあるということである。

縦の論理

縦の論理がつながらない理由は、次の三つがある。

  1. 前提条件のちがい:自分の前提条件を疑う。前提条件を洗い出すには違う経験・価値観を持つ人と話すことが良い。
  2. 異質なものの同質化:小売業界でもアパレルからドラッグストアまであり、全てを同質化している可能性がある。頭の中でもっと細かく分けて議論する必要はないかを問いかける必要がある。
  3. 偶然の必然化:因果関係が大きく飛躍している。偶然か必然かを考えるには、自分の置いた前提から結論に至るまでに、どのように防げるかを考える。状況を想像し、時間の流れに沿ってその経過がどうなるかを、極力否定的に考える。
横の論理

横の論理がつながった状態とは、「誰から見ても全体がカバーされていて、漏れもダブりもない」状態で、MECEと呼ばれている。MECE状態が上手く作り出せない理由は、「言葉のレベル感の違い」に起因する。ビジネスでは言葉が「ねじれの状態」にあることが多く、「そもそも違う話をしている」という状態が多い。

レベル感を揃えるには1. 言葉のレベル感を同じ平面上に移すこと、2.同じ平面に移ったときに漏れやダブりがないか検証する、2つのプロセスを分けて行うことである。

1. 言葉のレベル感を揃える

言葉のレベル感を合わせる2つの方法

  1. 視点を揃える:営業部長と事業責任者では視点が異なり、議論の目的に合わせて視点を変える。目的が事業立ち上げの場合は事業責任者の視点で考える必要がある。視点を揃える上で大事なのは、「誰の言葉か?」を考えることである。
  2. 切り口を揃える:「どうゆう場面を想定したか」を揃える。事業立ち上げを優先する場合と、立ち上げ後の需要の大きさを優先する場合では切り口が異なる。切り口を揃えるには、「それはどういう場面の言葉か?」を考える。

2. MECEにする

MECEにする方法は次の三つがある。

  1. フレームワークを使う:5P、3C等のフレームワークを使うと簡単にMECEが作れるが、どんな時も適用できるわけではないので、「その視点、その場面」に適合した全体を把握し、状況に合ったフレームワークを用いることが必要となる。
  2. 漏れをなくす:自分で新しいフレームワークを編み出せる発想力を持つことが重要である。そのためには「六次元で次元で発想すること」が重要である。目に見える三次元の世界+時の流れ+情報や目に見えないものの流れ+人の気持ちや習慣でおよそ全体像を説明できる。
  3. ダブりをなくす:MECEマトリックスを使い、二つの命題に対して縦軸と横軸にYes/Noで答えて、重複しないようにする。

縦と横の論理が完成すれば、ピラミッド・ストラクチャーを描くことができる。

仮説検証力

相手の疑問に答えるには1.相手の疑問を知る、2.疑問に対して答えるの二つのプロセスから成り立っている。仮説検証とは、まず相手の疑問すなわち論点を洗い出し、仮の答えを推測した上で、それに対して答えるための客観的証拠を準備することである。

仮説思考型思考には次の5つのステップがある。次から1ステップづつ要約していく。

  1. 目的の理解
  2. 論点の把握
  3. 仮説の構築
  4. 検証の実施
  5. 示唆の抽出
1. 目的の理解

目的の理解とは「議論のスタンス」と「相手の要望」を理解することである。ビジネス上では何らかの意思判断を求めることが必要である、意思判断を求めるには具体的な話で締め括る。相手の要望を理解するためには「話を聞くこと」が大切で、提案力を高めるためには論理的思考力の強化だけでは不十分で、常日頃からの気配りが必要である。

2. 論点を把握する

論点とは、相手の意思判断に影響を及ぼす判断項目である。論点を外してしまうパターンは四つしかない。

  1. 議論のスタンスが違う場合
  2. 相手の要望が理解できない場合
  3. 具体的な判断項目が出せない場合
  4. 相手が既に答えを持っているところに意見してしまう場合

論点を外さないための対策は次の三つある。

  1. 目的をきちんと理解する(1,2)
  2. 横の論理構築力を磨く(3)
  3. 相手の知識・経験レベルを把握する(4)

論点が上手く噛み合わない時は、原因がどこかを良く考えてから手を打つことが重要となる。

3. 仮説を構築する

仮説とは、論点に対する自分なりのヤマカンの答えである。仮説を理解するには、以下の以下の三点に注意する。

  1. 論点に対する答えが仮説で、論点のないところに仮説はない
  2. 仮説とは、限られた情報に基づく仮の答えで、あてずっぽうではない
  3. 仮説とは、客観的な裏付けに欠けるため、答えとは違う

仮説が必要なのは、選択肢を絞って検討の効率を高めるためである。考える労力を相手に押し付けないためにも、仮説を持って話すことが重要である。仮説を出すためには、何らかの情報が日つゆえ、仮説は無からは生まれない。

作業の中で仮説を出しているのか、出た仮説を検証しているのか、常に考える。仮説を出すためには、論点を頭に入れ、常に答えを意識しながら情報を眺める。縦横の論理が使いこなせれば、仮説が広がり、その精度も高まる。

4. 検証を実施する

検証は、仮説が正しいかどうかをファクトと論理で証明することで、論点なき仮説・仮説なき検証は意味がない。検証は明確な終わりがないうえ、当たり前の答えしか出ないため難しい。しかし、検証ができれば議論が決着し、話が進む。検証とは8割の当たり前を証明し、2割の気づきを生み出すもの。そのため分析で当たり前の結果を検証することは重要なプロセスである。

  1. 検証では強いファクトを入れる必要がある。強いファクトとは定量情報(定性情報より)、一次情報(二次情報より)、第三者情報(当事者情報より)であり、これらの情報を組み合わせる。
5. 示唆を抽出する

示唆とは「論点を絞り込むために役立つ情報」のことで、仮説に対する答えでもなく勝手な主張でもない。完璧な答えはほとんどの場合出せないが、示唆が出せれば進む。示唆を出すためには次の3点に留意する。

  1. 目的と論点をきちんと理解する
  2. 論点の絞り込みに集中する
  3. 検証不能な作業設計をしない

会議設計力

会議が退屈になのは「設計」が上手くできていないからである。会議設計がうまくできない理由は以下の4点である。

  1. そもそも自分が会議をしているという認識がない
  2. 会議の議題は準備されているが、論点が準備されていない
  3. 提案全体と今回の提案の区別がついていない
  4. 相手の論点が語られていない

会議を設計する上では「着地点」と「着地スタイル」が重要である。会議設計は提案書の構成にも大きく影響を及ぼす。

着地点を定める

会議の位置付けとイン/アウトがはっきりしていれば、会議は上手く着地する。会議の位置付けは3つの視点で決まる。

  1. 仮説検証の視点
  2. コミュニケーションの視点
  3. 問題解決の視点

会議の位置付けが不明瞭なまま、五月雨式に議論しても話はまとまらない。位置付けを間違えると後で差し戻される。会議のイン/アウト管理をきちんと意識する。インアウトの管理を行う上での注意事項は次の3つある。

  1. インプットに新しい感はあるか?
  2. インプットに進んでいる感はあるか?
  3. アウトプットに先を急ぎすぎていないか?
着地スタイルを決める

着地スタイルに合わせた味付けをすると理解が深まる。相手のスタイルを考える視点は以下の3つである。

  1. 読む人か聞く人か
  2. 全体感派か芋蔓派か(並列関係の横の論理派か、直列関係の縦の論理派か)
  3. トップダウン派かボトムアップ派か(結論ファーストか背景事情説明ファースト)

資料作成力

一目で理解でき、誰にも誤解されない資料作りを心がける。相手に考えさせたら負けで、見た瞬間にスッと理解できる資料を作成する。言いたいことを紙にまとめるステップは5つある。

  1. メッセージを書く
  2. チャート化する
  3. スライドとしてまとめる
  4. パッケージとしてストーリーを持たせる
  5. マテリアルとして会議にあった資料群にする

資料作成はモジュール化(部品を組み合わせ)して資料を作るよう心がける。簡潔な資料を作るには、①不要な情報、②不要な文字、③不要な属性情報の3つを捨てる勇気を持つことが必要である。

メッセージを書く

メッセージはスライド上部に3行程度で書かれた最も言いたいことで、①説明

、②ファクト、③示唆の3つがある。意味のあるメッセージには次の4つがある。

  1. 合目的性:目的や論点に適っているか?
  2. 斬新性:相手にとって新しい発見があるか?
  3. 明確性:具体的な意味がはっきりと分かるか?
  4. 方向性:相手のアクションにつながるか?

メッセージを記述する際には①簡潔に書く、②言葉を統一する、③印象に配慮するの3つのポイントに注意する。特にメッセージを簡潔に書く(クリスタライズする)ための技法は次の4つである。

  1. アンサーファースト化:結論を最初、理由はあと
  2. 不要語句の削除:なくても意味の通じる言葉は削る
  3. 共通項の括りだし:同じ言葉が繰り返される場合はまとめる
  4. 熟語化:平易な日本語でダラダラと書かず熟語で表現する
チャート化する

主張したいメッセージをもとに、ファクトにあうオブジェクト(イラスト、グラフ、テキストの3種類)と論理に合うレイアウト(連関図、フロー図、樹形図、テーブル図の4種類)を組み合わせてチャートにする。チャートは①極力図形にする、②タイトルをつける、③強調すべき場所を明示するの3点に留意する。

スライドに配置する

スライド作成する時は必ずメッセージを入れる。メッセージとチャートをきちんと対応させる。スライドを作成するには、次の3つのテクニックを活用する。①左上から右下にチャートを配置する、②紙面を最大限に活用、③高さや横位置を揃え、整然とチャートを配置する。

パッケージを完成させる

パッケージには必ず示唆を含める。相手の論理や使用局面に合わせて論理構成をする。

  1. トップダウン全体観型:理解度の高い相手に短時間で結論説明
  2. トップダウン芋蔓型:必要な部分だけを短時間で指示
  3. ボトムアップ全体観型:時間をかけて、納得感を醸成
  4. ボトムアップ芋蔓型:理解の疑わしい相手に懇切丁寧に解説

切り口は①作業ベース(作業の進捗を明確にできる)、②項目ベース(検討の全体観が出せる)、③論点ベース(メッセージをはっきり伝えられる)の3つの切り口を使い分ける。

マテリアルとしてまとめる

会議の目的を達成するために必要となるパッケージを全て織り込んだのがマテリアルであり、マテリアルは8つのパッケージで構成する。

  1. サマリー:凝縮した提案内容
  2. 前提:その会議に至る背景・目的
  3. 全体像:論点や検証タスクの全体
  4. 内容:会議の直接の議題に対する説明・ファクト・示唆
  5. 論点ペーパー:特に強調すべき議論ポイント
  6. フォーマット:議論をガイドするための記入用紙
  7. スケジュール:日程表と次回までのアクション項目
  8. 参考データ:ストーリーには乗らないが入れておく必要のあるスライド

今後のToDo

  1. 論理的思考力と仮説検証力は仮説思考と論点思考と基本的には同じなので、日々の分析プロセスを明確に検証プロセスに落とし込んで考える
  2. 会議設計の位置付けと着地スタイルを意識する
  3. 資料作成はモジュールモジュール化して注意事項を確認しながら分析設計する