読んだ目的
- ドキュメント・コミュニケーションを読み、姉妹本である「問題解決の全体観」を読んだ方が理解が深まるため
- 空・雨・傘ストーリーを作るスキルを身に着けるため
得られた学び
本書には問題解決に向けたプロセスと解決過程で使うツールに関する方法論が書かれている。本書はハード思考編で、ソフト思考編もあるが、別ブログにてまとめる。革命的に分かりやすい本であり、本書の内容を習得したら実力が大きく向上すると思われる。次から今後に活用すべきことをメモしていく。
問題解決ルーティン
問題解決には型があり、それは①【空・雨・傘】と②【解読・創案・評価・選択】の2種類を使うと便利である。
初級編:【空・雨・傘】
仕事上のコミュニケーションは全て問題解決に関するコミュニケーションである。判断をスピーディーにするためには、空・雨・傘の順序で、状況把握、自分の解釈・判断、取るべき行動が整理されている必要がある。整理されていればYes/Noですぐに判断できる。空・雨・傘はそれぞれ次の意味する。
- 空:Fact(事実)に基づく状況把握(西の空は暗く、雲行きが怪しい)
- 雨:その状況に対する自分なりの解釈(ひと雨来そうだ)
- 傘:その解釈から導き出される行動(傘を持って出かけよう)
仕事では不完全な【空・雨・傘】が氾濫している。主に次のようなケースがある。
- 【空】のみ:状況報告だけで思考と行動がない(分析の結果、成長率は15%)
- 【空・雨】止まり:状況把握と解釈までで、行動がない(競合よりコストパフォーマンスが悪いから売れてないです)
- 【空・傘】短絡:状況を見て意味合いを考えず、直ちに行動に走る(営業強化と言われて、ひたすら訪問件数を増やす)
- 突然の【傘】:あるテーマのとき傘だけ持てくる(思いつきの新規事業)
不完全な空・雨・傘を防ぐために次のことを習慣化する。
- 空を見たら雨を思え、雨を思ったら傘につなげよ
- 傘の前には空を見よ、雨を思え
同様に不完全な報告やコメントに対しては次のコメントを言うようにする
- 【空】のみや【空・雨】止まりには、So what?と突っ込み、突き返す
- 【空・傘】短絡や突然の【傘】に対してはWhy so?と突っ込み、突き返す
空・雨・傘を創るための基本動作を持つ。空は、Fact gatheringで空を創る。雨は、リスクを恐れず自分の責任で解釈・判断するという気概を持つ。傘は具体性のある行動を作る(効率化する、推進する等の曖昧な言葉は禁止)。
中級編:「それ」と「それ以外」で【空・雨・傘】を広げよう
実際の問題解決では空・雨・傘がそれぞれ何通りにも枝分かれするケースがあり、気づかない枝の先に、ベターな解決案があるケースがある。「それ」と「それ以外?」とは、「それ」があれば論理的に必ず「それ以外」があるという考え方である。空・雨・傘別には次のような例が考えられる。
- 空:見方がマクロ的なら、それ以外のミクロ的視点がある(異なる空)
- 雨:解釈がネガティブなら、それ以外のポジティブ発想がある(一つの空から異なる雨)
- 傘:量的改善を考えたなら、それ以外の質的改善がある(同じ雨から異なる傘)
「それ」と「それ以外?」を考えながら、空・雨・傘のツリー構造で枝分かれをイメージして考えるようにする。
上級編:【解読・創案・評価・選択】で精度を上げる
3ステップ型の【空・雨・傘】では精度の高い答えが得られない難問に遭遇した時は、4ステップ型の解読・創案・評価・選択で考える。詳細は次の通りである。
- 解読:経験、直観、論理的思考などを組み合わせながら、問題の本当の姿を掴む
- 創案:解読した問題に対して解決策オプションを創り出す
- 評価:創出した複数の解決策オプションに対して優劣をつける
- 選択:評価した解決策オプションの中から、最もベターなものを選び出す
空・雨・傘と解読・創案・評価・選択の関係は、傘を考える方法を細分化している。関係性は次の通りである。
【解読に力を入れる】
解読とは、問題の本当の姿を読み解くことで、人の話を鵜呑みにしない、裏を考えることである。データや人の話、起こっている現象等の情報を額面通りに受け取らず、情報の意味合いを独自に読み解き、問題の本当の姿を掴むことである。解読には2つのルールがある。
- 問題が不明瞭の場合、「独自に解読する」
- 問題が明確に見える場合、「それでも独自に解読する」
常識・経験や前例、目に見えやすい部分、多数意見や権威の意見に頼らない。問題を見たまま捉えていいのは、他の解読を検討しても妥当なものが見つからなかった時のみ。
解読を効果的に行うための方法論が3パターンある。
- 視点変更:第3者や経営者目線など立ち位置を変更、アナロジーで考えたりデータ可視化の方法を変える、問題を言い換えてみる(受験はウィンターゲーム)がある
- 要因特定:問題意識を論理的な構成要因に分解し、本当の原因を突き止める
- グルーピング推理:他の問題も組み合わせてグルーピングしながら解読する
【創案では致命的な洩れをなくす】
最も注意すべきことは解決策オプションの洩れをなくすことである。洩れなく広がりのある創案ステップは3つのイメージを常に思い浮かべるようにする。
- 洩れのない【創案】構造:それとそれ以外を使ってロジックツリーで整理
- 何を(What?)とどうやって(How?)の構造:WhatだけでなくHowも検討する
- 「OR型」と「AND型」の構造:1つ選ぶか、複合的に実行するか
【客観性の高い評価を心掛ける】
評価とは創出した解決策オプションの優劣をつけることで、偏りのない客観的な評価を行うための重要な4つのポイントがある
1. 評価項目の偏りをなくす
評価項目の偏りをなくすための2段階の手順は次の通りである。
- 見えやすい項目と見えにくい項目を等距離で見る:売上や利益、効率といった定量評価だけでなく、定性評価も等距離で見る
- 評価項目を論理的に隙なく固める:ロジックツリーで評価項目を整理する
2. 優劣の基準を明確にする
優劣の基準を明確にするには次の2つの方法がある。
- 基準点を定める:現状やあるプランを基準にして+/-で評価
- 目指す方向性を基準にとる:各オプションが方向性と合致しているか否かを評価
3. 選択の客観性・具体性を高める
- 優劣度合いは正負記号で表し、程度差を論理的・具体的に説明できるようにする
4. 客観性の高い総合評価を工夫する
- 計算方法は単純総和法やウェイトづけ総和法等様々あるが、適宜本書を参照する
【選択には主観が入ると心得る】
選択は意思決定であり、主観的要素が入ってくる。自分が問題の解決案を検討し、第三者(顧客や上司・トップ)に選択を迫る際、主観的な要素への気配りが必要になる。主観的要素とはリスクに対する感度、財産量、価値観などで、客観的評価を行っても同じ答えを選択することはない。
べき論は相手の意思決定スタイルにほとんど気を回しておらず、相手の意思決定スタイルを理解して、あらかじめ備えておく方が解決案は受け入れやすい。説得時は事実や論理を示してハードに迫るばかりではなく、相手の立場や気持ちに共感することも必要である。
共通編:危ない「落とし穴」に近寄るべからず
問題解決と各ステップにおける落とし穴をまとめる。
問題解決全体
- 解読するための情報収集マニア・分析中毒症にならない
- 他人の問題把握や解決案の粗探しして、代替案を考えないプチ評論家にならない
- 短絡やひらめきを過信しない
- 自分の組み立てたロジックを絶対的なものと信じ込む独善詭弁家にならない
解読に潜む落とし穴
- 問題の所在を深く考えない思考停止にならない
- 他人の話を鵜呑みにして問題が分かった気にならない
- 目にみえるいくつかの個別問題や現象に対してそれぞれの解決策を考えて、グルーピング推理を解くという発想をする
創案に潜む落とし穴
- コインの裏返しの解決策にしない(営業が少ないという問題に、営業を増やす)
- 問題の根本要因を全て取り除くことを解決策としない(ネガティブパーフェクト)
- 常識的・月並みな発想ではなく、自分独自の情報・発想・見解・判断を入れる
- How to doのない机上の空論にしない
- 解決策を考える際、ある部分囚われ、違う次元の解決策を見落とさない(それとそれ以外を考える)
- 自分の得意な視点のみで問題を捉える得意技偏向にならない
評価に潜む落とし穴
- 定性より定量といった見得やすい方ばかり目を向けない
- ロジカルに構成されていない思いつきの評価項目で曖昧な評価にしない
- 自分の都合の良い評価項目を選定したり、ウェイト付けを行わない
選択に潜む落とし穴
- べき論で相手に特定に解決策の実行を迫るのではなく、相手の意思決定スタイルやテイストの裏にあるソフトなロジックにまで思慮する
問題解決の道具
論理ツール
【基礎編:洩れのない見方を押さえる】
洩れのない見方をするには①洩れのない見方のバリエーションをできるだけ覚える、②最も鮮やかな洩れのない見方を選ぶ、の2つを意識する。
- MECE:洩れなくダブりなく
- 対極オプション:創案ステップで主に使う解決案のオプション創出に使う。利用者/提供者、自力/他力、全展開/ニッチ展開、地上(営業)/空中(ネット)、など
- ペア・コンセプト:評価ステップで主に使うワンセットの概念。効率/効果、コスト/パフォーマンス、ベネフィット/リスクなど
- ロジカル因数分解:論理的に構成する要因を分解する(数学的に)
- フレームワーク:ビジネスシステムや組織の7Sなど解読・創案で使う
- それとそれ以外:上述の通り
【応用編:論理的なツリーを組み立てる】
論理的なツリーの使いどころは①解読で要因を特定したり、②創案で解決策のオプションを創ったり、③評価で評価軸を固めるケースである。これらのケースで使う3つのツリーは次の通りである。
- 因数分解ツリー:ロジカル因数分解による要因特定ツリー
- ロジックツリー:解読や創案で使う論理的に洩れなくツリー構造にしたもので、それとそれ以外をベースに対極オプションやペアコンセプトで深めると簡単
- ロジカル評価軸:洩れのないツリー構造を持った評価軸
【強化編:特殊な論理ツールを使いこなす】
上記のパターンで対応できない場合に次の5つを使う。
- ロジック問答:Why so?とSo what?を繰り返し問題を掘り下げる
- パラフレイジング:問題を言い換えてみる
- 進化・深化マトリックス:意見や問題意識がバラバラな時に、漠然型→選択型→仮定型→断定型のステップで問題認識を進化させる(詳細は本書参照)
- ロジカルマトリックス:独立関係にある縦・横軸にマッピングして全体像を掴む
- グルーピング推理:情報を統合して背景にある大きな意味合いを解読する
仮説志向で進める
本書の仮説とは「その時点で最も確からしい読み・見方」である。仮説を使う理由は時間内にベターな答えに辿り着くためであり、仮説を立てるタイミングは早ければ早い方がいい。常に正しいとは限らないので、外れた場合は初めに立てた仮説を修正する。
仮説志向アプローチは次のステップで進める4つのステップで進める。
- 解読と創案/評価に関する仮説を創る
- 一連の仮説から仮説マップを創る:ストーリーの全体像を分かりやすくする
- 2つの脳内シミュレーションを行う
- 整合性シミュレーション:論理的に納得性のある仮説ストーリーか検証(仮説の組み合わせは妥当か、他オプションはないか/どうなるか)
- 段取りシミュレーション:仮説の正しさを検証するために必要な情報収集や分析の段取りを考える
- 仮説の検証・修正サイクルを各ステップ同時に回す
仮説志向で回す時のマインドは次のようにセルフコントロールを意識する。
- 大きな絵を描く(新発想、発想の転換)
- 確証バイアス(自らの予測を強める情報を選択する)の誘惑を絶つ
- 大きな消しゴムを持ち、修正することを嫌わない
- 偏らない心、こだわらない心、囚われない心
今後のToDo
- 不完全な空・雨・傘にならないように、So what/Why so?を自問自答する
- 「それ」と「それ以外」で違う次元の解決策を考える
- 解読・創案・評価・選択で精度の高い解答を探すプロセスを回す
- 仮説志向で解読から選択までのプロセスを回せるようにする