読んだ目的
- 提案書を書いたり、分析結果の資料化を担当することになり、ドキュメントの作り方を体系的に学び、効率的に作成できるようになる必要性が高まったため
- 仮説ベースのドキュメント作成プロセスと分析の進め方を学ぶため
得られた学び
本書はストーリーに基づく分析やドキュメンテーションが苦手な自分にとって革命的な書籍だった。バイブルとして持っておきたいが、常に持っていられない・Kindleにもなっていないので、本書の概要をメモしていく。
実戦技法で質とスピードを両立する
技法1:ストーリーの書き方
【技法1-1. 定番パターンの活用】
具体的なストーリー作りを行う時に定番パターンを覚えておく。守破離の守にあたる部分である。定番パターンには建設的な問題解決につながるような「ポジティブ定番」パターンと、建設的ではなく論争を引き起こす「ネガティブ定番」がある。基本的にはポジティブ定番を使う。次の4つはポジティブ定番である。
原因対応型:トラブル対応策や進行中課題の解決策を伝える時
- 空:問題確認(Aという問題が発生した。例:サービス品質が低下)
- 雨:原因解明(この原因はBにある。例:スキルのバラツキが発生)
- 傘:防止・改善対策(よって、これを解決するためにCを行うべき。例:標準プロセスの確立・普及)
大転換要求型:大きな潜在リスクの見逃し・惰性で危機対策が疎かな時
- 空:問題確認(Aという事態が発生している
- 雨:リスク評価 これを続けるとBという深刻な事態が発生する危険性が高い
- 傘:大転換プラン よって、直ちに大改革Cを行うべきである
変化適応型:市場変化や会社の進化・方針変更による事業の進め方を変える時
- 空:変化の確認(Aという変化が起こっている。)
- 雨:インパクト評価(これはB(業務・事業)に大きな影響を与える。)
- 傘:変化適応策(よって、直ちにこれをCに変えるべきである。)
チャンス開拓型:新たな改善や新規事業の提案の時
- 空:現状確認(現状はAという状況である)
- 雨:改善チャンス(しかし、Bという改善機会がある)
- 傘:チャンス実現策(よって、これを実現するためにCを行うべきである)
【技法1-2. 空・雨・傘アイデアリストからストーリーを組み立てる】
ストーリーが頭に浮かばない時は、ストーリーフレームというツールを使ってストーリーを組み立てる。ストーリーフレームとは、空・雨・傘のアイデアからストーリーを組み立てるツールである。
上記のストーリーフレームに沿って5つのStepを踏む。
- どの定番パターンが使えるか想定する
- 分析内容や情報、推察、過去の経験から空アイデアリストをつくる
- 空からの推論で雨アイデアリストをつくる(定番パターンを意識しながら)
- 雨からの推論で傘アイデアリストをつくる(定番パターンを意識しながら)
- 空・雨・傘メッセージを抽出する(要するに、、を考える)
【技法1-3. 空・雨・傘のバリエーションに対処】
ビジネスで取り扱う問題解決では何通りもの空・雨・傘ができるので、自分の提示したストーリーの優位性を示す必要がある。優位性の示し方は硬・軟の両面で対応する。
- 硬:「対抗オプション潰し」のために、空・雨・傘の各プロセスで評価する
- 軟:「懸念ケア」のため、相手の懸念に対して丁寧に答えるページを挿入する
【技法1-4. Becauseストーリーに組み換える】
結論を先に言うBecauseストーリーは新しい顧客にプレゼンする時や、結論ファーストを求めるクライアントの時に変更する。変更方法は次の2つのステップである。
- 空・雨・傘ストーリーを傘→空→雨→HTDの形に並び替える
- 並び替えたものを次のように括り直す
- 空と雨の一部を合わせて「理由づけ」に括り直す
- その後に雨の一部を意味合いとして付ける(期待成果やインパクトを示す)
- 最後にHTDをそのまま付ける
技法2:ピラミッド構造の組み方
【技法2-1. 理由づけと要素分けで組み立てる】
サブメッセージには主メッセージの正しさを説明する理由づけと、内容を詳しく説明するための要素分けの2つがある。各パート毎に異なる疑問があり、空と雨には理由づけ、傘とHTDには理由づけと要素分けを使うのが基本パターンである。
厳密に創ると傘とHTDのページ数が膨大になるため、傘の理由づけを雨パートに移動させたり、HTDは要素分けして構成する。
【技法2-2. 漏れや重複のない見方を使いこなす】
ピラミッド構造を組み立てる場合は、漏れや重複のない見方を使う。漏れのない見方はMECEだけでなく、次のような考え方もある。
- MECE:理由づけ・要素分けに使える
- 対極オプション:問題解決のオプションを創出する(例:全面展開/ニッチ展開)
- ペア・コンセプト:問題解決のオプションの評価軸に使う(例:定量/定性)
- 因数分解:問題解決の状況把握や解決策検討(例:利益=(価格-コスト)*数量)
- フレームワーク:問題解決の状況把握や解決策検討(例:3C,4Pなど)
- それとそれ以外:それ以外を何度もそれ/それ以外で分類すると構造化しやすい
技法3:文章表現の磨き方
解りやすさを徹底したり、インパクトを強めるために改善すべき点は言葉と構造に分けられる。
【技法3-1. 解りやすさを徹底する】
- 言葉:明確に定義され(定義は注釈で)、専門用語を減らして平易にする
- 構造:短文化し、見やすいドキュメントにする。概念的・全体的表現には具体例、具体的・個別表現は概念的・全体的表現をする
【技法3-2. インパクトを強める】
- 言葉:へりくだらず直接表現をとる、印象言葉(解・動・早やスタンドアローン等)を使う、なまくら語(かなり多く、検討や推進)を避ける
- 構造:各パートでシビアな表現を使い具体的アクションを促す(促しモード)や、文章表現の語尾を揃えたり、文章の長さを揃える等、リズムやメリハリを付ける
技法4:図表の描き方
【技法4-1. 図表の定番を活用する】
各パート別に使われる定番図表がある。詳細は本書を確認する。
- 空:メッセージの理由づけを示すために、事実ベースで構成推移、分布、相関、比較、フロー、構造などを示す図表を使う
- 雨:空から導き出された解釈の正当性(理由づけ)を説明するため、原因把握・解釈抽出、オプション創出ツリー、評価表、シミュレーション等を使う
- 傘:要素分けの図表でアクションを詳細に説明す流ため、アクション毎の具体的内容、ポイント、遂行体制、アクションフローを付ける
- HTD:傘と同様、要素分けの図表で実行促進を進める。
【技法4-2. 概念図をうまく創る】
概念図は言葉ではうまく伝わらないことや解釈にバラツキが出やすい抽象的な内容を概念図を使って正しく伝えることができ、納得性が上がる。しかし、メッセージに対する意識不足や見栄えの意識が低いせいでうまく伝えられていない。
うまく創るためには、日常習慣で多くの事例を見ること、自ら創る姿勢を持つ。概念図を創るためには次の5ステップの動作を重ねる。
- 伝えるメッセージをハッキリと把握する
- メッセージにフィットする概念図を考える
- 頭に浮かんだイメージを紙に描く
- PCの描画ツール(例:パワポ)を使って造り込む
- 解りやすさ・美しさを心掛ける(シンプルかつ直感的)
【技法4-3. ロジカル・ビジュアルな図表に仕上げる】
論理的に正しく構成するとともに、視覚的に強く訴求する方法の改善例を示す。
- 文章・データをビジュアル化する
- 生エクセル貼り付けではなく、分かりやすく加工し、メッセージを強調する
- 要点を強調する(テーブルはメッセージにフィットする部分の色付けを行う)
- 図表はシンプル・コンパクトで、メッセージを含めた標準フォーマット内に収める
- 図の色のトーンは控えめにする
- 過剰に詰め込まれたスライドはロジカルに分解して再構成
技法5:演出の加え方
全体調整ではシチュエーションやコミュニケーションの位置付けに合わせてドキュメントの演出を行うと効果が上がる。次からその演出方法の例を示す。
- 意思決定仕様で決定を促す:提案書であれば、何を意思決定する必要があるのかを促すために意思決定リストを作成する。
- 現場仕様で解りやすく伝える:現場に動いてもらうためには、現場のボキャブラリーに合わせる、説明会の時間別に資料を再構築する、カラーサポート仕様で、
- カラーサポート仕様で迷いにくくする:空・雨・傘ストーリーをパート別に色分けすることで、視覚的に分かりやすくする。
- フォーマル仕様で隙なく固める:顧客のキーパーソンやトップへの報告書を提出するときはフォーマル仕様にする
- 入り:表紙、はじめに、要旨、構成
- 締め:意思決定事項、終わりに、Appendix
うまい試合運びで効率・効果を上げる
個人戦の戦い方
【試合運び1-1. 問題解決とドキュメント制作を統合処理する】
問題解決プロセスとドキュメント作成プロセスを統合すると次の5ステップで進める。
- ストーリー作り(仮説設定)
- 構成検討:仮説ストーリーのメッセージに合う図表イメージを作る
- 空情報収集・分析:図表イメージに合わせた情報収集を行う
- 図表ページ造り込み:仮説検証・修正から雨・傘・HTDの検討まで行う
- 全体調整:各種チューニングを行う
ストーリー作りと構成検討は序盤に終わらせ、空情報収集・分析を中盤半ばまでに終わらせる。図表ページ造り込みは中盤から終盤にかけてたっぷり時間をとり、最後に全体調整をする。
【試合運び1-2. 仕事主体でマネジメントを行う】
成果を出すために思考する(仮説を立てる、手順を考える、結果を考察する)は仕事であり、仕事をベースにプランニングする。思考のために準備する、思考したことを実行する(主に手足を使う)は作業であり、ドキュメント制作で先が見えない中手足を動かすと作業に注力するとまとまらずに負け試合になる。
- 仕事の熟成回数を増やす:手順を着実に踏んで熟成する。フィードバックLoopを回して完成度を上げていく。三上(移動中、寝る時、トイレ)で熟成する。
- 仕事優先で進める:仕事は長時間続けられず、できる時とできない時があるので、頭が動いている時は仕事優先、動かない時は手足を動かす作業をこなす
【試合運び1-3. PCオペレーションの効率化】
PCオペレーションは色々効率化手法があるが、本書に書かれていたのは、汎用書式をスライドマスタで使い回したり、クリック回数を減らすためにショートカットやクイックアクセスツールバーを使う。図表は隠し玉を使って、体裁を整える。決まったカラーパターンを使う。
団体戦の戦い方
【試合運び2-2. DCIを体系的にデザインする】
- 共通理念:解・動・早
- 共通の思考様式:空・雨・傘ストーリー
- 共通ルール:標準ソフト・構成・フォーマット
- 共通スキル:ドキュメント制作スキル・解読スキル
ドキュメントを評価するためのチェックフローは4段階7項目ある
- 基本構成の確認
- 形:テキストページ+図表ページの形をとっているか?
- テキストページの確認
- 論:空・雨・傘ストーリーになっているか?論理性・客観性はあるか?
- 解:文章表現はわかりやすいか?
- 価:問題解決として価値はあるか?
- 図表ページの確認
- 適:メッセージにフィットして無駄がないか?
- 美:ビジュアル的に美しくわかりやすいか?
- スタンドアローンの確認
- 通:口頭説明が無くても通じるような表現になっているか?
【試合運び2-3. DCIの定着化をプロデュース】
DCIを活用した新風土づくりは、「どうしましょう?」ミーティングで資料は空ばかりの状況報告で、雨・傘を伴わず、参加者は空情報に基づいてあれこれ議論する。これを「こうしましょう」ミーティング、すなわち空・雨・傘ストーリーの全体が示されており、ストーリーの是非を議論するミーティングを行うようにする。
今後のToDo
- ストーリーの書き方を定番ストーリーに当てはめてストーリーフレームの枠組みの中で5つのStepで考えてみる
- ピラミッド構造化して考える
- ①ストーリー作り(仮説設定)、②構成検討、③空情報収集・分析、④図表ページ造り込み、⑤全体調整の順にドキュメント・コミュニケーションと問題解決プロセスを進める