データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】外資系コンサルのプレゼンテーション術

読んだ目的

  1. 分析結果をストーリーで説明することが課題であり、まだ適切に効果的に分析結果のメッセージを伝えることができないため
  2. 状況に応じてプレゼンの方法を変えたり、効果的なクライアントフェイシングをできるようになり、お客さんの信頼を得られるようにするため

得られた学び

本書には伝えたい内容を効果的に伝えるための技術・プレゼンの技術が書かれている。今後活用したい内容を中心に、プレゼンのWhy、What、Howの順にTipsを整理する。

Why:プレゼンテーションのゴールを確認

【キーパーソン対応】

  • マーケティングのDMU(Decision Marketing Unit: 意思決定単位)分析は、聞き手を分析してその課題意識と動機(Why?)を特定する手法
  • 関係者の課題意識の優先順位を分析するためには、キーパーソンである決定者との課題意識の共有化に時間を割く
  • 決定者の懸念事項を予測した上で提言をまとめる
  • 自分の立場の2つ上の世界観を想定して、課長であれば本部長視点で大局的な見地からの解決案を提案する
  • 聞き手に知見が乏しい可能性がある用語を使用する場合は、プレゼンテーション資料の欄外にその概念を平易に説明する脚注を明記する

【プレゼンでの課題】

  • 良いイシューの条件は、答えの出せる範囲で最もインパクトのある問題
  • クライアントのトップマネジメントの動機を理解することが提案の精度を上げる
  • 発生・復元的問題の場合よりも、探索的問題・創造的問題と上位になるにつれてWhy(理念・使命からの動機)は重要度が増す
  • 発生・復元的問題には原因思考型の課題を設定するため、Why-so?の形でロジックツリー分析で問題の根である課題を特定する。相互依存性があったり、経過時間によって結果が変化するような状況では因果関係分析で課題を特定する
  • 探索的問題・創造的問題には目標指向型の課題を設定する。3CとPESTを統合した6C分析では事業環境全体を俯瞰してビジネスドライバーの大きさを見極め、未来の変化への対応策を案出する場合に有効

【プレゼンの目的】

  • 交渉は共通問題の解決者として、互いの立場ではなく利害に焦点を当てて、客観的な基準をもとにWin-Winの妥協点を探る

What:コミュニケーション戦略のストーリーを考える

【良いストーリーを作るためには】

  • ストーリーの論理展開の要約であるストーリーラインによる因果関係の説明だけでは、ロジックを理解はしても、共感を覚えにくい。そこで、感情訴求で共感を得たい場面で、聞き手の琴線に触れるポイントを語る
  • 「信頼訴求・合理訴求・感情訴求」という3つの要素を聞き手に合わせて組み合わせ、ストーリーの中核となる訴求ポイントを決める。導入部では信頼、本論では合理、結びでは感情の訴求が効果的である。
  • 信頼訴求とは主に提案者に関わる要素で、「この人の話なら聞いてみたい」という聞き手の受け入れ感度を高めにチューニングしていただく

【効果的な伝え方】

  • SCQで「あなたの事を理解している」と伝えること、適切に課題が特定されている事を示すことは信頼を得るための必須条件で、この導入部分を時代順、経過順が重要である「ストーリー」に仕立てて聞き手をつかむべき
  • 結論を導き出した根拠となる事実の調査・分析手法が、精緻かつ網羅性があり、稀少な事実も含まれていることを示し、信頼に値する提案である事を強調する。ファクトベースで厳正な事実確認と分析に基づいている事を実証
  • 課題に対する個人的な思いをストーリー化したパーソナルストーリーを話す
  • 合理的なストーリーラインはピラミッドで考える。ピラミッド構成のデメリットは、ストーリー展開上、新しいアイディアの登場感を欠いてしまい、プレゼンテーションの面白みがなくなる可能性がある。導入部分では色々な仕掛けをしている旨と戦略上の意味合いを述べるにとどめ、具体的な説明を後半部分で述べる
  • 結局言う必要のある悪いニュースは、聞き手の心情を慮る態度を示しつつ、早めに伝えるべき

【論理構成】

  • プレゼンテーションのストーリーライン、つまりピラミッドの論理構成としては「空→雨→傘」ではなく、その課程を逆になぞり「傘→雨→空」と組み直す
  • ボトムアップアプローチ:特定した事実(空)をピラミッドの底でまとめ、So-what?と上方に向け集約して結論をまとめながら「空・雨・傘」の論理を構成する。So-what?の使い方には洞察(=異質な結論に飛ぶことによるもの)と観察(=共通性をくくることによるもの)の2つがある
  • トップダウンアプローチ:「傘を置いていく」という結論と、それを支える「雨は降らない」と「空は青い」と言うサブメッセージが中核の論理になる。雨は降らないのサブメッセージを支える「天気予報は晴れ」のファクトも集める。からしい仮説が見えてきた時に採用する。
  • 決定者の嗜好に合わせ、その各グループの「論理の型」を演繹法帰納法、関係論証法のどれにするかを決める帰納法は単刀直入な表現を好み、行動重視のトップマネジメントを説得するとき、じっくり説得が好きな熟考型の相手には関係論証法を使う。演繹法は聞き手の論理的な理解力がある程度求められるため、あまり使われない。
  • 通常のストーリーラインはピラミッド1つの各ブロックを並べて作成するが、課題が複雑な場合もう1つ並列的なピラミッドを作り、ストーリーラインを作る。
  • 人は合理訴求だけでは動かず、感情訴求で決断を促す。その時、直感的に危機を感じることで自らが変化することを促す手法を採った企業の成功確率が高い

How:プレゼン資料/実演と準備のコツ

【プレゼン資料作成】

  • 資料作成は①論理ピラミッドを最終確認、②コマ割りチャートに展開し流れを決定(9マスか16マス)、③1チャート1メッセージでメッセージを決めるの、④各メッセージを支えるピラミッド構成でビジュアルチャート化する、⑤全体を結合後、流れを確認の5ステップで行う
  • テキストはKISS "Keep It Short & Simple!"アプローチで短く、シンプルに
  • 構成要素はコラムチャートで、6個を超えないようにする

【プレゼン準備】

  • 緊張を緩和するためには、開始時にできるだけ早くうなずき君(決定者、承認者、影響力者などのキーマンの中から同調者)を探す
  • 質疑応答では不動心で場をコントロールし、リフレージング(繰り返し)やサマライジング(ようやく)等、聞き手の意思を確認してから対比する
  • プレゼンの目標が達成できたかどうか聞き手と確認する。やることは2つあり、プレゼンの中で述べた重要事項の要約と提言の確認をすること、②ToDoと次のステップの承認を得ることである。

今後のToDo

  1. SCQの形でプレゼンの入りを整理する
  2. トップダウンアプローチで分析を進めるような仮説を持てるように、業界知識・仮説のもととなるインプットから仮説を1日1つは考える
  3. プレゼン資料の作成プロセスを本書の5ステップに沿って進める