データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】「答えのないゲーム」を楽しむ思考技術

読んだ目的

  1. データサイエンスの知識も重要だが、分析後の示唆出しがクライアントのアクションを決める上で最も重要であり、その方法を習得するため
  2. 示唆に基づいてクライアントと議論・説得し、アクションをとってもらうためのスキルを上げるため

得られた学び

本書には答えのないゲームという名のコンサルティングワークにおける示唆の出し方に代表される思考の技術のコツがまとめられている。データサイエンティストとしても、最終的には分析結果から得られる示唆が最もクライアントに価値を出すポイントのため、

「答えのないゲーム」の戦い方

答えのないゲームを戦う上での重要なことは、「答え」を出したところでその答えが正しいかどうか判断できない。例えば、上司に「これで合ってますか?」と聞いている場合は答えのあるゲームの戦い方になっている。絶対的な答えがないので、相対的な答えに近づいていくしかないが、その方法は次の3つを意識することである。

  1. セクシーなプロセスから出た答えはセクシー
  2. 2つ以上の選択肢を作り、選ぶ(より良いものを選ぶ)
  3. 炎上、議論が付き物

例えばスライドライティングにおけるセクシーなプロセスは、①論点を明確にし、メッセージを言語化する、②メッセージを支えるファクトを必要最低限注入、③スライドのイメージを考える、④スライドを作るのプロセスで行う。答えのないゲームの終着点は必ず議論であり、炎上の議論が良い結論になる。

「示唆=メッセージ」を抽出する思考技術

示唆とは、ファクトから言えること、So-what、メッセージのことである。示唆は合っているかもしれないが、実際には分からないことであり、断言できることはファクトである。示唆を聞いただけでは納得しない人でも、説明を聞けば納得するものが、ファクトから限界まで離れつつも示唆として認識される範囲というイメージである。示唆を身につけるための自分に問いかける言葉(=口癖)が紹介されている。

  • 「見たままですが」:示唆が浮かばないときにファクトを言う前置き
  • 「何が言えるっけ?」:ファクトから言える示唆を考えるとき
  • 「それは何人中何人?」:100人中3人の場合はプラチナ示唆
  • 「〇〇にも関わらず、XXということは、□□に違いない」:にもかか構文

答えのないゲームである示唆を出すには、次のステップで進める。

  1. プロセス
    1. 示唆:「何が言えるっけ?」の口癖とともに得られる示唆を考える
    2. 対比(ファクト⇔ファクト、ファクト⇔常識/知識の比較):示唆には必ず対比が存在し、にもかか構文で整理する
    3. 3構造:示唆と対比のサマリーを作る
  2. 2つ以上の選択肢を作り選ぶ:
  3. 最終的には議論で完結

クリエイティブな示唆・複数の示唆を出すためには、どのファクトに注目するか、切り取るかが重要となる。

炎上を回避し、議論を健やかにする思考技術(B○条件)

B○条件:B案(相手の主張)が○となる(成立する)条件を示して、その条件を否定した上で、A案(自分の主張)に誘導する議論と説得の手法

議論において、A(自分の意見)とB(相手の意見)を真っ向から対立させて議論してしまうと、水掛け論になってしまう。B(相手の意見)を直接否定してはダメで、相手の意見を直接否定した瞬間水掛け論に突入する。

答えではなく、条件で議論することで答えのあるゲームに転換する。伝え方は、相手の答えが成立する条件を先に提示しつつ、その条件が成立しないから違うということを伝える。

マスターするための口癖は、「もし○○という条件でXXなら賛成だけど、そうじゃなければ反対かな。それで実際どうなの?」という反応に変える。即座にこうだと思う!こっちだと思う!と答えないようにする。

半身(=A○に軸足を起きつつ、B○条件を作ろうとしている)にならず、相手の意見がどうゆう場合・条件・シチュエーションであれば自分にとっても○になるかを考える。例えば、アメフトの試合で子供のチケット無料化を提案された時、チケットの無料 vs 有料で議論するのではなく、どうゆう条件なら賛成かを模索する。この時、解像度を上げて物事を考えること(リアリティ・スウィッチ)

B○条件の思考の土台になるのが「辻褄思考」で、意図が掴みづらいことを言われた時に「どう考えれば辻褄が合うだろうか?」と思考を巡らせることが重要である。

思考プロセス、問題解決プロセスを体得する

問題解決する時の思考プロセスは、他の本で紹介されている内容と基本的に変わりはないが、ポイントだけ記載しておく。

  1. 論点を立てる:とりあえず作業は炎上の始まりで、論点を立てるときはゲームの場合は開発者の気持ちを考える
  2. ファクトから示唆を抽出する:目の前にあるファクトだけで考えると良い示唆は出てこないので、類似例を考えて比較する
  3. 仮説を立てる:最初は全てのファクトを同時に活用して仮説を作るのではなく、いくつかのファクトに絞って仮説を作る。その他のファクトと辻褄を合わせることは気にせず、とにかく仮説を作り出す
  4. 仮説を検証する:「そんなわけないじゃん。だって、こうじゃん。」と言いながら、リアリティ・スウィッチを入れ、お客さんのことを具体的に想像してみる。

今後のToDo

  1. とにかく口癖をマスターする
  2. ディスカッションのときはB○条件で会話する