読んだ目的
- 自分が出した示唆が薄っぺらかったり、驚きが少なく面白くない事しか言えず、いまいちお客さんに刺さってないことを実感することがあるため
- 構造的に話すことはできるようになってきているものの、まさに解像度が荒く、深堀分析できていないと感じるため
得られた学び
本書には解像度、つまり物事への理解度や、物事を表現するときの精細さ、思考の明晰さを上げる方法について書かれている。問題解決のプロセスで、解決策が課題の裏返しになりがちな人は本書で課題に対する解像度を上げることで、より適切でインパクトのある解決策を考えられるようになる。個人的に今後に活用したいことをメモしていく。
解像度を上げる4つの視点
解像度の高さは深さ、広さ、構造、時間の4つの視点で構成される。下記でそれぞれ具体例を例示するが、基本的には深さが足らず、一定以上に深い情報はインターネットでは手に入らないため希少性が高まる。
【深さ:原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げること】
「売上が下がっている」という課題を考えるとき、顧客数が減っているのか、単価が下がっているのか、顧客当たりの購入頻度が下がっているのかの課題の原因を深く掘り下げて把握することで解像度を上げる。
【広さ:考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保すること】
「醤油を美味しくする」という課題の時、大豆の質を上げる以外に、酸化が関わっているのであれば、参加しづらい醤油ボトルにするという新たな解決策に気づける。
【構造:要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握すること】
売上データを構造的に理解するために、顧客単価x顧客数に分解し、単価を商品分類別に分けることで理解する。
【時間:経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉えること】
時間が進めば異なる課題が生まれ、新規顧客数の減少を課題として特定して解決策を打っても、今度は常連客が減ってしまうこともある。
現在の解像度の診断
何かが分からないところが分かっているか。例えば、質問ができないのは解像度が低いときの典型的な症状で、論文を書く前も「分からないこと」をはっきり言える状態にしてその謎を解き明かす。事業や施策においても分からないことを分かるようにすることが解像度を上げる最初の一歩である。本書では事業アイデアや施策に対して下記の内容で簡潔に話せるかどうかで解像度を診断する。
- 「状況」という状況で
- 「課題」という課題を持つ
- 「対象顧客」向けの
- 「製品/サービス名」と言う
- 「製品/サービスジャンル」です。
- これには「利点」という利点があります。
- 「既存の代替品・競合」とは違い
- 「差別化要素」が備わっています。
【簡潔に話せるか、ユニークな洞察があるか(構造)】
枠に入れる言葉が思いつかない、複数の候補から選べない、冗長にしか書けない場合は構造が十分ではない。解像度が高い時は重要な部分を明確かつ簡潔に話すことができる。実際に人に話してみて「どうゆう意味?」「筋が通ってない?」という反応があれば構造化が足りていない。またユニークな洞察を初めて聞いた時に驚いてくれ、驚かれないのであれば解像度は高くない。事実の羅列しかできていないと、「So what?」と質問を受けることになる。
【多面的に話せるか(広さ)】
ユニークさがない場合、広さが足りない。幅広い選択肢をきちんと知っているかどうかが広さで、例えば競合製品との詳細かつ多面的な比較が言えるかどうかも有効なチェック方法である。競合に対して全性能で勝っている状況はほとんど起こり得ないので、何か見逃している点がある・広さが足りないはずである。競合がいない場合も調査不足で競合への認識が甘い可能性がある。もし本当にいないのであれば、そもそも顧客が解決したい課題がない=市場がない。
【その話はどこまで具体的か(深さ)】
上記の自社サービスに関するサマリで埋めた言葉の背景や理由をどこまで細かく具体的に言えるかが深さのバロメーターになる。多くの例に当てはまる一般的な課題を取り上げるのであれば、理由を7段階以上掘り下げられるかをチェックする。
【道筋は見えているか(時間)】
短期的な目標が何で、長期的な目標としてどこまで辿り着きたいのかを途中の到達目標含めて数値で明確に言えるようにする。
行動する・粘り強く取り組む・型を意識する
高い解像度には「情報」と「思考」と「行動」の組み合わせでいてることができる。
【行動なくして、解像度は上がらない】
行動することで解像度は上がる。新規事業では仮に最初の事業はそれほど付加価値が高くないものでも、行動して商流に入り込み、その領域で実際に活動してみることで学習が始まる。学習の中で、商流を遮っている深い課題に気づくことで解像度が上がる。
【粘り強く取り組む】
時間を十分にかけることも重要であり、正しい方法で効率的に学ぶことはできるものの、一定の勉強時間は必要である。
【型を意識する】
ピクサーの原則の1つに「プロセスを信じよ」があり、ミッションとしてのWhy、何をするかのWhat、進み方であるHowについての信念もチームで共有していることで、各チームが方法論を拠り所にして進み続けることができる。
課題の解像度を上げる
【深さ】
解決策は課題以上の価値は生まれない。どんな課題を選べば良いかというと、以下の3点を満たす課題が良い課題である。
- 大きな課題である
- 合理的なコストで、現在解決しうる課題である
- 実績を作れる小さな課題に分けられる
課題の大きさは、強度 x 頻度に分けられる。強度とは課題が起こった時にどれぐらいの痛みを感じるか、解決できなければどの程度の金額を失うか、解決できたらどの程度の大きな金額を得られるか(バーニングニーズ)で、頻度はその課題がどのくらい頻繁に起こるかである。(歯ブラシテスト)
実績の作れる小さな課題に分けられるかは、大きい物事が動き始めるのも小さな成功が起こってからで、小さな課題の中でも強い痛みを感じている課題や、緊急性を感じている課題を選び、実績を作る。
課題を特定する時、症状なのか病因なのかを意識する。市場の課題と顧客の課題の混同が多く、市場の課題は企業や個人の課題の集約や、市場の制度が生んだ症状(人材のミスマッチ)で、病因は目の前にいる顧客が困っていることというミクロな顧客の課題(働きたい時間・賃金形態が合わない等)である。市場のマクロな課題も大事だが、目の前の顧客の根本的な課題の原因を突き止められているかはそれ以上に重要である。
7~10ぐらいのレベルの深掘りができていないと、重要な洞察を得られず、有効な解決策を導くこともできない。「深さ」の視点で内化と外化を繰り返して解像度を上げる。
- 内化:読む・聞くなどを通した知識の習得、外化の振り返りを通じた気づき
- 外化:書く・話す・発表などの活動を通じた知識の理解や思考したことの表現
ステップ1:書く
今何が最も重要な課題だと思っているのか、それはなぜなのかを仮説で良いから最初に書く。箇条書きで問題ないが、詳細に課題を検討するときは文章として長文で書く。これらをツリー状に整理して、深さレベルを可視化する。
ステップ2:調査
深さレベル3にも至っていない状況であれば、多くの情報を集め全体像を知る。
- サーベイ:最低100の事例を集め、実際に触ってみる。300,400以上知ると頭の中に地図ができてくる。延々とできるため、10~50時間に時間を決める。
- インタビュー:顧客の意見ではなく事実を聞き、その事実から自分自身で仮説を立て・洞察を得ることで価値を出す(顧客自身が課題を把握することには限界があり、専門家が事実をもとに考えることで課題の病因に辿り着く)。現在・過去に行なっていることを聞く。半構造化(事前に定めた質問に従いつつ、状況に応じて自由な質問をする)インタビューで聞く。深さレベル3~5に到達。
- 現場に没入:参与観察を行い情報を得ることで、想定する課題が起こるシーンや自社の製品やサービスが使われるシーンを観察することで、顧客の課題を詳細に理解する。行う前に必ず事前に仮説を持って現場に行く。
- 個に迫る:極端に先進的なことに取り組む人に目を向ける
ステップ3:外化
これまで得た事実や情報(内化)をもとに、洞察を言語化(外化)する。
- Why so?を繰り返し、事実から洞察を導く:課題の仮説を十分に具体化してからWhy so?を問い始める。原因を人に帰属させず、組織やシステムの方に目を向けることで解決策に気づく。
- 習慣的に言語化する:メモや対話、教えること
ステップ4;内化と外化の精度を上げる
- 言葉や概念、知識を増やす:一般的な言葉に気をつける。例えば、「苦しむ」という言葉でも面倒なのか、大量の時間を使って苦しんでいるのかで度合いは異なる。行動して現場に出て、Why so?を繰り返しても解像度が上がらない場合は概念や知識が足りていないことが考えられる。
- コミュニティで深掘りを加速する:最先端の実践を知る・誰かと対話して考える
【広さ】
- 前提を疑う:そもそも何のためにあるか・必要かを見直し、今の10倍の性能を出せる手段を考えることで課題への視点を無理やり変える。自社の事業をリフレーミングすることで新しい課題が見える。
- 視座を変える:自社のことをベースに、1段階上げた業界視点で物事を考えるだけでなく、もう1段上げて社会に目を向けて社会課題やあるべき社会像をかがえる。
- 相手の視点に立つ:デザイン思考の各手法は顧客の立場に立つ視座の変更を促すもので、共感には相手の感情を感じ取る感情的共感と認知的共感は異なる価値観や状況に置かれた人の立場になって考え、その人の状況を理解する認知的共感がある。顧客候補が「この作業が面倒」と言う感情的共感を覚えながら、同時になぜそうなっているのかを認知的共感を使って考えてみる。
他にも日常的に広げるためには競合製品を体験する、旅に出て当たらなキーワードを獲得する、人と話すと言う取得できる情報を広げる。これらの行動で広がった選択肢の中から、改めてどこを深掘りしていくのかを決める。
【構造】
構造化の部分は従来のロジカルシンキングの書と大きく異ならないので割愛するが、構造は目的にあった適切な行動ができる単位まで分ける。バーニングニーズを解決すれば、その上部にある課題もどんどん解決されていき、最終的に大きな課題を解決できるようになる。
【時間】
時間経過による変化を見ることで、ムービングターゲットである課題を捉える。
- 流れを見る:プロセスやステップに分けて物と情報の流れを見ることで、流れが遮られているボトルネックが大きな価値につながる課題である可能性がある
- 歴史を振り返る:歴史を振り返り過去から学ぶと課題が生まれた経緯が見えてくる
解決策の解像度を上げる
良い解決策の条件は次の3つである。
- 課題を十分に解決できる
- 合理的なコストで、現在実現しうる解決策である
- 他の解決策に比べて優れている
上記の条件を満たしながら、顧客が重要視する複数の評価軸で課題を十分に解決できており、総合的に優れている必要がある。次からは、解決策の深さ・広さ・構造・時間の観点で解像度を上げる方法をメモする。
【深さ】
- プレスリリースを書いてみる
- 解決策はHowを繰り返して問うことで、行動可能な単位までHowを問う
- 専門性を磨く
- プロトタイプを作ったり、ロールプレイをする、競合製品を使い倒す
【広さ】
- 解決策の知識を増やし、手に馴染ませる
- 外部資源を活用する前提で、自分にできること以上の広さを持つ
- 探索のために時間(業務の20%)やお金を割り当てる
- 解決策の意味を考え、本当に解決している課題・価値は何かを考える
【構造】
- 解決するスコープを決める、意図的に目を瞑っていると言えるようにする(例:QBハウスで洗髪サービスを捨てることで高い回転率になる)
- ストーリーという観点から物事の構造をつなぎ合わせる(受け手の理解を促し、感情を掻き立てる構造を築くこと)。優れたストーリーを構成する一つの方法は、観客が予想していることを裏切る。例えば、コンサルであれば当たり前の市場データを見せて現状認識を示しつつ、意外な重要データを見せて裏切ることで注目を集める、製品であればコアとなる体験が顧客に新鮮な驚きを提供する。
- 雑な構造からを作り始め、徐々にしっかりとした構造にする。最初から完璧を目指すと進まない。
【時間】
- 最初は小さな課題を解決することで、未来の大きな課題解決につながる1歩になるという話が説得力高くできているかどうか
実験して検証する
日々の分析案件や提案活動や分析でも実験による検証をする必要がある。
- スケールしないこと・泥臭いことをすることで、顧客と直接触れ合うことができ、顧客の解像度が上がる
- 課題の大きさは相手がお金を払ってくれるかどうかである程度検証可能
- 課題がバーニングニーズであれば、品質の低い製品であっても高い金額を支払う約束をしてくれる
未来の解像度を上げる
最後にコンサルティングワーク・分析ワークだけでなく、将来の仕事の目標を立てる上で、どんな未来にしたいかを考える。
- 未来を描くためには、「あなた自身はどういう未来にしたいのか」という未来への意志が問われる
- 理想を持てない場合、未来に生きる誰かの視座に立ってみること
- 誰かに取り組んで欲しい課題・他の人は未来のためにどんな課題を解決すべきか?を考え、やるべきだと思ったことをやる
今後のToDo
- 事業アイディアや施策について、解像度診断に沿ってサマリを書く
- 課題の深さを深ぼるプロセスを現在のクライアントの課題について実践してみる
- 将来の転職先の解像度を上げるために、土日の20%の時間を使い、本書に沿って考える時間を確保する