読んだ目的
- データサイエンティストとして仮説ベースでの検証を行うが、そもそも筋の良い仮説を思いつかないと適切な分析ができないと痛感しており、仮説の精度を上げるために右脳思考を学ぼうと考えたため
- コンサルティングファームではロジカルシンキングは傾倒しがちだが、クライアントフェイシングではロジカルだけでは限界があると感じたため
得られた学び
本書ではロジカルシンキングと対比する右脳思考が書かれている。なぜ右脳を使うことが重要かから、右脳の使い方まで参考になるポイントを整理する。
なぜ右脳が重要なのか
人間を動かすのはそれが正しい・間違っている、やるべきかどうかというロジックではなく、やりたい・面白そう・やらないとまずいといった気持ち・感情である。ロジックで攻めるから落とし穴にハマることがあり、例えば、クライアントへの提案が反対される時、3つのパターンがある。
- パターンA:反応:ロジカルに反論、真の理由:提案の完成度が低い
- パターンB1:反応:とにかく反対、 真の理由:気に入らない
- パターンB2:反応:ロジカルに反論、真の理由:気に入らない
危険察知能力などプライベートでは勘を使うが、ビジネスにおいても勘を大いに働かして仕事をした方がいい。勘が働いている状態の相手のコメントに対して切り捨てるのではなく、相手の勘の中に何か大切なものや見落としている論点が含まれている可能性がある。相手を説得して動いてもらうためには、理屈ではどう考え、感情ではどう思っているのか、感情と理屈の因数分解をして理解することが大切である。
右脳の使い方
考える順番は、右脳→左脳→右脳の順である、
【①問題発見は右脳が出発点】
データを眺めたり、現場を見たり、顧客の行動に疑問を感じたりして、観察し、何かを感じ取り、なんかおかしい・面白いと働く勘(観・感・勘)で問題を発見する。
【②解決案は左脳で考える】
ロジカルシンキングで考える。最初は右脳の思いつきから始まったアイデアを、左脳で理論武装できなければ成功しない。
- 嫌なことは長続きしないので、自分自身に納得感があることが大切である。
- 新規事業等のビジネスを考えるとき、キーコンセプトから逆算してロジックを考える。①市場性、②競争状況、③自社の強み、④ビジネスモデル、⑤実行計画の5つの視点でチェックする必要がある。
【③決定し、実行に移していくのは右脳が中心】
「理屈はもちろん、感覚で大いに納得している状態」である腹落ちしてもらうために、相手がどう思っているかを右脳で感じ取り、納得していない場合は何が引っかかっているのか・どうしたら納得してもらえるかを左脳で考え、最後は感情・右脳に働きかける。コミュニケーションの極意は「理屈通りにいかない」と心得ることで、実行・人を動かすのコツは感情・右脳に働きかけることである。
- 提案した本人にその気がないと、オーナーシップがなく失敗する
- 企画を通したい場合は、論理的に正しいプランだけではダメで、当事者の想い・責任感、意思決定者を動かす何かの両方が必要で、経営者が左脳型の人間であれば会社にどんなプラスがあるのか、右脳型であれば情に訴える
- 人の心を動かすような提案や説得ができるようになるには、左脳(ロジック)で考えたことに右脳で肉付けする(気持ちに入り込む・寄り添う)
- 人間が本来持っている「うまく説明できないが、なぜかそう思う」という感覚を繰り返し意思決定に取り入れることで、意思決定の質を高めることになる。
【ユースケース①:会議・議論のマネジメントに使う】
- 左脳で(論理的に)文字通り何を言っているか理解する
- 右脳(直感)で発言の「真の意図」をつかむ
- 右脳(直感)でどのように答えれば良いか理解する(相手の立場を尊重したメッセージを送る)
- 左脳(論理的に)どのように伝えれば良いか考える
2番の右脳で真の意図を掴むは4つのケースが考えられる
- 論破できないので別の切り口から文句を言う:ロジカルに迫り、重要人物であれば理解を求めるプロセスに入る
- 優秀であることを他の参加者に伝える:さすがですね!すでに検討してありますと受け流す
- 関係ない話で周りからひんしゅくを買っているが、貢献していると思っている:ぴしゃりと関係ない発言と切り捨てる
- 賛成だが、少し心配:賛同者のため、丁寧に対応する
それぞれのステップに時間をかけるのではなく、相手が話し終わることには「伝える内容」を考えておく。
【ユースケース②:変革の必要性を訴える時】
RWAというアプローチは、組織に変革を起こす時に3つの要素がないと組織は変わらないという考え方である。
- Ready:組織が変革を必要とする理由を理解しているか
- Willingness:組織や個人が変革したいという意欲を持っているか
- Ability:組織が変革をやり遂げる能力があるか
伝えるときは右脳→左脳の順に、心に語りかけるようになぜやりたいのか、これをやり遂げるとどんな良いことがあるのかをメンバーに伝え、それを左脳でうまく理屈づけしていく説明のプロセスが実行を効果的に進める。優秀なコンサルタントはいきなりフレームワークを持ち出さず、右脳から始める。
人を動かす提案をするための4つの要素
例で、国内市場だけでは売上減少が想定されている企業への海外進出を提案する時のロジックと感情面を考慮した提案方法を考える。
・論理性:正しいこと(左脳)
海外に出ないと成長余地がないことは論理的に理解していた
・ストーリー:全体が一つの分かりやすいストーリーになっている(右脳)
国内市場だけでは売上減少するので、グローバル市場を対象にすることは分かりやすい
・ワクワク・どきどき:楽しそうだからやってみたい、なんか面白そう(右脳)
一緒に営業担当・開発担当にビジネスができそうという手応えを感じてもらう
・自信・安心を与える:自社でもできるし、失敗しても大したことない(右脳)
実際に一緒に海外に行くことで、やればできるという思いが楽しさにもつながる
人を動かす4つの要素は、ストーリーを豊かにする方法である①立体感(イメージできる)、②現実感(実現できそう)、③安心感(やってみたい、自分でもやれそう)の3つを網羅してストーリーにして話すことで動く。
右脳力を鍛える
- 人はそれぞれ自分のレンズを持っており、ものの味方・考え方・感じ方が違うという事実をまずしっかり叩き込む
- 他人のレンズを通してものを見たり、感じたりすることができるようにしておく
- ロジカルシンキングは平均しか分からないことが多く、右脳で異常値に気づく
- 「相手の靴に自分の足を合わせる」感情移入して、相手の思考回路を想像して、その回路を当てはめて問題を捉えてみることで、論点が浮かんで来る
- 相手との対話を通じて見出すことができないのであれば、相手の考えを想像してシミュレーションしてみる
- 反対する理由が分かった時は納得してもらう方法を右脳で考える。寄り添って徐々に説得、理詰め、情に訴える、公式の場か飲み屋か、みんなの前か一人か。
- 相手の本音を引き出すためにはあえて少しきついことを言って反応から本音を見つけ出したり、考え方を引き出すためにあえてオーバーな提案を言ってみる
今後のToDo
- ロジカルシンキングで考えた内容を右脳を使って適切に伝えられるように、相手の靴に自分の足を合わせて考える
- 右脳を鍛えるの内容を強く意識する