データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】影響力の武器

読んだ目的

  1. 分析結果に基づくアクションを取ってもらいたいが、スケジュール通りに動かなかったり、そもそも受け入れてもらえない等、上手く進まないことがあるため
  2. クライアント内で存在感を出すために影響力を上げたかったため

得られた学び

本書は心理学の研究に基づく影響力を上げるため手法が書かれている。基本的に既知なものが多いが、影響力を上げるための手法を覚えておくために整理しておく。

返報性

返報性は他者から与えられたら自分も同じようなやり方で相手に返すように努めるルールである。持続的な人間関係が発達するルールであり、ルールを守らないと重大な社会的不承認を被る。

返報性を活用して交渉では最初に譲歩して、お返しとして相手の譲歩を引き出す。これは望んでいない厚意を受けた場合にも適用される。恩義を受けっぱなしにしているという不快感を取り除くために、大きな頼みを聞いてしまう。

返報性のルールに対する防衛策は、他者の最初の申し出を杓子定規に拒否するのではなく、最初の親切や譲歩は誠意を持って受け入れ、計略だと分かった時点で再定義できるようにしておく。

コミットメント

人は一貫性を持った行為・意思決定にしたいと考えており、類似した状況に直面したときに一貫した意思決定(コミットメント)をする。これにより貴重な時間を節約できる一方、一部の情報だけに反応することによって間違いを犯しやす苦なる。

承諾を引き出す上で鍵となるのは、最初のコミットメントを確保することで、人はそのコミットメントに合致した要求を受け入れやすくなる。最も効果的なケースは行動を含み、広く知られ、努力を要し、自分がそうしたかったと考えられる時である。

コミットメントに抵抗するには「一貫性を保とうとすることに拘りたくないと説明すること」である。また、「今の状態で過去に戻ったら同じコミットメントをする妥当か」という問いを自分自身に問いかける。

類似した他者の承認行動

社会的証明の原理によると「他の人が何を信じているか、どのように行動しているか」を重視するため、他の人が購入した・要請に応じた等を教えることで、ある人がその要請に応じるように促すことができる。

社会的証明は①不確かさ、②類似性がある時に最も強い影響力を持つ。不確かさは、自分の決定に自信が持てない時、他の人の行動を正しいものとして受け入れる。類似性は、自分と似た他人の行動に強い影響を受ける傾向がある。

間違った社会的証明に影響されないようにするために、①類似した他人が行う偽りの証拠に対して敏感であること、②自分の行動を決めるときは類似した人の行動だけを決め手にしないことである。

好意あるいは友愛の感情

自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある。好意に影響する要因は①身体的魅力(イケメン、美女)、②類似性(似た人)、③称賛(お世辞)、④接触回数(快適な環境での接触回数)、⑤連合(阪神ファン)である。

承諾の決定に悪影響を防ぐには、承諾を引き出そうとしてくる相手に対して過度の好意を持っていないか敏感になること。

権威からの命令

権威からの要求に服従させるような強い圧力が存在する。通常権威者は優れた知識と力を持っているのが普通なので、適応的な行為であることが多い。

権威者からの影響力から守るために使える質問が2つある。1つ目は「この権威者は本当に専門家だろうか?」で、2つ目は「この専門家はどの程度誠実なのだろうか?」である。

希少性に関する情報

希少性の原理とは、機会を失いかけるとその機会を価値あるものとみなす原理である。これを応用したのが数量限定や最終期限といった承諾誘導の戦術である。効果を上げる理由は2つある。1つ目は手に入りにくいものは貴重なものが多いので、入手できる可能性がその質を判定する手っ取り早い手掛かりになる。2つ目は品・サービスが手に入りにくくなる時、自由を失うからである。

希少性を適用できる条件は①ある品が新たに希少になった場合、②他人と競い合っている場合である。

希少性を含む状況で影響力を抑えるには、頭に血が上らないように注意すること、なぜそれが欲しいのかという観点からその機会の利点を評価する。

今後のToDo

  1. 分析結果に基づくアクションが他社も行っていることを示す
  2. アクションを促進するためのコミュニケーションを上の人を通じても行う
  3. 関係部署との接触回数・会話回数を増やす