読んだ目的
- 改めてロジカル・シンキングの古典的な本で基礎を学ぶため
- ロジカル・シンキングを学び、分析結果を適切な論理で効果的にクライアントに伝え変革に繋げられるようにするため
得られた学び
本書はロジカルシンキングが日本に広まるきっかけとなった本であり、非常に示唆に富む内容が書かれている。今後に活用したいことはかなり多いが全てメモしていく。
書いたり話したりする前
相手に伝えること・メッセージとは「課題」「答え」「相手に期待する反応」の3点セットを満たしているものである。相手にとって伝えることが期待されているメッセージになっているかどうかで、極論、伝え手の思いの丈など受け手にとってはどうでもいい。文章を書く前・説明する前にすることは次の2つを考える。
- 課題(テーマ)を確認:課題を確認し、説明したい相手との共通認識を作る
- 相手に期待する反応を確認:理解してもらいたい、意見・助言・フィードバックしてもらいたい、賛成反対の表明、行動してもらう等の反応を確認する
受け手の時も同じく課題と反応をまず確認する。最初に設定した課題の答えではないことを伝えたい時、できるだけ早く課題の設定し直すこと必要である。例えば、最初の課題に対するアクションをとっても根本的な解決にはならず、別の課題が浮き彫りになった時である。
答えるべき課題と反応を確認した後、課題に対する答えになっているかを吟味する。特に次の3点を確認する。
- 結論:課題に対する反応(アクションをとる、Yes/No、意見)がクリアに残るか
- 根拠:結論に至る根拠に納得感はあるか。事実と判断(示唆)がある
- 方法:結論のアクションに具体的なやり方が示されているか
伝わらない時は、結論・根拠・方法でそれぞれ原因がある。
結論が伝わらない時の2つの落とし穴
- 結論は課題の答えの要約であり、自分の言いたいことの要約ではない
- 「状況に応じて」「場合によっては」の付帯条件を明確に説明できるようし、勝手な解釈の危険性を減らし、基準を明確にする
根拠が伝わらない時の3つの落とし穴
- 「Aが必要だ、なぜならAがないからだ」では相手は納得しない
- 事実と判断・仮説を明確に記述しないと信憑性は半減する
- 「前提・判断条件」「言わずもがな」「当たり前」と思っているのは伝え手だけ
方法が伝わらない時の2つの落とし穴
- 他社や10年前でも通用する公理(例:競争力強化に向けて自社の強み・弱みを見極めた上での注力領域への経営資源の集中投入)では人は動かない
- 修飾語で物事が具体的になることはない。全社一丸等の修飾語が多い場合は問題が解けていないことが多いので、So what?を自問自答して具体的に考える。
論理的思考を整理する技術
論理的思考を整理する技術は主に2つあり、1つが「重複・漏れ・ズレを防ぐ」ことであり、もう1つが「話の飛びをなくす」ことである。これらはMECEとSo what?/Why so?の2つの技術を習得することで達成できる。
【MECE(重複・漏れ・ズレを防ぐ)】
詳細は他の本と同様のため割愛するが、Tipsをメモする。
- グルーピングとは、自分の結論を説得するための持ちネタを洗い出し、意味のあるMECEの切り口を意識しながら整理すること
- どうしてもMECEにならないときは、AとA以外で分類し、A以外でより分類できないか考える。列挙した持ちネタを単純にグループ化する
【So what?/Why so?(話の飛びをなくす)】
- So what?:手持ちの情報や材料の中から「結局どういうことなのか?」を抽出する作業で、答えるべき課題に照らしたときに言える重要なエキスを抽出する作業
- Why so?:So what?した要素の妥当性が手持ちのネタ全体、グルーピングされた要素によって証明されることを検証する作業
So what?/Why so?を使いこなすためには、「要するにここから何が言えるのだろう」「要するに、この話で大事なことは何だろう」と考える癖をつけるしかない。分析においては、データから得られる事実を正しく観察し、その観察結果を受け手にも同じように理解してもらえるように明示することが重要になる。
実際に使うときは、一体どこまでWhy so?と質問してくるのか、その質問に答えるにはどこまでの根拠や方法があれば良いのかを見極め、相手がどこまでWhy so?と聞いてくるかを想定し、そのWhy so?の質問に答えられるだけの過不足ない根拠なり、方法なりの要素を階層化して用意しておくことが必要となる。
論理的に構成する技術
論理的思考を整理する技術である「So what?/Why so?」と「MECE」で論理を作る。
論理とは、結論と根拠、もしくは結論とその方法という複数の要素が、結論を頂点に縦方向にはSo what?/Why so?の関係で階層をなし、横方向にはMECEに関係付けられたものである。
【論理の基本構造】
縦の法則:So what?/Why so?
観察のSo what?/Why so?
データや情報が何を意味するかを要約し、同時に本当にそのようなことが言えるのかどうかを検証すること。観察対象が事実であれば、So what?の結果も事実の要約であり、対象がアクションの場合には、So what?の結果もアクションの要約になる。
洞察のSo what?/Why so?
データや情報を観察のSo what?/Why so?をした上で、課題に照らして元のデータや情報とは異質な要素を抽出し、本当にそのようなことが言えるか検証すること。事実からルール・法則(業界の勝ちパターン等)という判断や仮説を導き出す場合が該当する。
横の法則:MECE
MECEが大事なのではなく、相手から見て答えが、重なりも漏れもズレもなく、課題にあった切り口できちんと整理されていることが重要になる。
【論理パターン】
論理パターンには並列型と解説型の2パターンがある
並列型
結論を頂点に、それを支える複数の根拠、結論が何らかのアクションを示す場合には方法が、縦方向にはSo what?/Why so?の関係で階層化されている。説得力の源泉は、結論に対して根拠や方法が重複・漏れ・ズレがなく、MECEに展開される点にある。
適用ケース
- 課題やテーマに対して、十分な理解度や興味を期待できない相手に自分の論旨の全体像を簡潔に示したいとき
- 決定事項の連絡や確認など、結論に関して相手とは議論の余地がない内容を全体像を簡潔に示したいとき
- 自分の思考や健闘の広がりに、重複や漏れ、ズレがないことを強調して、相手を説得したい時
解説型
結論を支える根拠を、客観的な状況と結論を導くための判断基準や判断内容という主観的なものとに明確に分けて提示する。留意点は次の2点である。
- 事実を起点に結論を説明するため、事実の内容は必ずMECEに整理しておく。
- 判断基準が①明示されていること、②課題・テーマの答えを導き出すものとして、相手から見ても妥当な内容になっていること
適用ケース
- 客観的な事実で共通認識を作り、自分の思考の流れを示して、相手に自分の結論の妥当性を強調したい時
- 自分の考え方に対して、相手から意見や助言をもらいたい時
- 複数の代替案の中から、選び取った代替案の妥当性を証明したい時
【論理パターンを使いこなす】
論理パターンは並列型と解説型の2つのパターンがあるが、これらを組み合わせて論理を構成する。答えるべき課題が1つの場合は並列型か解説型で論理構成するが、レベル2では十分に答えきれない場合、レベル2にある根拠や方法の各要素をさらにレベル3として並列型や解説型の論理構造で構成し、縦に組み合わせる。
答えるべき課題が2つある場合、2つの論理パターンを横方向に足し合わせる。論理パターンは次の4つのパターンである。
- 並列型+並列型:相手との結論の是非を議論する必要はなく、相手に結論を正しく理解して正しくアクションをとってもらいたい場合により有効
- 解説型+並列型:「何をするべきか」という課題には解説型、「そのためには具体的にどう進めるか」という課題には並列型を用いた組み合わせ
- 並列型+解説型:「何をするべきか」という課題には並列型、「そのためには具体的にどう進めるか」という課題には解説型を用いた組み合わせ。全体的な方向性については既に相手と合意形成ができている、もしくは是非を議論する余地はないので確認だけすればよい時に利用する、
- 解説型+解説型:「何をするべきか」と「そのためには具体的にどう進めるか」という課題の両方に解説型を用いた組み合わせ。なぜこの結論なのかを解いていくため、伝え手の考え方をじっくりと聞き・読みたいという相手には相応しい。
最後に重要だと感じたTipsを箇条書き形式で残しておく。
- 最初に課題・テーマと相手に期待する反応を伝え、コミュニケーションの目的をはっきり示して答えに入る。(特に根拠→結論の順で答えを伝える時)
- 答えを出すために検討することと、答えを相手に伝えることは全く異なる。
- 解説型の事実には本当に事実しか入れてはいけないのか?相手と共有された合意形成されたものであるなら、解説型の事実の要素にしても構わない。
今後のToDo
- メッセージを作るときに、どの論理パターンで説明するか決めてから組み立てる
- So what?/Why so?を自問自答し続ける