データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】問題解決力を高める「推論」の技術

読んだ目的

  1. 帰納法演繹法アブダクションの3つの推論力を理解してはいるが、実際のビジネスでどんな時にどんな推論法を使うか、身についていないため
  2. アブダクションを学んだが、帰納法演繹法アブダクションの使い所が分かっていないため
  3. これらの推論法を活かし、筋の良い仮説出しを行い分析に落とし込むため

得られた学び

本書では推論の技術として帰納法」「演繹法」「アブダクションについて①概要、②留意点、③利用局面、④頭の使い方、⑤ビジネスへの活かし方、⑥トレーニング方法が書かれているので、それぞれまとめる。

 

帰納法

帰納法とは

複数の事実から共通点を発見して結論を導き出す推論法

 

②留意点

  1. 事実に偏りがある場合:選び取った事実に代表性があるかや偏りがないかを確認
  2. 共通点の発見に飛躍がある場合:恣意的な共通点の解釈に注意する
  3. 結論部分に飛躍がある場合:推論プロセスに飛躍がないか入念にチェックする

帰納法では100%論理的に正しい結論ではなく、論理歴に確らしさが高い結論という位置付けに留まるため、精密さより納得感を追う方が良い。

 

③ビジネス活用する局面

  1. 環境の変化を捉えて、方針や戦略を策定する局面:PEST分析や3C分析等の外部環境分析フレームワークを用いて分析し、帰納的推論から示唆を得る
  2. 世の中の事象から「法則」を発見し、学びに変える局面:知識の陳腐化は早く、独自性・再現性の高い法則を学ぶことで、学びが加速する。

 

④頭の使い方4ステップ

  1. 様々な事実に気づく
  2. 複数の事実の共通点を発見する
  3. 結論や法則を見出す
  4. アナロジーを使って法則を応用する

1の事実に気づくために観察力を上げるには、関心のフォーカスを絞り込み、注意力を高めることで気づきを蓄積する。時系列変化、比較、フレームワークの視点を持つことで、新たな側面に気付くキッカケにもなる。当たり前を疑うことも重要である。

共通点を発見するには、観察を通して直接的に共通点を発見する推論法(観察的帰納法)と、観察を通して得られた複数の事実から洞察を通して共通点を発見する洞察的帰納法がある。後者はいわゆる関係・構造を見抜く抽象化している。

3で結論を得るときは抽象化と多面的な視点の合わせ技で法則を手に入れる。

4のアナロジーを使って法則を応用するは、洞察的帰納法によって得た法則が他の分野にも当てはまれば、法則の確らしさが高く、応用範囲が広いものになる。

 

⑤ビジネスに帰納法を活かす方法

  • 世の中の機運を捉えて、ビジネス機会を発見する:PEST分析の4つの視点を踏まえ、概念化・多面的視点を通して共通点(ビジネストレンド)を発見する。
  • 市場環境を分析して、戦略を策定する:3Cで各領域の重なり度合いが大きい領域を帰納的に発見し、優先順位の高い領域を発見する
  • ライフスタイルの変化を捉えて、コンセプトワークに活かす:複数の事実(トレンド)から概念・共通点を抜き出すことで、新しい価値(コンセプト)を生み出す
  • 複数の事実を根拠に、提案する:結論に対してなぜそう言えるか?をというロジックが明確になる。So what?&What so?で整合性をチェックする。
  • 複数の事実から、問題の根本原因を発見する:洞察的帰納法を使って、事実を抽象化し、多面的な視点で捉え直すことで、根本原因を探る

 

⑥トレーニング方法

今ある習慣の中に帰納法を取り入れる。やり方は①フレームワークを使って問題を発見する、②帰納法を活用して提案ロジックを考える(QCDで考え提案する)の2つがある。また、見聞きしたことに帰納法で考えることも望ましい。

 

 

演繹法

演繹法とは

前提となるルールに物事を当てはめて結論を出す推論法(前提となるルール・法則があり、当てはめる物事がある、法則則ると結論が導かれる)

 

②留意点

  1. 前提となるルールに誤りがある場合:正しい前提を置くルールが存在し、かつ正しいことが極めて重要となる
  2. 過度に推論形式に捉われてしまう場合:規則(ルール)の良し悪しを疑わないまま数学の公式のように捉えてしまうと、逆に思考停止に陥ってしまう

 

③ビジネス活用する局面

  1. ビジネスの環境変化を予測する局面:背景にある力学を前提に置くことで、将来予測を可能にする。
  2. 提案の良し悪しを検証する局面:目的・目標を前提となるルールに置き、演繹的に提案を考えることで精度の高い提案ができる
  3. 洞察的帰納法で得た法則から価値を生み出す局面:洞察的帰納法で得た法則を演繹法の前提となるルールに当てはめることで価値をだす

 

④頭の使い方3ステップ

  1. 前提となるルールを見極める:ビジネス上で正しいとされているルールは目標、目的、方針、ビジネス上のセオリー、価値観・カルチャー、法則の6つがある
  2. 前提となるルールに目の前の物事を当てはめる:Why?で前提を疑い、前提を掘り下げていく
  3. 結論を出してチェックする:演繹法の論理が成り立っているかチェックする習慣をつける

 

演繹法を活かす方法

  • 今後の市場動向の予測:プロダクトライフサイクル理論に演繹法を掛け合わせ、近い将来起こるであろう機会や脅威を事前に予測し、対策を打てる
  • 戦略や方針に基づいた企画立案:方針との整合性を演繹法でチェックすることで、散発的なものとなるリスクを減らす
  • 会議のファシリテーション:置いている前提が異なれば意見は噛み合わないので、会議開始のタイミングで前提を合わせる
  • 企画を提案する際のロジック:前提となるルールに目的を置き、演繹的に結論を出すことで、提案の説得力を高める
  • ビジネスのKPI設定:適切なKPIを設定するために、目標に対して演繹的に導出したKPIを設定する

 

⑥トレーニング方法

日々の業務に演繹法を組み込む。自社の戦略・施策をビジネス理論に当てはめて考える。演繹法を成り立たせる最も重要な要素であえる前提の扱い方の上手い下手が、演繹法をマスターする鍵である。

前提を疑うクリティカルシンキング(本当か?他にないか?)、前提を概念で捉える概念化思考でより大局的・全体的な視座から概念として捉え直す(紙ではなく、描くもの、敷くもの、何かを包むもの等の概念として捉える)、前提を捉え直すラテラルシンキングで暗黙の前提を捉え直す。

 

 

アブダクション

アブダクションとは

「起こった現象」に対して「法則」を当てはめ、起こった現象をうまく説明できる仮説を導き出す推論法

 

②留意点

アブダクション演繹法の違いは、演繹法は「正しいとされる前提」に「目の前の物事」を当てはめることで今後の予測・検証する一方、アブダクションは「起こった現象」に対して正しいとされる法則を当てはめて、原因となる仮説を導き出すために使う。

 

③ビジネス活用する局面

仮説思考に必要な推論力がアブダクションで、仮説の可能性を広げることができる。

  1. 問題発見と問題解決の局面:問題という目の前に現れた現象からなぜその問題が起きたのかの原因となる仮説を立てるとき
  2. 物事の背景の価値を見抜く局面:例えば、紙幣は実体としては紙切れだが、モノと交換できる背景の価値を見抜く(紙は書く、包むとかの機能・背景もある)
  3. 起こった現象から「法則」を発見して応用する局面:アブダクションで立てた仮説を演繹法で証明して法則を手に入れる

 

④頭の使い方5ステップ

  1. 起こった現象に自覚的になる:仮説を生み出すキッカケを作るためにまずは起こった現象に自覚的になることが必要
  2. 起こった現象に対して疑問を抱く:キッカケ・なぜその現象が起きているかを解答することを前提とした疑問に位置付け直す
  3. 様々な法則を当てはめて仮説を導き出す:フレームワークを知ることで、精度の高い仮説を導き出すことができる
  4. 仮説を構造化してさらなる仮説を導き出す:仮説の構造化とは起こった現象の原因となる複数の仮説を漏れなくダブりなくツリー状に整理する
  5. 仮説と起こった現象との間にある因果関係を検証する:因果関係の強さまで踏み込む

 

アブダクションを活かす方法

  • 問題の原因解明に活かす:Whatツリーと呼ばれる要素分解ツリーで何が問題でどこに問題があるかを特定し、Whyツリーというロジック(原因追求)ツリーで問題の原因を分解していく。
  • トレンドの背景を捉えてビジネスに応用する:背景にある法則や仮説を発見することができれば、アナロジーを駆使して全く別分野に応用して価値を生み出す
  • 他社の成功事例を自社に応用する:個々の事例からKSFを探り当て、アブダクションすることでビジネスに活かすことができる

 

⑥トレーニング方法

日々の業務に組み込み、一度アブダクションして終わりではなくWhyを追求し、アブダクションを繰り返す。

 

 

推論力の合わせ技

ビジネスの一貫性を保つ:帰納法演繹法

帰納法で策定した方針を元に、演繹法で個別方針へ落とし込むと、方針と施策に一本の筋が通り、一貫性が保たれる。

提案力を身につける:帰納法演繹法

帰納法で提案内容(事業面)を作成し、演繹法で自社が参入すべき(財務面)を検証することで、適切な提案をすることができる。

自分の成長を加速させる:アブダクション帰納法演繹法

アブダクションで疑問を持ち、なぜを考え、法則を当てはめることで説明できる法則を探す。帰納法で背景にある共通点を探す。帰納法で得られた法則を演繹法に当てはめることで、予測力を手に入れることができる。

 

今後のToDo

  1. 各ビジネス活用する局面になったら、これらの推論方法の頭の使い方を意識して考える
  2. アブダクション帰納法演繹法の3つを強めに意識して仮説思考、帰納法による法則発見、演繹法による検証に使う