データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】論点思考

読んだ目的

  1. データサイエンティストとして取り組むべき課題はインパクトの大きい課題であることが求められるが、実際にお客さんから与えられる課題に取り組むだけで問題ないのか疑問があったため、論点思考を身に着けて適切な論点設定できるようになるため本書を読んだ
  2. 仮説思考と密接に関係しているため、コンサルタントとして仕事する上で身に着けることは必須であるため

得られた学び

まず、論点と論点思考について定義しておく。

  • 論点:「真の問題」、解くべき問題のこと
  • 論点思考:自分が解くべき問題を定義するプロセスである。論点を設定する問題解決の最上段に当たるプロセス

論点には大論点、中論点、小論点があり、大論点は自分の仕事で成し遂げるべき最終的なゴールである。大論点解決のために明らかにすべき点、解決すべき問題が中論点、小論点と呼ばれる。課題に優先順位を付けて1,2個に絞り込み、最優先で解決すべき問題=論点を設定する必要がある。工数が限られた中で、解いて効果の上がる問題が良い問題となる。

論点思考の4つのステップ

論点思考は大きく論点設定と論点整理・確認に分けられる。その中でも4つのステップに分けられる。

【論点設定:ゴールを規定する大論点を定義する(戦略思考の出発点)】

  1.  論点を拾いだす
  2. 論点を絞り込む
  3. 論点を確定する

【論点整理・確認:掘るべき筋を中論点、小論点として因数分解し構造化する】

  1. 全体像で確認する

ポイントは論点確定のステップであるヒアリングから始まり、構造化する(インプットと構造化を繰り返す)のではなく、論点を拾いだすために論点は何かをまず考える。

論点を拾いだす

現象と観察事実を論点と間違えないことが大切になる。一般的に問題点と呼ばれるものは現象・観察事実であって、論点ではないことが多い。

【例:経営不信のレストラン経営】

  • 現象:味がまずい、立地が悪い、外装・内装が悪い
  • 論点:価格の割に味がまずい、立地が悪いのに駐車場がない等

論点によって打ち手は変わるため、論点設定が間違っていると、どんな立派な打ち手を考えても役に立たない。例えば、6期連続増益した企業は経営者視点では成功しているが、増益の方法が毎年賃金カットしていれば従業員目線で失敗している。この問題は誰の問題なのかも考える必要がある。また、作業を進めると当初考えていない論点が上がり、より本質的な課題であることに気づくことがある。

論点設定(目的)は何かを決めずに問題解決に取り組まない、論点を見つけるには「本当にそれが論点か」を常に疑問を持つことが重要で、なるほどと思っても「なぜ」を繰り返す。思考プロセスを繰り返し、問題の真因に迫ることが重要となる。論点は人・環境によって動く。経営層と担当者では論点は違うし、外的環境(市場環境等)が変わると論点が変わる。

論点を絞り込む

論点の絞り込みは2つのポイントがある。

  1. 当たりをつける(仮説思考)
  2. 筋の良し悪しを見極める

【1. 当たりをつける】

数多くの論点候補から仮説を使って当たりをつけていく。比較的容易に白黒つけられそうなところからアプローチするのが標準的である。経営者が問題意識をあまり持っていない分野に注目する(営業に問題がある時に商品開発や生産に目を向ける)。

芋づる式アプローチでなぜを5回繰り返す。なぜを繰り返した結果、論点が深まる場合は問題ないが、深まらない結果もある。例えば、競合にシェアが負けている時、全ての数字(認知率、配荷率、トライアル、リピート)が少し負けていることがる。この場合は論点が間違っているケースがあるので、違う視点で論点を拾い直す必要がある。

【2. 筋の良し悪しを見極める】

論点らしきものが現れたら3つのポイントで検討し、筋の良い論点を見極める

  1. 解決できるか、できないか
  2. 解決できるとして実行可能(容易)か
  3. 解決したらどれだけの効果があるか

筋の良い論点はかなりの確率で答えが出そうな論点であることが必要条件、実行したら企業として成果が上がりそうなものまで満たしたら十分条件となる。つまり筋の良し悪しは下記のようにまとめられる。

  • 筋の良い論点:簡単に解け、容易に実行でき、大きな成果が短時間で表れる論点
  • 筋の悪い論点:解く・実行が難しく、効果がなかなか表れない・効果が小さい論点

必要条件を満たすには、解ける確率の低い論点は捨てる必要がある。例えば、技術開発PJTで追加設備投資を行うかの意思決定において、技術改良の成功確率、最終的な成果から事業として利益が出るかをモンテカルロ・シミュレーションして利益が出る確率を2~3%となることを示し、投資取り止めを決定する。

十分条件を満たすには、解決できる論点の場合は、経営資源の制約を考えながら、実行可能か、どれぐらいの時間がかかるか、最後までやれるかを考える必要がある。最後に、実行した結果、全社的なインパクトがあるかを考える。

時間軸とパフォーマンスの2軸で考えて、1番効率の上がるものを論点にするという人もいる。

論点を確定する

何か刺激を与え、相手の反応を引き出し、本質を探る手法をプロービング(探針)と呼んでいる。プロービングには主に3つのアプローチがある。

  1. 質問して相手の話を聞く
  2. 仮説をぶつけて反応を見る
  3. 現場を見る

【プルービング】

論点設定はまず最初に相手の話を聞くことから始まり、その方法が①質問と②仮説をぶつけることである。大切なのは与えられた論点を鵜呑みにせず、本当の論点は何かを考える態度である。現場を見るは、支社・生産現場、取引先、顧客を見ることで、現場感覚を手に入れることで、判断できるようにする。一般消費財の場合は自分が顧客になる。

【依頼主の真意を探り、解決策の引き出しを参照する】

プロービングと同時並行で、2つの作業を行う

  1. 依頼主の真意を探る:相手の発言の真意、意図、バックグラウンドを考える
  2. 引き出しを参照する

相手の発言の真意、意図、バックグラウンドを考え、直観を大切にしたほうが良い。直感を重視し、後から論理的に説明するように考える、検証できるかを考えることがあっても良い。基本的な心構えは相手の思考パターンで考えるということである。

引き出しを参照するは、①過去の経験・類似事例、②一個人としての感覚で顧客視点で論点を設定する、③現場の眼で考える。

全体像で確認する

論点に当たりをつけ、論点を確定させ、検証した後、最後に念の為、問題を構造化し、全体像で確認するプロセスをとる。上位論点として中論点や大論点があることを睨み、全体構造の中で自分の問題を解くべきで、大論点を意識した姿勢で仕事に取り組むべきである。

今後のToDo

  1. タスク実施する前に最低1分は論点を考えてから作業する