データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】プロダクトマネジメントのすべて

読んだ目的

  1. 新しいプロジェクトにプロダクトマネージャーがいるため、どのような役割でどのような観点を持って働いているかを理解するため
  2. データサイエンスの知見を活かし、プロダクトマネジメントの手法をより高度に実現し、担当しているプロジェクトのプロダクトの成長に寄与するため

得られた学び

鈍器のような本のため、目次レベルで概要と気になった点だけまとめ、内容は本書を参照する形で取りまとめる。

Part Ⅰ:プロダクトの成功

プロダクトを通して作り出したい未来の世界観を"ビジョン"として定義し、ユーザー価値を創出しながら、事業収益を得ることを目指す。プロダクトにはステージがあり、ステージごとの成功は下記の通りである。

  • 0->1期:プロダクトマーケットフィット(PMF)を目指す

PMF:強力な価値仮説を見つけること。価値仮説とは、なぜユーザーや顧客があなたのプロダクトを使うのかを説明しうる重要な仮説のこと

  • 1->10期:ユーザーの期待される機能を提供し、安定した事業収益を得ること
  • 10->100期:多くのユーザーに使われる責任のある堅牢な仕組みを作ること

プロダクトマネージャーの仕事は2種類あり、1つ目はプロダクトを育てること、2つ目はステークホルダーをまとめプロダクトチームを率いることである。

正解となるプロダクトを探索するために、仮説の連鎖を紐解く必要がある。根本となる仮説から順番に検討するための可視化のために、大きくCore,Why,What,Howの4つの階層に分解して捉える。

  • Core:プロダクトの世界観(ミッション、ビジョン)、企業への貢献(事業戦略)
  • Why:誰をどんな状態にしたいか(ターゲットユーザー、ペインとゲイン)、なぜ自社がするのか(市場分析、競合分析)
  • What:ユーザー体験(メンタルモデル、カスタマージャーニー)、ビジネスモデル(コスト構造、収益モデル)、ロードマップ(指標、マイルストーン
  • How:どのように実装するか(ユーザーインターフェース、設計と実装、GoToMarket)

各階層に整合性を持たせるためFit&Refineを繰り返す必要がある。Fitは1つの階層を検討した後にそこより1つ上の階層と適合しているかを確認する作業で、Refineとは洗練するという意味で1つ上の階層をブラッシュアップする作業である。

これらを実現するために、プロダクトマネージャーとして必要なスキルは主に6つある

  1. 発想力:
  2. 計画力
  3. 実行力
  4. 仮説検証力
  5. リスク管理
  6. チーム構築力

Part Ⅱ:プロダクトを育てる

実際にプロダクト方針を1枚にまとめるには、リーンキャンバスが最適である。リーンキャンバスを作成するためのマイルストーンを用意しておく。本格的にプロダクトを作り始める前に仮説の構築と検証が必要で、プロダクトは機能を作り込んでからリリースするのではなく、MVP(Minimum Viable Product)という実用最小限の製品の段階でリリースする。

Core:ミッションとビジョン、事業戦略

・プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM

Why:「誰」を「どんな状態」にしたいか、なぜ自社がするのか

下記の手法を用いて、ユーザー理解と自社や外部環境を分析する。

・バリュー・プロポジションキャンバス:ターゲットユーザーと価値の組み合わせについて深掘り分析し、ユーザー理解を深めるための手法

・PEST分析:外部環境である政治、経済、社会、技術の4つの視点で洗い出す

SWOT分析:強み、弱み、機会、脅威の4つの観点から自社の強みと弱みを分析する

これらの分析を通うじて明確にしたペイントゲインの仮説をユーザーインタビューで検証する。

What:ユーザー体験、ビジネスモデル、ロードマップ

まずペルソナを決め、ペルソナのメンタルモデルダイアグラムを検討する。カスタマージャーニーを検討する。これらが完了したら、ワイヤーフレームを描く。ビジネスモデルキャンバスでビジネス活動としての分析を行う。

・ビジネスモデルキャンバス:企業が行うビジネス活動の現状や課題を表現したり、ビジネスモデルをデザインしたりするために使われるツール

データサイエンティストとして関連するのは評価指標を立てるところで、KPIを立てることがある。KPIはSMARTルール(Specific, Measurable, Agreeable, Relevant, Time-bound)を満たす必要がある。KPIには遅効指標と先行指標があり、遅効指標は売上目標、先行指標は売上目標を達成するためのユーザー継続率や認知度、ユーザー獲得率がある。売上というKGIを達成するために必要なKPIという関係になる。

プロダクトにとっては、「プロダクトのコアとなる価値がユーザーに届いているかを知る指標」が必要であり、それはNorth Stsr Metric(NSM)として定義される。NSMとして重要な点は下記の5点あり、

  1. NSMの改善がユーザー体験の向上とリンクしている
  2. ユーザーがプロダクトにどれくらい定着しているかを示す
  3. NSMを向上させることで長期的には収益・成長目標が達成される
  4. 収益に結びつくための先行指標である
  5. 組織内で理解してもらいやすい
How:ユーザーインターフェース、設計と実装、Go To Market

設計実装を進めるためにプロダクトバックログを作成し、アイテムに優先度を付け、実装に移る。GoToMarketに向けてはプラポリや利用規約、プロダクトの価格を決める。実装が終わったら、成果物に触れ、障害に備え、リリースする。

データサイエンティストとしてはプライシングにはWTPを決めるためのリサーチを実施する。

Part Ⅲ:ステークホルダーをまとめ、プロダクトチームを率いる

チームでプロダクトを作るためのテクニックとしてドキュメンテーションコーチング等のTipsもあり、これはデータサイエンティスト・コンサルタントとしてのチーミングにも参考になる。

Part Ⅳ:プロダクトの置かれた状況を理解する

プロダクトライフサイクルを考える主体は「マーケット」と「ユーザー属性」の2つがあり、マーケット視点で導入期から衰退期までを説明するプロダクトライフサイクル、ユーザー属性視点でプロダクトに飛びつくフェーズ別に類型化したものをカスタマーアダプションと呼ぶ。

ステージによってプロダクトマネージャーのふるまいは異なる。"0->1"ではとにかくプロダクトを目に見える形にすることが最優先で、特にターゲットユーザーを選択し、どのようなプロダクトで問題を解決していくかが重要となる。つまり、PMFを探すことが重要である。"1->10"では、短期的な結果を求めて施策を打ちつつも、長期的な視点に立ちプロダクトの姿に考えを巡らせる"10->100"は将来を見据えるだけでなく、目の前の声に応えていく姿勢が重要となる。

ビジネス形態(BtoCとBtoB)や技術要素によって、求められるものは異なる。未知のドメインに挑む場合は、各産業固有の商習慣があるため、学び続ける必要がある。新たなビジネスドメインを学ぶ方法はプロダクトランドスケープ、モチベーション分析等様々ある。

Part Ⅴ:プロダクトマネージャーと組織の成長

プロダクトマネジメントを組織に導入する場合、現状発生している課題からABCDEフレームワークのステップに沿って導入を進める。既にプロダクトがある場合は、ビジョンやミッションから始めると議論が発散するため、プロダクトのWhyから検討するとスムーズな導入ができる

プロダクトマネージャーに求められる知識は豊富で、W型モデルの人材像である必要がある。発想力、計画力、実行力、仮説検証力、リスク管理力、チーム構築力の6つのスキルを伸ばす必要がある。

Part Ⅵ:プロダクトマネージャーに必要な基礎知識

1. ビジネス

ビジネスの基本構造と収益モデルからパートナーシップの構築方法、知的財産の扱いについて記載されている。収益モデルとはプライシング方法も含まれている。特にデータサイエンティストして関連するのは、"指標"についてで、プロダクトで使われる代表的な指標、サブスクリプションモデルで使われる指標の計算方法が記載されている。

2. UX

UI/UXの基礎知識として、デザインの6原則やマーケティングモデル(4P/4C分析、AIDMAモデル)からプライバシーポリシーや利用規約の作り方まで記載されている。

3. テクノロジー

プロダクトの品質基準、開発手法(DevOpsやアジャイル開発)とソフトウェアの基礎知識としてネットワーク技術やデータベース、セキュリティに関する内容が記載されている。特にデータサイエンティストとしては、品質に関する分析手法として狩野モデルがあり、リサーチに関しては貢献できる。

今後のToDo

  1. これらの手法をデータサイエンスの知見を活かして高度化・クイックな仮説検証ができないか考える