データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】外資系コンサルのリサーチ技法

読んだ目的

  1. アンケート調査を実施する上で、何をネットや書籍でリサーチし、何をアンケートで調査すべきを学ぶため
  2. 仮説検証だけでなく、体系的なリサーチ手法を学ぶため

得られた学び

本書で学んだリサーチ技法をメモしていく。リサーチの基本的な流れは次の4ステップである。

  1. 目的の確認:次の3点を実施する
    1. 答えるべき問いをはっきりさせる。
    2. 企画のステージは次の3ステップがある。
      1. 検討着手:基礎を理解し全体感を把握する
      2. 仮説立案:企画の方向性を定める
      3. 仮説検証:言いたいことに根拠を与える
    3. 成果のレベルとまとめるイメージ:スピード、精度、網羅性の3つのバランスから見極める。
  2. リサーチプラン設計:”どんなソースにあたるか”と”いつどの順番であたるか”の2軸で設計する。仮説が外れている場合を考慮して、なるべく広い範囲で調査しておく。
  3. リサーチの実行:安易なソースから得られる情報は価値がないこと
  4. アウトプット化:リサーチをExcel等で整理して管理し、いつでも検索・閲覧可能にしておく。スライドや企画書へアウトプットする

9つのリサーチ技法としては、情報を探すための5つの手法と、情報を作るための4つの手法がある。

情報を探す

まず情報を探すための手法は次の5つがある。

  1. Web検索
  2. 文献検索
  3. 記事検索
  4. 公的調査・統計活用
  5. 民間調査レポート
1. web検索

初期仮説構築のために利用する。着手する前に、どれくらいの時間をかけてどのくらいの結果を目指すかを整理する。

リサーチルール

  1. 「ゴールx時間」を最初に設定する。1時間かけても見つからない情報は存在しないから、やり方に工夫が必要となる。

実施する上でのテクニック

  1. 代替ワードお組み合わせをExcelで整理し、検索したらチェックしていく
2. 文献検索

主な利用シーンは全体像を把握できていない場合や、ある事象の背景や意図が分からない場合に、情報の体系的・構造的整理を行う時に行う。

リサーチルール

  1. 業界本をクイックに通読し、キーワードを掴む
  2. 専門書を精読せず、頭の中にインデックスをつける程度に読み流す
  3. 同一テーマで3冊は読む

実施する上でのテクニック

  1. 参考文献リストが充実してるかを確認
  2. ファクトと主張を見極める
  3. 経営者・特定企業の本はストーリーじゃなくてファクトに着目
  4. 著者に直接連絡とってみる
記事検索

主な利用シーンは、特定のテーマに関する事例調査やある企業改革や業界再編の経緯を調査する時に利用する。

リサーチルール

  1. お気に入りの記事検索ツールを見つける(例:日経テレコン21やG-Searchなど)

実施する上でのテクニック

  1. 海外の記事検索も対象に入れる(Dow Jones factiva)
  2. 尖ったキーワードや固有名詞から芋づる式に見つける
  3. 時系列で情報を追う(IRと記事から、KSFを明らかにする等)
4. 公的調査・統計活用

主な利用シーンは国や地域、業界のマクロなトレンドを数値で追う場合や市場規模など様々な推計をする際のデータベースとなる。

リサーチルール

  1. 国際比較は国際機関の統計を利用する(集計定義を揃えるため)

実施する上でのテクニック

  1. 国内のデータは総務省統計局(https://www.stat.go.jp/)をハブに探す
  2. 国内マクロデータはe-Statを探す
  3. 海外のデータは世界銀行を探す

    https://databank.worldbank.org/source/world-development-indicators

  4. 特定業界については業界団体を探す
5.  民間調査レポート

ある程度深みのある情報、特に定量レポートを効率的に取得する時に利用する。

調査ステップ

  1. 社内で探す:社内で知見のある人に問い合わせする
  2. 調査会社をあたる:大手の調査レポートから探す
  3. 費用対効果を見極める:①スコープ・メッシュ、②時間軸、③作成時期、④元データの入手可否を確認した上で購入する
  4. 必要なデータを加工して作り出す

リサーチルール

  1. 調査手法・算定根拠をよく確認する

情報をつくる

次に、情報をつくるための手法は次の4つがある。

  1. アンケート調査
  2. ソーシャルリスニング
  3. フィールド調査
  4. インタビュー
アンケート調査

主な利用シーンは、簡易に定量的に対象者を調べる時に利用する。満足度調査等の日常的あ場面から、新規事業立案のための消費者ニーズ把握といった戦略立案まで幅広く利用される。

作業ステップ・ルール

1. 手法を決める

  1. サンプル数x設問数の相場観を持つ
  2. インターネット/電話/対面かを決める(右の方が信頼性は高く、コストは低い)

2. 調査の規模感を決める

  1. 母集団を決める:仮説の広さに対応できるよう母集団を設計する。目的に合ったターゲットを集められるよう、性別年代、ライフスタイル属性を加味する
  2. サンプル数を決める:顧客をセグメントしたら、 1セグメント100サンプル以上が望ましい(例:男女(2種類)/40~70代(4種類)=8セグメント=800サンプルは必要となる)
  3. 設問数を決める:30問程度に収める。予備調査(スクリーニング調査)を活用し、本調査前のターゲットを集めるためだけでなく、アウトプットにも使える

3. アウトプットイメージを明らかにする

  • 実査前に分析グラフのイメージとメッセージ仮説を持つ
  • 実査前に報告資料のアウトプットイメージまでしっかり作り込んでおくことで、調査の抜け漏れを防ぐ

4. 調査票に落とし込む

  • 一般的な設問、簡単な設問から始める(最後まで答えやすく、余計な情報を回答者に与えない)
  • 枝分かれ設問を多用しない
  • 選択肢の切り出し方は目的や仮説に合わせた括りにする
  • どちらでもないや普通を選択肢では避ける
  • マトリクス設問を多用しない
  • 明確な仮説がない限り複数回答形式は避ける
  • 周囲の人に試しに回答してもらう
ソーシャルリスニング

主な利用シーンは、想定外の気づきや消費者の深層心理を理解したり、アンメットニーズを掴むために行う。消費者の生活に密着したリアルな本音を入手でき、リアルタイム性の高い調査方法である。

リサーチルール

  1. やれる分析ではなく、やるべき分析にこだわる
  2. 目的に合わせてブログ、レビューサイト、Twitter等のメディアを使い分ける
  3. データ量と期間の観点から、分析の実現可能性を確かめる

実施する上でのテクニック

  1. まずはツールを使わず自分で口コミサイトを眺めて肌感を掴む
  2. 無料ソーシャルリスニングツールを試してから有料ツールを使う
  3. ローデータを出力して各コメントに対して属性データを付与する
フィールド調査

主な利用シーンは、物理的なロケーションと動き、時間を把握するのに最も有効な手段で、例えば工場の生産現場を確認する等がある。検証したいポイントを明確化してから実施する。

フィールド調査の実施ステップ

  1. 観察項目を定める:現場でしか取れない情報を見極める。手順・時間・環境等、調査目的に照らし合わせた仮説が重要である。
  2. 記録方法を定める(パターン化と定量化):記録するフォーマット準備(選択式など)も必要となる。
  3. 観察記録を残す:写真で結果を残しておく

実施する上でのテクニック

  1. 雰囲気も見るべき重要な事項で、例えば和気藹々としてるのか緊張感があるのか、自分の肌感も大切にする
インタビュー

主な利用シーンは、ビジネス関係者/有識者インタビューと、消費者インタビューの2種類ある。ビジネス関係者に対してはビジネス課題の改善点把握や社員満足度など多岐の場面で行う。有識者インタビューは、新しい領域に取り組むときに知見・見解を吸収することで効率的にキャッチアップし初期仮設を立てるために行う。消費者インタビューマーケティング関連の施策を検討したり、消費者のニーズ・不満を抽出し、企画の最も初期の探索段階で気づきを得て仮説を持つために行う。

ビジネス関係者/有識者インタビュールール

  1. インタビュー対象と調査事項を明らかにする
  2. インタビュー先の立場・利害を常に意識する(自分の利に適う回答をする可能性がある)
  3. 人脈がなくても積極的にインタビュー対象者にアクセスする

消費者インタビュールール

  1. コンテンツとして対象者の「基本情報俯瞰シート」を準備する
  2. 異なる消費者を同一グループに混ぜない
  3. 消費者属性に合わせたスケジュールを心がける

消費者インタビューを実施する上でのテクニック

  1. 対象者を選ぶ設問にこだわる
  2. インタビューシナリオは詳細まで書き出しておく
  3. 意見の呼び水となるネタ(ビジネス関係者であれば思考のフレームワーク、消費者であれば商品/サービスアイデア)を準備する
  4. グループインタビューの場合は6~8名にコントロールする
  5. 同じ消費者グループのインタビューを少なくとも2回以上実施する
  6. モデレーターは極力当事者が担当

ケーススタディ

本書にはケーススタディとして①顧客調査、②業界・市場調査、③企業調査の調査事例が紹介されている。ケース別にどんな調査手法を利用しているかをまとめておく。

ケーススタディ別目的と手法まとめ

今後のToDo

  1. 直近は調査目的と仮説設計まで終わっているので、リサーチ設計を本書を参考に実施する。特にアウトプットイメージまで作り切ってからリサーチに入る
  2. リサーチだけでなく、あらゆる分析系タスクにも本書の取り組みプロセスを組み込んでみる