データサイエンティストの備忘録

外資系コンサルティングファームでデータサイエンティストとして働く筆者がコンサルティング関連の知見やデータ解析技術を活用するために学んだ内容の備忘録

【読書メモ】マーケティング・エンジニアリング入門

読んだ目的

  1. マーケティング分析をする上で基礎的な内容を理解したかったため
  2. 分析手法と分析内容を結び付け、どんな内容を分析するときにどんな手法が使えるか事例とともに整理されていたため

得られた学び

マーケティングエンジニアリングとは工学的な手法によりマーケティングの効率性を高める管理体系であり、「技術やモデルを土台とした意思決定プロセスを通じて効果的なマーケティングの意思決定を実施するためのデータと知識を活用するための体系的な手法」と定義されている。

マーケティングエンジニアリングのフローは「データ」→「分析」→「意思決定」→「実行」→「データ」→「分析」で定義されるが、実際の業務では「計画」→「実行」→「確認」のプロセスの中で実施していくことになる。

本書は下記の内容で構成されている

  1.  

1. 市場の理解:状況を把握したい

市場の理解には①消費者視点と、②商品ブランド視点の2つの視点がある。

 

1.顧客視点の市場理解

消費者視点での市場を理解するために、何らかの基準でセグメンテーションする。地理的変数やデモグラ心理的行動、購買行動によって分類される。デモグラ等の基準が明確な変数はそのままセグメンテーションに使えるが、基準がない場合は集計結果や分析した結果に基づいて分類する(図3-2)。

セグメンテーションの手法は、基準な既知の場合は判別分析や決定木分析、SVMがある。基準がない場合はクラスター分析や因子分析等がある。顧客視点と商品・ブランド視点の2つから分析手法を整理する(表3-2)。

事例としては下記の2つをメモしておく。

事例1 基準既知:顧客の年代別 購入点数構成比と人数構成比を比較して、10,20代の点数構成比が小さい場合は10,20代の購入数が少ないことを示す。

事例基準未知:k-means 店舗別の購入点数でクラスタリングし、どの店舗種別で購入点数が多いクラスターがそれだけいるかを明らかにする。

2.商品ブランド視点の市場理解

市場構造分析の手法は大きく分けて2つある。

1.階層構造(クラスター分析の樹形図)

どのような基準で分類されているか、分析で得られたサブグループにどのような商品やブランドが含まれるかで市場を理解する方法である。市場構造分析の例では、併買率を求めてそのデータでクラスター分析を行い、描かれたデンドログラム(樹形図)より市場構造を理解する。

2.因子分析、主成分分析、多次元尺度構成法

平面上に商品やブランドをプロットし、軸の意味とプロットした商品ブランドの間の位置から、互いの関係をもとに市場を理解する方法である。

基準が未知 期間併買行列の行の最大値でそれぞれのマス目にあるデータを除し、併買率を求めて、クラスタリングする

マーケティング反応の分析:顧客の反応を理解したい

マーケティング反応の分析は、施策の分析手法や価格に関する分析について説明されている。

価格と販売数量の関係

価格帯と売上の関係を可視化:箱ひげ図(100,200等の単位で区切って)

市場全体におけるロイヤリティがブランド選択に与える影響を分析

下記の2つのケースについて、回帰分析による分析例が説明されている。

目的変数:ブランド選択フラグ

ケース①ロイヤリティ影響:価格、ロイヤリティ

ケース②ロイヤリティ別価格受容度:価格、ロイヤルフラグx価格、スイッチングフラグx価格

PSM(Price sensitive measurement)

品質と価格に対する反応を4つの質問項目から、累積頻度グラフを作成し受容価格を想定する手法

  1. 安すぎ品質に不安を感じる価格(安すぎる)
  2. 安いが品質に不安がないと感じる価格(安い)
  3. 高いが買う価値はあると感じる価格(高い)
  4. 高すぎて品質は良いが買えない価格(高すぎる)

最適化と意思決定:意思決定を定量的に行いたい

最適化と意思決定の章では、ユーザーの嗜好を評価するモデルと、マーケティング意思決定における数理計画問題の使い方についてメモしておく。

潜在クラスモデル

個人ごとに各クラスにどの程度当てはまるかを所属確率を求める潜在クラスモデルがある。嗜好の異なる代表的消費者を設定し、個人それぞれに対してどの程度当てはまるは所属確率を表現する。EMアルゴリズムを使う手法で行われる。一方、階層ベイズ・モデルは個人ごとの母数を直接求める手法で、事後分布を求めるためにMCMCがよく用いられる。個人差を表現できる一方、解の解釈や再現性の問題がある。

数理計画問題によるマーケティング意思決定

数理計画問題では下記のような問題に対して適用されている。詳細は分析するタイミングで確認するため、本書を適宜確認するため割愛する。

  • ID付きPOSデータの顧客別購買履歴データを用いたテナント選択問題
  • プロモーション最適化問題
  • 最適な広告水準の決定問題(ドーフマン・スタイナーの最適広告費定理)
    • A/PQ = -1/εp x εA(価格P、需要Q、広告支出A、需要の価格弾力性εp、需要の広告弾力性εA)

予測とシミュレーション:予測を行いたい

本章には需要予測とシミュレーションについて説明がある。

需要予測

古典的な需要予測としては移動平均法や指数平滑化法があるが、製品特性を考慮した予測モデルとしては下記2種類紹介されている。

消費財のような反復購入の予測:バス・モデル>

新製品発売から時間経過とともに製品の市場普及過程を、革新者(innovator)と模倣者(imitator)の購買数の和で分析するモデル

消費財のような反復購入の予測:ASSESSORモデル>

新規購入(トライアル)と反復購入(リピート)の両者を考慮した予測をするトライアル・リピート・モデルで最も代表的なモデル

最適設計

製品を比較するため、製品を構成する属性(昨日や仕様)を比較する属性アプローチをと呼ばれる。属性間の代替性が成り立たない場合は非補償型モデル、代替性が成り立つ場合は補償型モデルがあり、製品評価を各属性に分解できる、1次関数で効用関数を仮定できるため、マーケティング分析ではよく補償型モデルが利用される。その分析手法はコンジョイント分析がある。

不確実性への対応(シミュレーション)

景況感や競合他社の新製品といった、将来予想されるシナリオが発生きた場合の自社の対応を分析するWhat-if分析や、価格上昇によるシェアや利益の減少幅を分析する感度分析がある。

市場に新製品を投入した場合に、消費者や企業といったそれぞれの活動主体を設定し、時間経過とともに情報伝播や購買意思決定をさせながら市場全体を評価するエージェントベースモデルがある。新製品の販売状況の時系列変化や口コミやネットワーク上の情報伝播による購買意思決定の変化の評価に用いられる。CAMCaT (高橋・大堀, 2005)では消費者と企業からなる市場空間から、消費者企業間の相互作用を考慮した遺伝的アルゴリズムの考え方を採用している。このモデルではロジャースの普及理論に従い、消費者を革新者、早期少数購入者、早期大量購入者、後期大量購入者、遅延者に分割して、シミュレーションしている。

感性とマーケティング定量化できていない内容の定量化を確立

経験価値を産むには次の5つのモジュールを考えることができる

  • Sense:感覚的経験価値(デザイン、香り、味などの五感に働きかける経験)
  • Feel:情緒的経験価値(接客態度など感情や気分に訴える経験)
  • Think:認知的経験価値(商品コンセプトや企業理念等の知的好奇心に訴える)
  • Act:肉体的経験価値(新しいライフスタイルの提案を顧客に訴える経験)
  • Relate:関係的経験価値(ブランド保有や文化理解を通じ帰属意識に訴える)

感性・主観の定量評価をするには、主観的データから消費者意識を評価する因子分析がある。アンケートの調査項目に対して行い、共通因子を抽出して回答者の特徴を明らかにする。因子間の因果関係も同時に評価するには共分散構造分析がある。

施策の実施と確認

施策実施と検証方法の注意点が記載されている。他の緑の本と内容的には重複している。

今後のマーケティングエンジニアリング

基本的にデータサイエンティストであれば知っている知識のため割愛するが、データのトレンドと分析基盤、機械学習に関する概要が記載されている。

その中でも相関ルール分析(アソシエーション分析)は既存の購買データから簡易に分析する上で、利用しやすい。

Support バスケットの中に商品Xと商品Yが同時に含まれる割合

Confidence 商品Xが含まれるバスケットの中に、どれぐらいYが含まれているか

Lift リフト値全バスケット中に含まれるYの割合に対して、Xが含まれるバスケット

リフト値のみに着目するとニッチな組み合わせを見つけているだけの可能性があるため、supportで全体に占める割合を確認する必

今後のToDo

  1. 分析内容を確認したらこのメモを確認し、適切な分析手法を選んでいるか確認する