読んだ目的
- マーケティング・オートメーション(MA)における機械学習モデルの導入効果を最大にするためには、現状の業務課題を精査し「あるべき姿」と「現状」とのギャップを洗い出し、適切な業務に対して適用する必要がある。
- また、MAの中でもどの部分から重点的に着手すべきか、既存のマーケティングにおける問題を分析して真の原因を特定し、MAのインパクトを最大にするための問題解決に向けた分析手法を学ぶ
得られた学び
この本は3つのパートに分かれており、それぞれの内容について記載する。
- 問題発見力:課題とは何かを整理する
- 問題発見構想力:取り組むべき問題を特定し解くべき問題を明らかにする
- 問題発見のための分析力:問題の原因を見つけ、構造的に把握し、優先順位をつける。ここで機械学習やMAを活用すべきか検討する。
1. 問題発見力
問題が解決できないのは問題の捉え方が間違っているからであり。筋の良い解決策は的確な問題設定からである。問題とは「目標と現状のギャップ」となる。問題設定には3つのステップがあり、今後取り組むべき課題を明らかにする。なぜ問題・課題なのかを特定する「KNOW-WHY」の能力が問題発見能力となる。
- まずは「あるべき姿」を描く
- 「現状」を把握
- その「ギャップ」を明確にする
問題発見できない4つの理由
- 「あるべき姿」が的確に描けない
- ビジョン構想力・目標設定力が欠如し「あるべき姿」がイメージできない
- パラダイム変化の認識力が欠如し「あるべき姿」が間違っている
- 「現状」の認識・分析力が低く正確な把握ができていない
- 「現状」を直視する問題意識の欠如している
- 例:食品メーカーで食中毒が発生した時、品質管理基準認定を受けているため、工場ラインに問題が起きるはずがないと現実を直視しない。
- なぜ現実を直視しないか①問題の隠蔽、②現状が客観的には曖昧、③現状を把握してない/近い将来の現実を見ずに問題から回避、④本質的な問題から回避することがある。
- 「現状」を把握する分析スキルの欠如している
- マニュアル化が進み、現状分析して問題の本質を把握することなく処理する発想になっている。
- 「現状」を直視する問題意識の欠如している
- 「ギャップ」を構造的に解明して、問題の本質を具体化・優先順位付けできない
- ギャップが曖昧なまま、表面的に解決しようとする。問題の本質を具体化して、本当の解決策を実施する必要がある。
- 優先順位付けができないため、全て解決しようとする
- 実行可能な「解決策」から逆順で短絡的に問題を捉え、拡がりを見失う
- 仮説思考では常にその時点での結論を持ってアクションを起こすことが重要だが、結論に導く背後の理由やメカニズムを考えた上で実行することが重要となる。
2. 問題発見構想力
「あるべき姿」が大きく変化する状況においてはゼロベースで「あるべき姿」を構想する戦略的問題発見をする必要がある。戦略的問題発見に必要な4つのスキルがある
- 観察力:現状を客観的かつ正確に認識・把握する力
- 判断力:ビジネスの責任当事者として主観も含め選択・判断・決定する力
- 分解力:具体的レベルにjまで論理的に分解・分析する力
- 統合力:限られた現状認識・把握から全体像を組み立て、構造化・構想する力
観察力と判断力、分解力と統合力はそれぞれ相反する力である、全体を見ながら細部も認識する必要がある。これら4つのスキルをベースに問題発見力を高め、「あるべき姿」を構想するフレームワークである「問題発見の4P」を活用する。
問題発見の4P
「あるべき姿」を構想するため、「あるべき姿」と「現状」とのギャップである「問題」そのものを特定し、問題解決のステップが的外れにならないようにするためのフレームワーク
- Purpose:「何のために」
- 行動が定常化すると行動自体が自己目的化したり、目的を見失い目先のアクションそのものを目的として問題を捉えると、狭い範囲での問題発見になる。
- 目的を深く考えることが重要で、例えば営業で顧客ニーズを把握するには目的を十分に把握することで解決策が見えてくる。
- 目的が見えない場合は「そもそも何のために」をどこまでも問い続ける。
- Position:誰にとっての問題なのか
- 「誰にとって」と同時に「どんな考え方で」問題を捉えているのかを規定する。立場によって問題は大きく変化するので常に意識する。
- 自分の視点を変えて問題を見てみることで視点の歪みをチェックする。
- Perspective:問題を俯瞰する
- Period:どの時点での問題なのか
- 問題を捉える時間軸にズレがあると問題は解決しないので、どの時点での問題なのかを明らかにして問題発見する。
- 時間軸を未来に置いて考える、特に企業経営に置いては2,3年先時点と置いて問題設定する。
これらは相互に関係し合うため、1つ変化すると他の軸も変化する。
3. 問題発見のための分析力
分析とは現状分析から仮説を作り、その仮説を分析により検証する「仮説-検証サイクル」を回すことが分析の基本である。統計的な手法の利用有無に関わらない。
- So What?とWhy?を繰り返して検証する。スライドのメッセージラインのWhy?が分析内容、分析内容のSo What?がメッセージラインの内容という関係になる
- 定量化できるものは定量化した方が良いが、問題を深く洞察して仮説を構築するためにはグループインタビューや調査などの定性分析を実施することも不可欠である
「問題」を分解・分析し、問題の本質を見極めるために「拡がり」、「深さ」、「重み」の3つの視点から客観的に構造化・具体化する。
- 拡がり:問題を捉えるためのスコープ
- 深さ:問題を構造的に把握して具体化する
- 重み:問題や解決策を評価してフォーカスすべき対象を決める
拡がりの分析手法
- MECE
- 分析タイプ:モレなくダブりない分類をする。全体枠組みの取り方が問題の拡がりを規定する。
- モレがあると重大な機会損失につながるためモレの確認は習慣付ける必要がある。
- ダブりの場合は資源の非効率というマイナス面とダブりが発生している領域の強化というプラス面があるので、短絡的にダブりを解消するとプラスのメリットが消失する可能性がある。ダブり問題の対処方法は下記の3ステップに基づいて分析する。
- ダブりによるプラス面とマイナス面のファクター整理
- プラス面:①領域強化②競争力アップ
- マイナス面:①資源の非効率、②受け手に混乱を与えていないか
- 全体としてマイナス面が大きければ解決策の具体案検討
- 現状と具体案を比較し結論を出す
- ダブりによるプラス面とマイナス面のファクター整理
- 応用例:ほぼ全ての分析フレームワーク
- トレンド分析:変曲点から構造変化を捉えるための分析
- 分析タイプ:3点のポイントについて分析する。
- グラフの傾きを見るときは必ず成長率を押さえる
- 変曲点の発生要因を考える
- 製品ライフサイクルにおける利益等の分析では面積で考える
- 応用例:業界、製品の成長・発展パターン
- 分析タイプ:3点のポイントについて分析する。
- +/-差異分析:自社のパフォーマンスを他社や過去と比較する
- 分析タイプ:2種類のタイプがある
- 時系列の2地点でのギャップを生む+/-の変化要因を分析
- 他社や業界平均とのギャップを生む+/-の変化要因を分析
- 応用例:オペレーション・プロセスの工数分析、従業員の活動内容
- 分析タイプ:2種類のタイプがある
- 集中・分散分析:ズレとバラツキからマネジメントのコントロール力を分析
- 付加価値分析(コスト分析):顧客視点からコストを分析
- CS/CE分析(バリュー分析):同じ価格の商品の場合CS/CEによって商品選択の意思決定を行う。
- 定義
- CS(Customer Satisfaction):顧客が製品・サービスを利用して得られる満足度
- CE(Customer Expectation):顧客が製品・サービスを利用する前に持つ期待値
- 分析タイプ
- CS>CE:満足度が期待値以上であったため、リピーターとなる
- CS<CE:満足度が期待値以下であったため、顧客離反となる
- 顧客の主購買要因(KBF=Key Buying Factors)に沿ってCS/CE分析を行う必要がある
- 応用例:自社製品・サービスの評価、社員の意識、企業の市場価値
- 定義
深さの分析手法
- ロジック:なぜを繰り返し、因果関係を特定する。
- コーザリティ分析:悪循環の中から解決すべき真の原因を特定する
- コーザリティ分析で明らかにすべきことは、以下の2点である。
- 悪循環を構成する因果関係のどこを断ち切るべきか
- 悪循環を引き起こした真の原因は何か。どう解決するか
- 分析手法:2つの方法のうち目的に合わせて分析する
- 悪循環のサイクルの中で問題(現象)の原因をロジックツリーで検証する。
- 周りで起きている良循環(ベストプラクティス)を観察し、どこが違うのかを検証する。悪循環の図に論理的整合性があるかチェックするために、言葉を全部裏返す方法がある。
- 応用例:ソリューション型営業、金融市場の競争状況
- コーザリティ分析で明らかにすべきことは、以下の2点である。
- 相関分析:ビジネス上の因果関係を推定する
- 分析手法:「現象」と相関関係のある「因子」を仮説に基づいて選び、因果関係を突き止める。統計的に微妙だったので詳細は割愛する。
- 応用例:競合との価格差と市場シェアの関係、顧客満足度と価格
- シェア分析:シェアの構造を2つの定量指標に分解して分析する
重みづけを行い取り組み課題の優先順位付けを行う手法
- 感度分析
- パレート分析(20-80ルール)
- 目的:全体の結果に対して貢献度の高い要素の集中度やその偏りを分析する
- 分析方法:投入した資源のシェアに対して全体への貢献度シェアの高い要素を明らかにする。投入した資源の20%で、80%の売上や収益に貢献している法則があり、その要素を明らかにして、今後の対応方針を検討する。
- 高貢献度の維持:貢献度の高い商品・顧客に資源を投入して生産性や満足度を上げる
- 低貢献度の改善:将来ポテンシャルのある商品や顧客を見極めて資源投入して収益性を改善する
- 低貢献度の整理:ポテンシャルの低い商品・顧客を見極めて整理する
- 応用例:投入資源の生産性、商品アイテムの売上・収益貢献度、
- ABC分析
- 目的:資源配分を適正に行うために、重点分野をランキングして優先順位を明らかにする。
- 分析方法:
- 応用例:営業エリア、R&Dプロジェクト、顧客の優先順位付けに利用する
- ピーク分析
- 目的:時間軸で見た場合の量の変化、ピークの山に着目して、資源を集中させるべきか検討するための分析
- 分析方法:時系列で可視化した上で対応策を検討する
- ピーク時に資源を集中
- 柔軟な対応でピーク対応する。真の原因が業務効率が悪いケースでは、業務プロセスを改善する。
- 成熟産業の場合は、需要サイクルに合わない場所にピークを移動させず、需要が増大するタイミングで効果的にプロモーションして動機付けをする。
- ピークを分散・標準化
- 価格・サービスを多様化し、ピークを分散させる。鉄道の時差料金、通話料や電気料金の時間帯別料金体系がある。
- ピーク業務を谷間に実施する。
- ピーク時に資源を集中
- 応用例:1日当たり業務量の平準化、営業担当のインセンティブ設計
- リスク・期待値分析
今後のToDo
- 既存業務の問題点をフレームワークに沿って再分析する(MAツール導入が進んでしまっているので)
- 各分析手法に対して統計的に厳密にできるものがないか確認する